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日々雑感【人を動かす】

といっても、あの有名な本のことではありません。

今から書くこと。
「嘘も方便」といったほうがいいかもしれません。
人を自分の思い通りに動かすための「嘘」。

私が営業職にあったときに経験したこと二つ。

一つ目はまだ社会人になりたてのころのこと。

社内で1本の電話を取りました。

「あ、もしもし、◯◯です。」

同じ職場の先輩からでした。

先輩「今、□□様にいるんですが」
私「はい」
先輩「(製品)のお値段につきまして、お話をしているところです。」
私「はぁ」
先輩「それで、xx円を希望されていまして、それでしたら、この場でご注文いただけるとおっしゃっているのですが。」
私「ええっと、部長に代わりましょうか?」
先輩「はい、その通りです。」
私「…..」
先輩「はい、かしこまりました、では、それで進めることにいたします。」
私「…..」
先輩「それでは失礼いたします。」

数時間してその先輩が帰社しました。
その電話について、「あ、あれ、嘘、嘘。部長の決裁をもらったフリしただけ。あれで決めてくれたから。」

二つ目。
これは私自身のこと。
やはりお客さまとの価格交渉でのこと。
大口の取引でした。

ある製品の値段について、例えば、最初の提示価格が100万円だとします。
その製品について、私には80万円までは自分の裁量で値引きして良いことになっているとします。
当然ですが、最終的な価格、ひいてはそこから得られる利益が自分の成績に反映されます。

あるとき、その製品について、何度かの交渉の末、お客様から90万円を希望されました。

最初は85万円を希望され、
それに対して私は95万円なら、と答え、
そして、90万円ならその場で決めてくれるという状況でした。

しめしめ、といった場面です。

しかし、そこで私がそのお客様に言ったことは、

「う~ん、それは私の一存では決められないので、一旦預からせてください。」

帰社して上司に状況を伝え、次回、同行して欲しいとお願いしました。
私の意図を察した上司は快く引き受けてくれました。

その数日後の上司との訪問で、
上司「◯◯(私)から報告を受けまして、90万円のご希望とのことですね。」
上司「弊社もなかなか厳しいのですが、大切なお取引ですので、90万円で進めさせていただきます。」

ということで、90万円での取引が成立しました。

二つの事例とも「嘘」の芝居で相手を動かしました。
「そんなに時間をかけなくても」と思われるかもしれません。
しかし、大事な取引であればあるほど、丁寧に時間をかけて交渉を進めることが必要だと考えています。

このことは営業上の価格交渉に限ったことではありません。

社内でも、例えば、期限が求められている仕事を引き受けるとき、あるいはこちらから期限付きで依頼するとき。
私は今の仕事でも本当のことを言いません。
自分が受けるときは数日の余裕を持たせた期限で引き受けます。
逆のときは、本当の期限よりも数日早い日付を相手に求めます。

秘書のように人に仕える仕事でも、例え相手が偉い人であっても、それがその人のためになるのであれば、あるいは、組織のためになるのであれば、「嘘」をつく勇気が必要だと思います。
当然ですが、それが芝居だったことは後になっても明かしてはなりません。
二度とその芝居が使えなくなるから。

ですから、この場合は先ほどの価格交渉とは違い、見えない努力です。
まさに縁の下の力持ちです。

しかし、そのような努力そのものが人に見られなくても、
もし、人から「あの人に頼むとなんだかうまくいく」「あの人がついているなら安心して任せられる」
自分が、あるいは、自分が仕える人や組織がそう思われるのなら、それこそがその「見えない努力」の賜物なわけです。

人に自分の思い通りに動いてもらいたいとき。
ときには嘘を含んだ芝居をすることが必要なことがあるでしょう。
それが罪のないことであれば、決して批判されることではありません。
それによって思い通りの結果を得ることができるのであれば、全体のためになります。

人と相対するとき、どうすれば相手が自分の思い通りに動き、全体にとって良い結果を得ることができるか。
どんなに小さなことであっても、丁寧に、誠意を持って、考え、動くことが必要だと思います。

たとえ、そこに「嘘」が含まれていても。

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