「100分de名著」で学ぶブッダ「真理のことば」 」1回目その2
1.前回のおさらい
ブッダは人生を、苦しみが連続して起きるものと捉え、自分では避けられない苦しみと、自分の心が生み出す苦しみの、2つの苦しみがあると説いたということを学びました。
さらにパターチャーラーという、夫や子供を一度に亡くし、哀しみに暮れる女性の話が紹介されました。
出演者:
司会 --- 堀尾正明さん
アシスタント --- 瀧口友理奈さん
講師 --- 佐々木閑(しずか)さん
2.ブッダが説いた教えとは?
ナレーション:
ブッダが、パターチャーラーに説いた生き方とは、どのようなものだったのでしょうか?
講師:
「ものごとには発生と消滅があるということを理解せずに100年生きるよりも発生と消滅の原則を見通しながら一日生きる方がすぐれている。」
物事すべてのものは、生まれ、そして消えていく。
このことは、つまり、いつまでも変わらず永遠に存在し続けるものはないという、諸行無常を言い表しています。
諸行無常のすべての物事は、生まれ、消えていくということを理解しないで100年生きるということは、この世の本当の姿を見ないで、理解することなく100年生きるということになります。
しかし、それよりもその原則をしっかり見通しながら、一日を生きた方が優れている、すなわち安楽の道があるということです。
世の中の本当の姿を見ないで生きるということは、つまり間違った物の見方で生きるということになり、苦しい生き方になるということです。
ブッダが考えたのは、この世が苦しみであるならば、そのたくさんの無限にやってくる苦しみを自分がしっかりと受け止めて、それを苦しみと感じないような自分を作らなければならないということです。
つまり自分自身を変えるということが、ブッダの考えた一番の目的なんです。
今回の東日本大震災を考えてみましても、現実は私たちの思いや夢とは一切関わり合いがなく、粛々と進んでいきます。
それほど違いがないときには、食い違いを感じませんが、今回のように急激な形で襲いかかってきたときに、あまりにも大きなギャップが恐ろしい苦しみを生み出すわけです。
3.諸行無常を知って生きよ。
世の中は自分の思いとは関係なく、常に移り変わる。
だから、苦しみが生まれるとブッダは説きました。
さらにブッダはその苦しみを解決する方法についても言及しています。
その方法を「真理のことば」からご紹介します。
「仏と法と僧に帰依する者は四つの聖なる真理、すなわち「苦」と「苦の超越」と「苦の終息へとつながる八つの聖なる道」とを正しい知恵によって見る」
仏、法、僧の3つを合わせたものが仏教を意味しています。
仏教に従う者は、この4つの真理を土台としてものを考えていこうということなんです。
4.ブッダが説いた4つの真理とは?
四聖諦とは、苦しみが起きるメカニズムとその解決法を説いた教えです。
さらにブッダはその解決方法には8つの教えがあるとし、八正道と名付けました。
苦しみが起きるメカニズムは、以下の通りです。
【苦諦】(くたい)
生きることは本質的に苦であるという真理
【集諦】(じったい)
苦の原因は煩悩であるという真理
【滅諦】(めったい)
煩悩を消すことで苦が滅するという真理
【道諦】(どうたい)
煩悩をなくし、悟りを得るための八つの道
八正道は以下の通りです。
【八正道】
【正見】しょうけん --- 正しい知見
世の中の有様を正しく見る見解
【正命】しょうみょう --- 正しい生活
【正思唯】しょうしゆい --- 正しい考え
論理的思考
【正精進】しょうしょうじん --- 正しい言葉
【正語】しょうご --- 正しい言葉
【正念】しょうねん --- 正しい思考
いつも頭の中において忘れずにいる気持ち
正しい気持ちを念頭において生活するということです。
【照合】しょうごう --- 正しい行為
【正定】しょうじょう --- 正しい瞑想
正見という見解をベースにおいて日々を過ごせというのが、四聖諦の道の中身です。
アシスタント:
正しいという基準は何なのでしょうか?
講師:
世の中の正しいということには、いろいろな基準があります。
例えば、道徳的に正しいとか、法律に則ってるから正しいとかいうことです。
ここでの正(しょう)というのは、正しく世の中の有様を見るということです。
私たちは世の中の有り様を正しく見ていません。
その理由は、いつも自分を中心に考えるからです。
私こそが世界の中心であるという錯覚で物事を見ています。
その考え方は、正しくない見方です。
なぜなら社会は、私のことなど考えずに動いていくからです。
司会者:
これができないから苦労があると言ってしまえば、そうなんですが、具体的にはこの八正道をどのように行っていけばいいのでしょうか?
講師:
いわゆる苦行のようなことを行わなくても、日常的な心構えで続けていき、一つずつ積み上げていくトレーニングの中で、私たちは少しずつ心を変えていくことができる、つまり煩悩に支配された日常のものの考え方を少しずつ是正していくということです。
そして、本当の世の中の有様を正しく見ることができたとき、我々は多くの苦しみから解放される、それがブッダの教えです。
5.ここまでの感想
私たちは、この世の中が自分を中心に動いていると錯覚しながら生きているが、それは間違った考えで、世の中は自分の考えとは関係なく移り変わっていくものだという正しい真理を知り、自分の間違った考え方を少しずつ改めていくことで、自分の苦しみから解放されるというというのが、ブッダの教えであることが分かりました。
ブッダの教えは、生きる上で感じる苦しみを、いかに軽減しながら、より良く生きるかという教えだと思いました。
ニーチェの思想では、苦しみについては、あくまで主観的に捉えられ、その定義については詳しく述べられていないように感じました。
しかし一方で、ブッダの思想では、苦しみを、世の中の変化と個人の考えのギャップから生まれたものであるとし、また個人の欲から生まれたものであると捉えています。
ブッダの教えでは、苦しみについて、はっきり定義されているところが、ニーチェの思想とは異なり、特徴的な部分だと思いました。
そして、ブッダの教えは、苦しみを生む原因や苦しみから解放される方法が具体的に説明されており、自分が想像していたより、論理的で実践的な教えであることが分かりました。
ブッダも実際は神仏という存在ではなく、一人の人間だったということも知り、まだまだ知らないことが、たくさんあると考えさせられました。
※NHKオンデマンド、U-NEXTなどの動画サイトで、ご覧いただけるNHK番組「100分de名著」を元に、学んだり、感じたりしたポイントをお伝えしています。
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