皆さん、こんにちは!創業直後のシード期のスタートアップへ投資を行うジェネシア・ベンチャーズの一戸です。
第1回 の令和トラベル/篠塚さん、第2回 のラクスル/松本さんに引き続き、第3回目となる今回は、最近著書 も出版されたマネーフォワード創業者の辻さんにご出演いただきました。本稿は要約版になっていますので、フルver.が気になる方はぜひPodcastで聞いてみてください!
参加者 ・マネーフォワード/辻庸介 ・ジェネシア・ベンチャーズ/鈴木隆宏、一戸将未
自己紹介 一戸: 辻さん、まずは自己紹介をお願いします。
辻: 僕は2001年に大学を卒業してからソニーで3年間働いた後、マネックス証券に約9年間在籍し、その間にペンシルバニア大学ウォートン校へMBA留学も行っていたのですが、それから2012年にマネーフォワードを設立しました。 当社の事業としては4部門あり、最も大きな売上を占めているのはバックオフィス向けSaaS事業で、M&Aでグループジョインしてくれたスマートキャンプ社が行っているSaaSマーケティング支援事業も含みます。オンラインファクタリング等のファイナンスサービス事業も行っています。個人向けだと現在約1,200万人のユーザーがいる「マネーフォワード ME」というサービスを行っています。それから金融機関向けのDX支援を行っている「マネーフォワード X」という事業もあります。
起業の背景 一戸: 辻さんは起業に対する想いはいつどのように芽生えましたか。
辻: 起業したいと思ったことはあまりなかったですが、マネックス証券に勤めていた時にこういうサービスを作りたいと思いまして、マネックス証券の松本さんに色々提案させていただいたんですけど、リーマンショックの時というのもあり新規投資が難しい時期で、だったらもう自分でやらせてくださいということで飛び出しました。
鈴木: もし松本さんが社内の新規事業としてOKを出していたら、そのままやっていた可能性もあったんですね。
辻: 全然ありました。ただその事業は失敗しました。(笑)
一戸: 辻さんはお祖父様がシャープの元社長の方でいらっしゃいますよね。
辻: あまり言わないようにはしていたのですが、そうなんです。シャープの中興の祖と言われる佐伯旭です。僕が物心ついた時にはもう何十年も社長をやっていたと思うのですが、シャープが町工場の時から世界的な会社になるまで社長を務めていて、月に1回ほどの親族の集まりなどで子供心に色々と教えていただいていたのを覚えています。
一戸: その辺りも起業と関係があるんですかね。
辻: どうなんですかね。直接的に思ったことはないですが、社長というものがイメージできていました。大変そうで、逆にやりたくないなと思っていたのですが…(笑)
お金×テクノロジーというテーマ 一戸: 辻さんの本を拝読して、日本に対する憤りについて最初の方に触れられていたと思うのですが、その憤りは具体的にどのタイミングで芽生えましたか。
辻: 社会人になった2001年頃から、お金って人生において大事なのに、学校でも勉強しないし、良いサービスもそんなに無いなという課題意識があったので、マネックス証券が掲げていた資本市場の民主化や、機関投資家レベルのサービスを個人投資家に、というビジョンに共鳴して入社しました。当時、対面や電話がほとんどだった個人の取引が一気にネットに変わって、テクノロジーはすごいなと痺れたのが大きな原体験です。 ネット証券はなかなかお客様に直接お会いできないのですが、提供したツールを上手く使いこなして資産を増やせる方もいらっしゃいますし、一方で上手くいかない方も結構いらっしゃいました。どの株を買うかというのは資産設計においては大分後の話で、毎月のP/LやB/Sがある中で一部を投資に回すとか、分散投資やロングタームで見て、その先でどの株を選ぶかという順番になるですが、どうしても面倒くさいので、すぐ株を買って損したり得したりしてしまいます。当時のネット証券でも数百万人しかユーザーがいなかったので、もっと大きなところにテクノロジーで良いサービスを提供すると、お金に関することが少しは良くなるのではないかと思っていました。 でも何をすれば良いのかわからなくて悶々としていたのですが、アメリカへ留学している時に創業メンバーの1人の瀧がスタンフォードにいて、僕は東海岸にいたのですが、そこでやり取りをする中で、金融教育は大事だけど時間がかかるので、当時伸びていたFacebookから着想を得て、集合知とお金をキーワードに「マネーブック」というワイルドなアイデアを思いつきました。(笑)
一戸: 事業アイデア先行型かテーマ先行型かで言うと辻さんはテーマが先行して、その中でアイデアを模索していかれたのですね。
辻: 僕はお金とテクノロジーに興味があったので、そこで何かやりたいと思っていました。あと、僕が留学していた2009年から2011年は政権が変わって、ジャパンパッシングとかもありました。これだけGDPが大きい国なのに全然存在感が無いんですよ。それってどうしたら良いのかと考えた時に、アメリカを見てると、企業がどんどん生まれ、競争は激しいですが、その中でも残った人たちが世の中を前に進めていて、そういう世の中になった方が社会が元気になるじゃないかと思っていたのを覚えています。
一戸: 「マネーフォワード クラウド」の事業アイデアの着想はどうでしたか。
辻: ユーザーアンケートの結果だったんです。「マネーフォワード ME」のユーザーにどのような機能が欲しいかというアンケートをよくとるのですが、社内で10~20個の仮説も作った上でお客様にお聞きして、その中で最も投票されたのがアカウントアグリゲーション機能を使って面倒な確定申告を何とかして欲しいというものでした。僕も確定申告をやっていてペインだと思っていたのと、あと僕ソニー時代にたまたま経理部だったので、お客様の希望もよく理解できました。全然希望せずに配属になったのですが。
一戸: 元々ソニーで経理部に配属された時は何でなんだと思ったと本に書かれていましたが、結果的にそのような形で紐づいたのですね。
辻: そうなんです。人生どうなるかわからないので、その場その場で一生懸命生きているのは大事だなと。(笑)
PMFとマネタイズ 一戸: 本の中で、事業においてはPMFとマネタイズが重要だというお話がありましたが、辻さんの中ではそれぞれどういう定義ですか。
辻: 色々なプロダクトを作り、ほとんど失敗し、何個か続いているような経験からすると、プロダクトを作る時にマネタイズの議論をしすぎるのは意味が無いなと思っていて、要は使い続けてもらうサービスを作らないとそもそもマネタイズなんて不可能じゃないですか。 まず第一段階は"nice to have"ではなく"must have"なサービスを作ること。それが一番難しいと思うんですよね。それからユーザーが集まってきたり継続的に使ってくれるようになるとマネタイズの話になるわけですが、マネタイズってそんなに手段あるわけではない中で、ユーザー課金や広告など、どのフォーマットにするのかという議論だと思っていて、それよりサービスを作る方が全然難易度が高いので、サービスを作る前にマネタイズの議論をするのは嫌いなんですよね。なので、まずユーザーが使ってくれるサービスを作り、それからマネタイズを考える。 僕も家計簿アプリのマネタイズをどうするのかと言われていた時にある方からアドバイスを受けたのが、ものすごい数のユーザーがスティッキーに使ってくれれば、そのサービスでマネタイズはできないかもしれないけど、会社を売ってマネタイズできると言われて、売りたくはないのですが、なるほどと思って少し救われた思いをしました。
一戸: 現在社内でも新規事業が生まれていると思うのですが、それを検討する際には”must have”かどうかはとりあえずやってみて判断するのか、やる前に議論するのかどちらですか。
辻: やる前にある程度わかるところとやってみないとわからないところは分かれていて、そこの見極めはやはり難しいのですが、基本的にはやってみるコストが低いじゃないですか。僕らだとエンジニア1人、デザイナー1人、ビジネスサイド1人の3人のチームでまずは始めてみます。あとはやりたいパッションがある人がいるかどうかですよね。新規事業って本当に大変で、それを乗り越えるためにはパッションが無いと続かないので、僕がやらない場合はパッションを持っている人がいるかどうかというのはすごい見ます。
初期から2つの事業を展開 鈴木: 家計簿アプリを出して、並行して「マネーフォワード クラウド」を出すような形で資金調達もして事業を伸ばしていったと思うのですが、既に家計簿アプリでユーザースティッキネスなどの手応えがある中で2本目の矢として「マネーフォワード クラウド」にいったのか、まだこれはこれで改善しなければいけないけれど、明確なペインが見えてきたこのタイミングで「マネーフォワード クラウド」を作ろうとなったのか、どのような意思決定でしたか。
辻: 当時10人から15人程しかおらずリソースが無かったので、社内でとても議論しました。結構悩んだのですが、当時「マネーフォワード ME」がプレミアム課金を始めて、ユーザーが溜まってくる中で少しは課金してくれるのもわかってきていたので、「マネーフォワード ME」に賭けるのもありだったと思うんですよ。ところが、僕はクラウド会計に対してこれだと思っていたのと、基本的にアカウントアグリゲーションエンジンを共通化できるので全部がゼロからではありませんでした。そして、作る時にたまたま会計をわかっているエンジニアが2人いたんですよ。1人は会計士の資格を持っているエンジニアで、もう1人は今もいる黒田で、起業して自分で記帳とかをやっていたので詳しくて、僕も経理をやっていたので3人で始めてみたんですよね。
鈴木: 「マネーフォワード クラウド」はペインが明確だったと思うのですが、仮説通りの手応えがあったのか、紆余曲折しながらPMFにいったのかはどちらでしたか。
辻: 紆余曲折はあったのですが、今から考えると、やはりBtoBの方がBtoCより比較的サービス作りは簡単だなと思います。ペインがわかりやすいので。目的が明確だし、お金を払うのも法人なので、BtoBの方がプロダクト設計はやりやすいと思います。BtoCの方が難しいです。
鈴木: BtoCはものすごいユーザー数がいてそれぞれ言うことも違うので、どこに何を当てるかの意思決定がすごく難しいですよね。
辻: あと、BtoCの場合はプロダクトの議論をしている際に自分の意見を言いやすいんですよ。ターゲットユーザーではない人の意見を整理するのは大変なので、BtoCのプロダクトを作る時にはペルソナを決めて、この人にとって良いかどうかだけが意思決定の判断だと明確に話していました。そうしないとあった方が良い機能とかを搭載してしまうじゃないですか。本当になくてはならない機能とあったら良い機能って全然違うと思っていて、なくてはならないセンターピンとなる機能が重要だというのは数多く失敗する中で学んできたことです。
一戸: ユーザーヒアリングも大事ですが、自分たちのプロダクトの方向性とのバランスが重要ですよね。C向けサービスの中でもエモーショナルなものか割と定量的に使われるものかでそのバランスも変わると思っていて、画一的なユーザーヒアリングの仕方は存在しないんだなと改めて思いました。
辻: LINEやFacebookがそうだったと思うのですが、サービスを出してみたら想定外にユーザーが増えて、そこでサーバーが処理できるのか問題がまず出てきてという。BtoCはあの流れが出るまで何回でも打ち続けることが大事だと思うんですよね。
鈴木: BtoCとBtoBの両方を初期のタイミングから始めていた中で、意思決定における頭の切り替えが大変だったと思うのですが、それに悩まれていた時期はありましたか。
辻: ありますね。やはり全然違うので。BtoCはアプリサービスなのでマネタイズが広告とユーザー課金ですが、BtoBはマトリックスに当てはめるので、ビジネスの作り方も違いますし、一番違うのは文化ですね。BtoBで働くのが好きな人とBtoCで働くのが好きな人ってやはり違うので。成功確率も違う中で直近はBtoBの方が伸びたので、バランスを取るのがすごく難しいなと思います。
創業期の仲間集め 鈴木: 最初の10名の仲間集めはどのようにされていましたか。
辻: 知り合いしか来てくれないじゃないですか。(笑) だから知り合いの伝手を辿ってということをやっていたのですが、現職でも活躍されている方ってすぐにジョインなんてできないじゃないですか。なので土曜日だけ来てもらって雰囲気を見てもらったり、こういう世界を作りたいということを理解してもらったりしていて、その中で10人誘ったら1~2人は来てくれたので、それで徐々にチームアップしていきました。
鈴木: セオリー的には上から取れって言いますけど、実際は難しいじゃないですか。今振り返ってみて、このポジションから取りたいという強いこだわりがあったか、入ってくれるのであれば大歓迎ですみたいに組織を作っていったのかどちらでしたか。
辻: とにかくもの作りなので、全ての価値はエンジニアやCTOなどの作れる人ですよね。だから始め僕たちは作れる人の時間を如何に最大化するかを考えて、雑用とか全部やっていましたからね。僕ら全員プログラムは練習していましたけど、全然実力が追いついていなかったので。 創業メンバーのバックグラウンドから足りないところをどう補うかという話だと思うのですが、それでエンジニアから採用して、次にデザイナーが必要になったので金井に来てもらって、徐々にチームアップしていって、ある程度のお金が必要になるので始めはCFOは雇えないですけど、2014年に金坂が来てくれて、彼が来てくれてからはお金のことは全部任せられたので、それはやはり大きかったですね。
組織拡大に伴う組織の壁 鈴木: 組織拡大期における組織崩壊はありましたか。
辻: ありました。本当に会社へ行くのが嫌になる時期がありました。社長なのに会社へ行きたくなくなるってどういうことだと思って結構悩みました。金坂が41人目の社員で、30人目でデザイナーが入っていて、80人目でカスタマーサポートの責任者が入ったんですよ。彼が入ってから僕はカスタマーサポートを一切見なくてよくなって、100人超えてきて人事の責任者で服部が入って、それぐらいの100人超えた時から組織がやばくなってきました。 2015年ぐらいに入ってくれたメンバーの一部は採用を急いだこともあってカルチャーマッチが上手くいかなかったのと、僕らのマネジメント能力もなくて組織が崩壊しかけました。当時チャットワークが荒れて、僕らが総会をやっていたら裏で総会チャットが立ち上がって「あんな奴らの言うこと信じるな」みたいになってしまってとても辛かったですね。 開発については、有難いことにユーザーは増えるのですが、技術負債がすごく多くてそれをどうにかしないといけないけれど、そこまでエンジニアを採用できていないしワークロードも重いので雰囲気も悪くなるし、技術負債が多いので新規開発も止まるんですね。新規開発が止まるとお客さんから「前もこれ言ったのに何で改善されていないの」と言われ営業が辛くなるという。多分その時が一番辛かったですね。
鈴木: その状況はどのように打破しましたか。
辻: 僕たちが作りたい会社ってこうなんでしたっけという議論を行って、ミッション・ビジョン・バリューに本当に魂が入って、そこを軸にして経営しようと決めました。色々な問題を起こしてしまうメンバーも悪気があるわけではない中で、僕たちのカルチャーだとこういうことが大事だからこう直して欲しいと僕が自ら伝えるようにして、結果的にそういう方は辞めていってしまいましたが、僕たちが大切にする価値観はこうですという発信を強めていました。
一戸: 逆に言うと、100人程の規模になるまではあまり組織の壁は感じられなかったのですね。
辻: ありましたよ。100人弱程度の時にメンバーに「評価報酬制度がわからない」と言われて、今考えると間違えた考えですけど(笑)、経営メンバーで「評価されたいんだ」と驚きました。その後議論して、評価報酬制度は明確にルールを作ろうとか、人事制度は必要だとかなりました。それから昔はとにかく働いていて、土曜日も出社日でしたし、土曜日の朝からミーティングを行っていました。でもそれだとサステナビリティがないじゃないですか。色々な人が入ってきてくれて色々な働き方がある中で、それも常に変えていく必要があります。
一戸: より初期の段階における組織作りで意識されていたことや考えていたことはありますか。
辻: 創業時に色々な会社で活躍している人が集まって、どのような会社にしたいか議論したんですよ。そこで出た今の会社の嫌なところ、年功序列や上の人が知恵を出さないということなどは全部やめようという話をしました。その価値観がミッション・ビジョン・バリュー・カルチャーの基礎になりましたね。
一戸: 今、創業期に戻れたとしたらどのようなアドバイスをしますか。
辻: 基本的には組織を作る前にビジネスを伸ばさないと組織なんて作れないですからね。とにかくプロダクトですよね。もう1つは、社長や経営陣に魅力を感じて皆来てくれるわけなので、自分たちの魅力を上げ続けるしかないですね。
ディスラプトか、共創か 鈴木: あと2つお聞きしたいのですが、1つ目は、辻さんはキャラクター的にも事業ポートフォリオの組み方的にも、スタートアップに見られがちなディスラプト思想ではなく共創の思想があるように見受けられるのですが、そこは意識されていたりしますか。
辻: ディスラプトするって手段であって目的じゃないんですよね。ユーザーにとって良いものを作ったり社会をフォワードしたいだけですし、ましてや力のないベンチャー企業だけでできるわけがない中で、同じ志のある仲間で一緒にやった方が良いなというのが1つ目と、あとパーソナリティがあると思うんですよ。僕ら創業メンバーは皆喧嘩が嫌いなんです。(笑) そのパーソナリティが出ているんだと思います。
鈴木: 法人格って経営陣の人格とリンクする部分がありますよね。
辻: 僕も色々な先輩経営者のことを聞いたんですよ。本もたくさん読みましたし、ベストイグザンプルもたくさん学んだのですが、それをやりすぎるとしんどくなるじゃないすか。自分が自分じゃなくなるんです。ある先輩経営者に言われたのですが、結局、社長や経営陣や会社の文化に合うやり方じゃないといつか無理が来ると。なので、自分は自分のやり方で良いんだと言われた時に僕はすごく救われました。ただ当時は何の実績も無かったので、それで良いかどうか自信は持てなかったですが。
M&A戦略 鈴木: 最後の質問は、公募増資も行った中でM&Aも含めたマネーフォワードのポートフォリオをどのように考えているのか教えていただきたいです。
辻: M&A、僕らはグループジョインと呼んでいますが、グループジョインは積極的に行いたいと思っています。3つの方向性があるのですが、プロダクトとして自分たちができないところでグループジョインしてもらうことと(クラビス等)、事業領域を広げるためのグループジョインと(スマートキャンプ等)、それから海外展開の3つの軸で考えています。僕たちの強みがあるのはSaaS×Fintechの領域なので、その領域で面白い会社があればご一緒させていただきたいと思っています。基本的には各事業部のトップや経営陣に任せているので、僕はM&A等の非連続な成長に時間を使っています。
鈴木: 最近だとエンジニア組織の英語化もグローバルを意識されてのことですよね。
辻: 最終的にはグローバルな会社になっていきたいので、ノンジャパニーズやイングリッシュスピーカーがメインになっていくべきだと思っていて、そういう意味では僕たち経営陣もかなりアップデートしないといけないんですけど。
1社目の顧客獲得 一戸: 事業について1つ聞き忘れてしまったのですが、「マネーフォワード クラウド」の1社目のクライアントの獲得はどのように行いましたか。
辻: セミナーをやっていた時に、あるセミナーが終わってからやって来られた先生がいらっしゃって、本でも出てくるトリプルグッドの実島先生なのですが、実島先生が「マネーフォワード ME」をユーザーとして使ってくださっていて、「マネーフォワード クラウド」もこうなると、うちでぜひ使うからと言って使ってくださったんですよ。当時本当に使えなくて、色々な機能も足りなくて、それなのに事務所で使ってくださった恩人なんですよね。なのでその実島先生と、あと徳島のアクシスの川人先生と二大恩人なのですが、未来を見据えて使うって言ってくださったんですよ。全面切り替えしてくださって。先方の事務所さんにはすごくご迷惑をおかけしましたが、そこで寄り添ってくださる方がいらっしゃってそこからニーズをどんどんいただけるので、それに必死に対応していました。
一戸: 少しテクニカルな話になってしまうのですが、その最初の顧客に対しては無料で提供されていましたか。
辻: 普通にいただいていたと思います。初期何ヶ月無料みたいなものはあったかもしれませんが。でも会計事務所にとって会計ソフトを変えるというのはそれ以上に大きな意思決定なんです。直近の金額なんて大きなことではなくて、それより機能を開発してくれと。BtoBはコストは良いから機能をしっかり開発してよというものですよね。BtoCの方がプライスセンシティビティは大きいです。BtoBの場合は営業は売りたいから価格を下げたいと言ってきますが、顧客の課題感って実は機能だったりしていて、そのようにBtoBとBtoCではプライスセンシティビティが異なるので、僕の中で経営の意思決定の仕方を変えています。
次回のゲストとお知らせ 次回のゲストは辻さんにご紹介いただいたBASE創業者の鶴岡さんになります!皆さん、ぜひ楽しみにしていてください。 また、お話でも出てきた辻さんの著書はこちらになります。ぜひこちらも読んでみてください。
そして、採用やM&Aについても積極的に行われているとのことでしたので、気になる方はぜひHPをご覧になってみてください。
おわりに ジェネシア・ベンチャーズからのご案内です。もしよろしければ、TEAM by Genesia. にご参加ください。私たちは、一つのTEAMとして、このデジタル時代の産業創造に関わるすべてのステークホルダーと、すべての人に豊かさと機会をもたらす社会、及びそのような社会に向かう手段としての本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指していきたいと考えています。TEAM by Genesia. にご参加いただいた方には、私たちから最新コンテンツやイベント情報をタイムリーにお届けします。