「膝枕」妄想会議メモ─モノが語る物ローグ
休日の朝、独り身で恋人もなく……かどうかはわからないけれど、打ち込める膝はある「膝マメのコバ」(膝番号13小羽勝也さん)がルームを開いた。
朗読15分のあと、感想会からの妄想会議が盛り上がった。読みが熟した膝枕erたちの感想や思いつきに膝を打っていたら、1時間を超えていた。
薫は男か女か
小羽さんが朗読したのは、やまねたけしさん(膝番号69)が書いた外伝「薫の受難」。主人公は「膝枕課」に配属された開発者、薫。男とも女とも取れる名前にしたのは「はじめて書いた小説なので、読者を驚かせる仕掛けをやりたかった」と、やまねさん。どちらの性別として朗読するかは読み手に委ねていて、小羽さんは男として読んだ。
箱入り娘の自立を訴える外伝を書いているきぃくんママ(膝番号34)は、「膝枕ちゃんが女だから薫は男だと思い込んでたけど、女と女だって成立するんですよね」
わたしは「ブラウスという言葉が出てくるが、男がブラウスを着てもいいし、モノである膝枕と生身の男が恋愛する世界では、男か女かのとらえ方もおおらかで良いのでは」と話した。
なにせ、きぃくんママの最新の外伝「だんすワニと『膝枕』」では、わにが膝枕を注文しているのだ。
百膝一首と土佐日記と
隙あらば膝。膝あらば、さらに膝。先日の「百膝一首」膝合わせで膝を入れた三十五番に「薫」が登場するので、紹介させてもらった。
「河崎卓也さん(膝番号26)のヒサコ外伝(僕のヒサコ)も箱に着目してますね」と小羽さん。
「そもそも通販の箱を取っておいたってことは、返品するかもと思ってたってことですよね」とわたし。
すかさず百膝一首三十五番の別版を紹介。
百人一首の三五番の作者、紀貫之といえば「土佐日記」。「そういえば、紀貫之は女のふりをして書いてますね」と、やまねさん。書き出しは「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり」。
薫から始まった男女話が「百膝一首」経由で土佐日記とつながった。
モノが語る物ローグ
「占い師が見た膝枕」「執刀医が見た膝枕」など視点を変えて外伝が次々と生まれているが、「箱が見た膝枕」もありではという話になり、
「ヒサコが来るたびに箱入り娘が押し込められ、男の身勝手さを嘆いたりら箱入り娘に同情したり。あんな男の子やめときと言う世話焼きおかんキャラ」
「一緒に逃げようと誘うヒーローキャラ」
「水には弱いので、ゴミ捨て場に捨てられて真夜中の雨にうたれると、しなる」
「普段はカサカサで箱入り娘の膝が当たるとすり傷を作ってしまうので、濡れてしんなりすると痛くはなくなる」
「しんなりすると箱入り娘の膝の心地よさを知る」
「後日談で男と箱入り娘の切り離しが成功したら、男が真っ先にすることは、箱を捨てることでは?」
「箱は再生紙にされるために溶かされながら、膝枕と溶け合う心地よさを疑似体験。生まれ変わったら、箱入り娘の家に届く荷物の箱になって再会したいと願う」
ノリ良くテンポ良く、熟練膝枕erの連想ゲームで話が転がっていった。
「他のモノたちでも作れそう!」
「だったら、スカートは?」
デパートのレディースフロアで店員以上にひいていたスカートが「やだ、近づかないで。買わないで」とおびえていたら買われてしまうのが、男との出会い。
「着せられるとき、(箱入り娘がはいている)ショートパンツに優越感を覚えそう」
「スカートとショートパンツの会話も面白そう」
他に「ヒサコの歯ブラシ」(初代から2代への引き継ぎ」「人の出入りを知っている表の階段」「玄関のドア」といったアイデアが。
短編オムニバス「モノが語る『膝枕』物ローグ」。近日発表⁉︎
「耳かきリフレだけの外伝もありかも」
「受付も、耳かきしてくれるのも、全員膝枕」
「膝枕カンパニーのアンテナショップになってて、気に入ったら購入できるとか」
「カタログにある一つ一つの膝枕でも外伝作れそう」
「子守膝枕の延長で、英才教育膝枕は?」
「0歳からはじめる膝枕で子どもを東大に入れましたっていうセミナー外伝」
膝枕erの妄想は止まらない。
ヒマなのか、いや、ヒザなのだ。
clubhouse朗読をreplayで
2023.1.20 膝枕リレー600日記念小羽勝也さん
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