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口は災いの元、耳は疑いの元

“チームの一体化の足かせとなるのは流言飛語”

百聞は一見に如かず。誰もが一度は聞いたことがある格言ですが、人が集まってコミュニティを形成する上では、信念として持ち合わせていないと徹底が難しいです。

それほど、人は聞いただけであるはずの情報、すなわち噂に影響を受けやすいのです

マネジャーとして噂にどう対峙するか、どんな信念を必要とするか、重要性は分かっているけど、無意識に流されてしまうことを避けるために、噂と向き合う態度について触れていきます。

突然ですが、歴史シミュレーションゲームをやったことはあるでしょうか。または、時代小説、漫画を読んだことはあるでしょうか。

僕は自部署で噂が流れると、忍者を思い出します。

どういうことでしょうか。時代小説や、漫画では相手陣営の分裂を画策して、敵将の裏切りを敵陣内で囁く忍術が描かれることがあります。

その忍術名は「流言」

僕が夢中になった歴史シミュレーションゲームでも戦術として選択もできました。登用したい武将の忠誠心を下げるために、何度も流言を広めます。

流言とは、根拠のない噂、デマ。

歴史をひも解くと、流言を信じて疑心暗鬼になり、かつて苦楽を共にし、信頼を寄せていた部下を処刑してしまったという例は枚挙に暇がありません。

それほど、流言というのは影響力があります。ゲームでは流言を使用したことが分かりますが、流言の恐ろしいところは実社会では初めから「根拠のない噂」と判明しているわけではありません

日々多くの情報に触れる中で、情報を捉える態度については信念として言語化しておく必要があります。信念として持っていれば、右往左往することはなくなるからです。

どんな言葉を信念として持つのが良いのか。

事実と解釈を切り分ける、事実と感情を分けて話す、そういった言葉を持っている人は、情報との接し方も慎重です。私も情報との接し方として、これらの言葉で一度フィルターを通すのは好きな態度です。

でもマネジメント経験を通じて至った、最もお勧めな態度は有名な「三現主義」です。つまり、「現場・現物・現実主義」のことです。簡単に翻訳すると、「一方の情報だけで判断せず、必ず双方の立場の意見を確認した上で、自分が見聞きした情報を優先する」という態度になります。

これらの三現主義がなぜ大切なのか、もう少し深堀りしていきます。

噂を流す人。過去では忍者。現代でいえば「スピーカー」は次の2種類に分かれます。

①悪意がない

②悪意がある

①の悪意がない人は、これまで述べたような情報に接する態度が定まっておらず、触れた情報で右往左往する人を含みます。

教育現場で例を挙げると、子どもが家庭で伝えた情報だけで母親が事実を把握した気持ちになってしまい、その状況を事実かのように夫に伝えます。

すると、初めから誰かを槍玉にあげる姿勢で、保護者が学校に連絡を行います。保護者の方の気持ちは「我が子を守る為」悪意があるわけではありません。

こういう場合、子どもから聞いた情報だけでなく、もう一方の意見も聞きましょうと諫めていきます。

他にも、次のようなパターンがあります。

普段頑張り屋のAさんが珍しく愚痴を言うので、その自己開示に応えるべくBさんがAさんの気持ちを軽くするために「自分もそう思うときはある」と共感を示します。

翌日、同席していたCさんがBさんの発言だけ切り取って部署内に噂を広めます。

噂ってこんな側面があるので、マネジャーは噂の取り扱いに注意が必要ですね。

次に②悪意があるパターンですが、こちらはさらに3つに分類することが可能です。

Ⅰ 情報を伏せる

Ⅱ   情報を曲げる

Ⅲ  情報を捏造する

順番に触れていきます。

Ⅰ 情報を伏せる

この傾向がある人を、私は2014年に興行収入11億円を突破し、アカデミー賞を受賞したアメリカの映画にちなんで「ゴーン・ガール型」と呼んでいます。

巧みな環境設定と情報操作、演技によって、主人公の女性は多くの人を自分の味方にして、ターゲットを貶めていきます。

実際にあった事例をご紹介します。

高学歴で、機知に富んだ話題も楽しめる中途採用の年上の女性社員Dさん。仕事の関係から1対1で食事する機会も多かった。

その場でDさんから主任のEさんについての印象を尋ねられると、私は率直に返答しました。

「Eさんは〇〇が課題だけど、こんな良いところがあって、とても信頼している」

そして翌日出勤してみると、Eさんの表情が曇っていました。後日Eさんと行動を共にする機会があった際に、「もし至らぬ点があるのなら、人に言うんじゃなくて、直接言ってほしいです」と意見をもらいました。

よくよく聴くと、Dさんは「〇〇が課題だけど」という私の発言だけ事業部内で広めていたことが分かりました。前後の文脈は伏せられていたのです。

嘘ではないから、糾弾は筋違い。不用意な発言をした自分を変えるしかない失敗談です。もちろん、Eさんには個別で本意をフォローいたしました。

ただ、Dさんの前では不用意な発言はしないように心に誓った事例でした。

Ⅱ 情報を曲げる

こちらの傾向は、私は「策士型」と呼んでいます。具体的に例示してみます。

前職で大手企業の美容部員として研修する立場にあったFさん。Fさんは別の学校から異動してきたばかりの年度に、自分が新たに配属された専門学校の講師陣と検定の評価方法に関する打ち合わせに臨みました。

採点基準が定められているとはいえ、細かく規定されていない中でそれぞれの試験監督の進め方があり、どうにか方向性を揃えたい、そんなミーティングをDさんは職員としてまとめる立場にありました。

後日Fさんに相談があると呼ばれたので話を聞くと、Fさんからは講師陣が前年度までのやり方に固執して、柔軟に対応してくれない、こうして欲しいとお願いしても従ってくれないという報告を受けました。

そこで、講師陣にも話を伺ったところ、Fさんが前年度まで所属していた学校のやり方に固執しているとの訴えがありました。

実際に授業を持っていた講師陣は普段の授業で、検定試験ではどういう点に気をつけたら良いか、前年度までの評価基準を想定して生徒達に発信していました。

そのため、やり方を変えるのなら今年度ではなく、しっかり話し合った上で、翌年度の年度初めの授業から生徒に浸透していく必要があるとの訴えです。

Fさんから報告があった「前年度までのやり方に固執」という講師陣の態度は、自分が直接話を聴くことで「前年度のやり方を想定して生徒に伝えてきたから、生徒の納得感を守りたい」という主張であるという印象に変わりました。

Fさんの主張は検定の評価とは「普通こうである」という背景に対して、講師陣の主張は「目の為の生徒」の為。

後から発覚するのですが、Fさんは意図的に情報を小出しにして私に相談することが多い傾向にありました。

双方の意見を聴く大切さを痛感した事例でした。最後に次の例を紹介します。

Ⅲ 情報を捏造する

こちらは解説するまでもありませんが、専門学校現場では、保護者が過保護なことをいいことに、根も葉もない事実を訴えて保護者を信用させて、本当はただ学校を辞めたいだけなのに、辞めざるを得なかったという被害者になりたがる生徒が稀にいます。

また、保護者との確執が原因で家を出て、ただ帰りたくないという理由が本音にもかかわらずに言い出せず、彼氏に監禁されていると嘘をついて警察を巻き込む騒動を起こす生徒もいました。

「傾聴」は人の話を聴く態度としてとても大切ですが、これらの事例からはどんな情報を捉えていくかがとても重要なことがお分かりいただけたと思います。

三現主義の解釈として「一方の情報だけで判断せず、必ず双方の立場の意見を確認した上で、自分が見聞きした情報を優先する」という態度を選ばなかったら、一生後悔するような判断をしかねない場面に何度も遭遇しました。

今回お伝えしたいことは、こういった噂を流してしまう人材を信頼するな、ということではありません

例に出したDさんもFさんも、別の切り口で見たときには、良いものをたくさん持っている優秀な部下でした。

ただ、そんな優秀な部下であっても、情報との接し方は人それぞれ態度が異なるので、マネジメントする側は、それらの傾向を理解し、きちんと見極めていく必要があります。

それこそDさんやFさんが悪者になって取返しがつかない事態を招く前に、自分が精度の高い判断を行うのです。

多くの情報に溢れている現代社会だからこそ情報にどう接するのか、情報をどう捉えるのか、常に徹底した態度を示せるように、「情報との接し方」も信念として持つことを強くお勧めします。

続きはまた違う記事で。最後までお読みくださり感謝。

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リーダ―育成・事業再生コンサルタント

本間 正道
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