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変容の中で

見上げてみると、刻一刻と変わっていく秋の空だった。日が差したり、雲に隠れたりするたびに、万華鏡のように表情が変わっていく。
神社の参道でひとり立ち尽くす。
ただ生まれて終わってゆく自然の営みの、その圧倒的な揺るぎなさに人は胸を打たれるのかもしれない。
雨のような音を立てて、銀杏の葉が落ちていく。
隙間から空が覗く。木々を通り抜けた風はわたしのところまでは届かなかった。
言葉を持たないものの前で言葉を探す。わたしは言葉を使うものだから、決して敵いはしないのだと、ふと思った。
探そうとする手を引っ込めて、心を無にする。ただ感じてみる。
誰かの靴の音、自転車のペダル、遠くの方で鳴る風。
秋と冬の間にいるんだ、と思った。ちょうど落ちていく葉のようにゆっくりとそれでも規則的に、確実に終わっていく。
終わりの中に始まりがあり、そこには期待も絶望もない。
ただ、過ぎてゆくだけ。

#エッセイ #秋 #変わる


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