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蝉の夏

今日は妹の働く朽木の森へ。
天気が良すぎて怯んだけど、ユリの木にどうしても会いたかった。
あまりに暑くて川で遊んでから行くことに。
川の水は冷たいかと思ってたら案外温かかった。私は水着もないので石に座って足だけつけてたら、小さな魚が足の指をつんつんしてきた。
木が影を作ってくれて、ときおり吹く風が川面に光を反射させる。昔からこういう風景が好きだったなと思う。
すこし遊んでからユリの木の広場へ。
前と少しも変わらず枝を広げて待っていてくれる。なんとか登って太い枝に腰かけ、空を見上げた。
手のひらみたいな葉っぱの裏に蝉の抜け殻がいくつもくっついている。
一本の木がいったいどれだけの命を支えたんだろうか。
あんなに高いところまで蝉は登って殻を脱ぐんだ。ちゃんと命を守れる場所を知っているんだ。
小さい殻はひぐらしかな。大きいのはクマゼミかな。
木の上に吹く風はちょっと透きとおっている。
抜け殻だけ残していつのまにか蝉は消えていく。
私もいつかはいなくなる。
葉っぱの隙間から夏の空がのぞいている。
また、夏が終わる。

#エッセイ #蝉 #夏 #ユリの木 #あの夏に乾杯

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