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工藤将亮監督「遠いところ」

音楽家から監督への失礼な発言

最新作についてお知らせさせてください。
工藤将亮監督「遠いところ」が7月1日から開催されるチェコのカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭メインコンペ(Crystal Globe Competition)にノミネートされています。歴史と伝統のあるヨーロッパの映画祭でのワールドプレミアム上映、審査員、観客の方々の評価が楽しみです。受賞も期待できます。
沖縄を舞台に、生きづらさを抱えながらもがく若者たちの叫びを描いた作品で、監督自身が時間をかけ現地を取材し脚本を書いています。内容はとても刺激的でしたが、音楽は自由に感じるまま作ることができ、完成したときは、達成感、充実感に浸ることができました。公開時には自身で改めて劇場で観て「映画における音楽とは」を考えてみようと思います。

工藤監督と組むのは初めてです。本作品のプロデューサーからの誘いでした。監督の2019年公開作「アイムクレイジー」を観て、全く映画の枠、型におさめる気がなく自由に作品を作る監督だと感じ、先ずは新作のラッシュ試写へ参加することにしました。(ラッシュとは編集の途中段階。仮編集、オフライン編集とも言います)
最初にラッシュを観て、私は正直少し戸惑いました。普通に常識的な映画の形をしていたからです。そして「物語が動き出す前のやや説明的な前半部分は全て無くしてもいいのでは」「分かるより、感じる映画が私は好き」などと発言してしまったのです。後になって、けっこう失礼なことを言ったのでは、と自身が怖くなりました。その時点では、監督が私に音楽を依頼することも何も決まっていなかったのです。


監督としても初めて会った音楽家からそんなことを言われて嬉しいはずはないのですが、年上の私に対しての気遣いか、私の意見を否定することもなくその場での打合せを進めてくれました。
しかし、打合せの終わりころ監督が「僕は助監督を長くやってきて、多くの女性監督にも付いてきましたが、先ほど茂野さんが言ったようなことを女性監督に言ったら、ぜったいみんな泣きますよ」と言ったことが忘れられません。(その中の一人は昭和の文豪と一文字違いのM監督かなと、、、、あくまで私の邪推ですが)
意見を言うときはしっかりと考えた上で、責任を持って発言しなければならないなと改めて感じた出来事でした。
翌日プロデューサーから連絡があり、工藤監督が私に正式に音楽を依頼したいとのことでした。あの発言は失礼だったのか、言ってよかったのか、私が作る音楽で証明しなければならないというプレッシャーを感じながら、喜んで依頼を受けることにしました。

映画「遠いところ」は現時点ではまだ未公開なので、音楽をここで公表することはできません。後日改めて「遠いところ」の音楽を題材に「映画における音楽とは」を考えてみたいと思います。


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