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芽吹く

今年は暖かそうだし、去年よりも早く植えようと思い、ゴーヤとふうせんかずらの種を蒔いたら、もう芽が出てきた。
同時に、何も植えていないプランターから芽が出てきた。いや、前に何かの種を蒔いたような気がする。1番、日が当たらない場所だった。
雑草かと思ったけれど、何か違うなと思った。雑草なら、同じようなものがたくさん周りにあるはずだから。
本葉が出ているけれど、見覚えがなかった。もしかすると秋に妹のところから持って帰ってきた種かもしれないと思い、芽の写真を妹に送ってみた。
〈これは、木やな〉
すぐに返事が返ってきた。
〈ほんま?〉
〈たぶん、ウリハダカエデかなー〉
どんな木だったかすっかり忘れてしまっている。でも、芽が出たことがうれしかった。
日記を見ると、種を蒔いたのが11月の7日。ちゃんとここで育つのかわからないけれど、なるべく大きくなってほしい。そして森に帰したい。
そんな想いがむくむくと湧き上がる。
木を切るのはあっという間だけれど、育てるのには何十年もかかる。きっと生きている間に見ることは無理だろう。
それでも、繋ぎたいと思う。
京都の夏やゲリラ豪雨に耐えられるか、鹿はさすがに食べには来ないけれど、虫はここにもたくさんいる。
できる限り、気にかけてやろう。それしかできることはない。
そんなふうに思いながら、朝起きて窓から眺めている。
想いが強いからといって、何もかもうまくいくわけじゃない。そうやってる間にもどんどん木は切られていく。
オセロの盤みたいだなとよく思う。白にしてもすぐに黒に戻される。
優勢なほうは多いから、白には勝ち目がないように見える。
頑張って白くしても、また黒になる。それでも自分が白であり続ければ、ある日、隣がぱたんと白になる日がくるかもしれない。
誰かにバトンを渡せる日が来るのかもしれない。
そんなことを考えながら、留守のときも水をあげられるようにしておかないとなぁと頭を巡らせる。
芽吹きの季節である。

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タネカラプロジェクト

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