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大人こそサンタクロースを待っている─サンタさんにお願い

USJ小説『クリスマスの贈りもの』

クリスマスが好きだ。どれくらい好きかというと、大学の卒業式でクリスマスツリーになったくらい。入学式に着た手作りのワンピースの桜色を緑色に染めて、集めているクリスマスグッズを総動員させてじゃらじゃらぶら下げて、クリスマスみたいに楽しい4年間でした、と大学から巣立った。

もちろんサンタクロースも好きだ。天井からぶら下げるくらい。

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10年前、クリスマスの短編小説を書いた。

コピーライター時代に「いまいまさこ」の名前で出した小説『ブレーン・ストーミング・ティーン』(2017年に全面加筆し、文庫版『ブレストガール!女子高生の戦略会議』に)を熱烈に応援し、「ぜひまた小説を書いて欲しい」と言い続けてくれた友人N君が企画を立て、声をかけてくれた。

「クリスマスのUSJを舞台にした短編小説を4.5編書いてもらえる?」

うれしかったけれど、戸惑った。『ブレスト』は広告業界での実体験を元に膨らませたものだけど、親子の絆をテーマに何編も書けるだろうか……。

本業は小説家じゃなくて脚本家だし、名前のある作家さんに頼んだほうがいいのではと返事したところ、「まだ色がついていない人に書いて欲しいのです」ともうひと押しされた。



平日昼間のUSJをN君と歩きながら打ち合わせし、ためしにまず「てのひらの雪だるま」を書いてみた。書けそうと手応えを感じて、立て続けに4篇書いた。「重い話が多い」と指摘されると、ちょっと軽めの話も書いた。

書いている間は、ほんとに楽しくて、母国語(大阪弁)で台詞を書けるのは、サイズがぴったり合った靴で走らせてもらっているみたいに気分が良かった。自分が子どもの頃からたくさんのプレゼントを受け取って来たことを思い出して、幸せな気持ちにもなれた。

気がつくと、10篇の短編が出来上がっていた。

4篇に絞り込み、『クリスマスの贈りもの』というリボンをかけてもらい、USJのクリスマス特設サイト「Limited Christmas(リミテッド・クリスマス)」に並べてもらった。

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『サンタさんにお願い』

『てのひらの雪だるま』

『パパの宝もの』

『壊れたビデオカメラ』

「また小説を書いて欲しい」と言い続けてくれたN君の熱意が何年か越しで形になったことが、わたしにとって最高のクリスマスプレゼントになった。

翌年のクリスマス特設サイトには『男子部の秘密』が加わり、5篇が掲載された。(つまり、好評だったらしい)

それ以降は出番がないが、毎年クリスマスが来ると、どこかで読んでもらえたらという気持ちになっていた。

どこかで。

今年はnoteがあるじゃないか。

というわけで、まずは第1話「サンタさんにお願い」を。

今井雅子作 クリスマスの贈りもの「サンタさんにお願い」

何度確かめても、携帯電話に夫からの着信はない。

「それやったら、今日にせんかったら良かった」

誰に言うともなく実和子の口からこぼれたつぶやきは、十二月の寒空に吸い込まれていった。右を向いても左を向いても赤と緑のリボンやリースに彩られ、これでもかとクリスマス気分を盛り上げているというのに、実和子の気持ちは沈むばかりだ。

十年前に出会った夫とは、自分たちのためだけにクリスマスという季節はあると信じているような恋人同士だった。彼の言葉のひとつひとつが、宝石だった。なのに、いつからだろう、生返事しか返してくれなくなったのは。言葉のボールが弾まないキャッチボールは、続かない。おかげで、今日USJへ出かけるという約束にも、行き違いが生じた。

「来週の土曜日、空けといて」

その確認をしたのは、六日前の日曜日のことだった。一週間は月曜日から始まると考える実和子は、「明日から始まる週の土曜日」を指したつもりだったが、一週間は日曜日から始まると考える夫は、「次の日曜から始まる週の土曜日」だと受け止め、一週間の差が開いてしまった。土曜日ひとつ分のズレが、埋められない溝のように思えて、気が滅入る。

「家族より仕事のつきあいが大事なん?」

今朝早くゴルフバッグを担いで出かける夫の背中にイヤミを投げつけたら、

「今から断るなんて、感じ悪いやろ」

悪びれるどころか開き直る夫に、怒りたいのはこっちやけど、という憤りと、この人には何を言ってもしゃあない、という諦めが同時にこみ上げた。

今日USJに来ることになったきっかけは、実和子が応募した懸賞に当選したことだった。パーク内のフォトスタジオで合成撮影の記念写真をプレゼントしてくれるという。映画の登場人物のなりきり写真を無料で撮れるというわけだ。

ロサンゼルスの本家ユニバーサル・スタジオへは新婚旅行で訪れたが、大阪にあるほうは、電車で一時間の距離にありながら、行ったことがなかった。ユニバーサル・スタジオと聞いて、夫は懐かしがるどころか、

「たかだか写真一枚のために、わざわざ行くんか?」

と夢のないことを言った。家族全員分のチケットが当たったわけじゃない。お金に換えれば、大した価値はないかもしれない。でも、

「今年のクリスマスの記念になるやん」と実和子が食い下がると、

「今年のクリスマスに、なんか意味があるん?」と絶望的な答えが返ってきた。

やっぱりあかんわ。決定的にズレてる。

初めてのデート。初めてのプレゼント。初めてのキス。初めての朝。二人で記念日を数え集めた頃もあったのに。その中でも、クリスマスは、いちばん幸せな日やったのに。

なんで、同じ二人が、同じクリスマスの話で、こんなに苛立ってしまうんやろ。

「後で追いつけば、ええんやろ」

玄関のドアを開けながら投げやりに言う夫に、

「いいよ。たかだか写真一枚のために、わざわざ来んでも」

売り言葉に買い言葉でピシャリと言うと、夫は助かったという顔になった。

「ママー、早く早くー」

実和子を呼ぶ娘の声で、我に帰った。駆け足でずいぶん先へ行ってしまった真美が振り返り、手袋をはめた手を大きく振って、急かし立てる。

「そんなに早く走られへんって。おなかにもう一人抱えてるんやから」

ぼやく声は、真美には届かない。独り言がふえたのは、夫に話を聞いてもらえないせいだろうか。

「走って転んだりしたら、また先生に叱られるやん」とブツブツと続けた。

七年ぶりの妊娠で、真美を産んだときの産婦人科の先生に再びお世話になることになった。

「二回目なんやから、大丈夫やね」だの「二回目なんやから、しっかりしいや」だの言われるが、前の妊娠で教わったことなんて、慣れない育児にあたふたするうちに忘れてしまった。 

とにかくおなかを冷やすなと口酸っぱく言われたから、今日はコーデュロイのパンツの下に厚手のタイツを二枚重ねてきた。だから、余計にモコモコして、歩きづらい。大きなおなかが邪魔になって、がに股歩きになるので、ペンギンみたいに体が左右に揺れる。

愛しい相手のことしか瞳に映らない若いカップルと正面衝突しかけて、咄嗟に謝ったが、二人にはその声さえも届かないようだった。

「ママー、もう、早くー」

あと数か月でお姉ちゃんになるというのに、真美は自分のことしか考えていない。一人っ子の時間が長過ぎたのかもしれない。

だから、もっと早く二人目をと言ったのに。

わがままな娘と、あてにならない夫。こんなんで二人目を産んで大丈夫なんやろか。

ふと弱気になっておなかをさすってしまう。不安はあるがまだ姿を見せないこの子だけが、希望でもある。性別は、あえて聞いていない。

男の子でも女の子でも、どうかわたしの味方になってくれますように。

ペンギン歩きで実和子がようやく真美に追いつき、

「もう、さっきからうろうろして、どこに行きたいん?」と頬を上気させた顔をのぞきこむと、

「サンタさん探してんねん」と年相応の無邪気な答えが返ってきた。

「サンタさんやったら、うちの近所にもおるやん」

せっかく一日券料金を払ったんやから、サンタクロースを探し回るより、ショーやアトラクションを目一杯楽しまんと、と家計を預かる主婦は元を取ることを考えてしまう。

「ほら、真美、そこにサンタさん」

赤と白のおなじみの帽子をかぶった案内係の青年が、腕をからめたカップルに向かってシャッターを押しているのを指差すと、

「本物のサンタさんやないとあかんの! テレビに出てたサンタさん!」と真美は口をとがらせ、「大事なお願いごとがあるんやから!」と言い張った。

どうやらテレビで見たUSJの特集に、いかにもそれらしい彫りの深い顔立ちのサンタクロースが映ったのを見て、本場の国からやって来ていると思い込んだらしい。

そうか、真美はまだサンタクロースを信じてるんや。

夢を壊すようなことを言うて、かわいそうなことしたなと実和子は反省しつつ、何をお願いする気なんやろと気になる。

本物のサンタさんになら、とっておきのわがままを聞き届けてもらえると真美は思っているのかもしれない。パパやママには買ってもらえないおもちゃでもねだるつもりなのだろう。

「今日中に、どうしてもお願いせんとあかんの! 来年のクリスマスやと手遅れやから!」

言い出したら一歩も引かない気の強さは、実和子譲りともいえる。それゆえ余計に歯がゆいのだが、もう少し我慢ができて融通の利く子になってくれたらと思う。

「アツシ、はよおいで!」

「まってや、おにいちゃん!」

幼い兄弟が実和子と真美の脇をすり抜け、その後ろからビデオカメラを構えた母親が追いかける。上は五歳、下は三歳といったところか。

「あ、危ない!」

実和子が思わず声を上げたのと同時に、足がもつれてバランスを崩した弟が派手に転んで、アスファルトに手をついた。

「だいじょうぶか? たてるか?」

引き返した兄が手を差し出すが、弟はびっくりしたのと痛いのとでウワーンと泣き声を上げる。その決定的瞬間をビデオに収める母親の脇から父親が兄弟に駆け寄り、「ケガないか?」と声をかける。

「ないたらあかん! おとこやろ!」

お兄ちゃんが励ますように弟の背中をたたくと、弟はしゃくり上げながらうなずく。

真美もあんな風にしっかりしたお姉ちゃんになってくれたら、と実和子はあやかりたい気持ちになる。妹か弟ができれば、自然と辛抱強くなるし、思いやりも育つはずやと夫はのんきなことを言っているが、そうなってくれなければ困る。

真昼の雪を降らせるクリスマスショーを見る間も、真美の目はサンタクロースを探していた。スノーマンは次から次へと出てくるが、サンタさんは現れない。クリスマスソングに合わせて手拍子をしたり踊ったりするまわりの子どもたちの天真爛漫さが実和子はうらやましかった。

紙吹雪のようにひらひらと舞い降りる雪に子どもたちの歓声が上がったが、サンタさんのことで頭がいっぱいの真美は、空を見上げるより、地上に目をこらしていた。

「あー、またおなか冷えるわ」

実和子はブツブツつぶやき、コートに落ちた雪を払った。

お昼を食べてもギフトショップに立ち寄っても、真美の執念は衰えず、本物のサンタさんを何としても見つけたる、と意志を秘めた足取りで歩き続ける。その後から、実和子は大きなおなかと大きなため息を抱えて追いかける。

ゴルフはとっくに終わった頃だが、「やっぱり今から行く」という夫からの連絡は、今のところ、ない。

とそこに、携帯電話が鳴った。

「パパ?」と着信画面を確かめずに出ると、

「実和ちゃん?」と電話の向こうで戸惑った女性の声がした。

「ごめんなさい、義雄さんからやとばかり……」と恐縮する。 

電話をかけてきたのは東京に嫁いだ夫の姉で、年末年始の帰省の相談だった。年に一度、夫の実家で顔を合わせるだけだが、「よっちゃんより実和ちゃんのほうが、話が早いから」と何かと電話を寄越してくれる。

「今、真美と二人でUSJに来てて」

「よっちゃんは? 土曜日も仕事なん?」

「仕事っていうか、遊びっていうか」

「わかった、ゴのつくやつやろ?」と義姉がからかうように言い、「当たり」と実和子は答える。

「ちゃんと家族サービスせんと逃げられるよって、お義姉さんからも言うてくださいよ」

さばさばした義姉相手に軽口をたたいていると、いくぶん気持ちが軽くなった。

「自分勝手なところは義雄さんに似たんか、真美は真美で、サンタさんにどうしてもお願いしたいことがあるって、またどっか行ってしもて」

「一緒に出かけてくれるだけ、いいやん。うちなんか、もう私と歩きたがらへんよ」

「アッコちゃんとミミちゃん、まだ中三と中一やん」と義姉夫婦の娘たちの年を確かめると、

「お友だちと出かけるほうが楽しいんやって。こっちも親離れしてくれてラクやけど」

からっとした口調で義姉が言うのを聞きながら、実和子は頭の中で引き算をする。あと四、五年で、真美もそうなってしまうんやろか。

「赤ちゃんも生まれるし、まだまだこれからがお楽しみやん」と義姉に言われて、

「なんか先が思いやられるけど。手のかかる子どもが三人にふえるみたいで」と冗談めかしてこぼすと、

「ちょっと、今日はやけに愚痴っぽいけど、よっちゃんとなんかあったん?」と心配された。

「ないない、なーんもないって」

努めて明るく否定しながら、会話も弾まないし、電話も来ないし、何にもないのが問題なんやけど、とぼやきそうになるのを呑み込んだ。

実和子が義姉との電話を切ったところに、真美が駆け戻ってきた。弾む足取りを見て、

「サンタさんに会えたんやろ」と言うと、

「なんでわかるん?」と夫によく似た大きな目を丸くする。

「ママはなんでもお見通しや」

「それやったら、これ、なんて書いてるかわかる?」

真美は先ほどギフトショップで買ったハローキティのノートを肩かけ鞄から取り出し、一ページ目を広げて見せた。

「へーえ。サンタさんにサインもらったんや」

「な、本物やろ」

真美が誇らしげに示すノートには、英語で”Merry Christmas! Santa Claus”ともっともらしい文句がしたためてある。これぐらいなら実和子にも書けるけれど、小学生はいとも簡単に騙される。

「続きがあるねん」と真美がページをめくると、今度はまとまった分量の英文が目に飛び込んだ。

出だしの一文は、“You are such a sweet girl”となっている。

ユー アー サッチ ア スイート ガール。

似たような例文を高校の英語の時間に習った記憶が蘇った。あなたは、なんて○○○なのでしょうという感嘆文。

《あなたは、なんて……甘い女の子なのでしょう》

真美はサンタさんにとんでもない無茶なお願いをしたのだろうか。それを「甘い」と呆れられたのだろうか。

えらい辛口のサンタさんやなあと実和子は思いかけて、スイートには「優しい」という意味があったことを思い出す。

《あなたは、なんて心優しい女の子なのでしょう》

こっちが正解やろかと続きに目を走らせる。

“Thank you for telling me there is your sister or brother in your mommy. You don’t have to give up your present. I promise to prepare special present for the baby,too.”

ママのおなかに赤ちゃんがいるって教えてくれてありがとう。君の分のプレゼントを諦めることはないよ。ちゃんとその子の分のプレゼントも用意するからね。

三回読み返してようやく意味をつかむと同時に、真美がサンタクロースを探し回った本当の理由がわかった。

「あたしのプレゼントはいらないから、赤ちゃんにあげてください」

真美はきっと、そんな風にお願いしたのだ。

ごめんな、真美。自分のことしか考えてないわがままな子やなんて、ママ、あんたのどこを見とったんやろ。

涙がこぼれそうになって、実和子はあわててノートから顔を上げる。せっかくのメッセージが涙でにじんだら、大変だ。

「ママ、どうしたん? なんで泣いてるん?」

真美が不思議そうに実和子の潤んだ目を見上げる。

「サンタさん、なんて書いてあったん? ママに見せたら、わかるて言われてん」

ママに見せなさいって、サンタさんがそう言ったん? 

真美に確かめようとするけれど、涙で言葉にならない。

「なあ、どういう意味?」と真美はサンタクロースのメッセージを指差し、実和子の返事を待つ。

「おまじない」

絞り出すように実和子は五文字を告げた。

「おまじない?」

そう。ママがやさしくなれるおまじない。

「真美、大きなったなあ」

泣き顔を隠すように、実和子は真美を思いっきり抱きしめた。

真美が探し当てたサンタクロースは、本物だった。わたしが今いちばん欲しいものを、ちゃんとわかって、贈ってくれたのだから。

「でも、あんまり急いで大きならんといてな」

声に出さずに、心の中でつぶやいたら、また涙がこみ上げた。

真美を強く抱きしめると、おなかのふくらみが意識された。真美と実和子でおなかの赤ちゃんを抱きしめているみたいだ。

心配せんかて、大丈夫。真美は、もうすっかりお姉ちゃんや。

「あ、今、けった!」と真美が声を弾ませ、実和子のおなかに手を当てる。さっきより大きなキックがおなかの中から返ってきて、真美のてのひらにシュートを決めた。

少し離れた広場で、再びクリスマスショーが始まった。あれから、もう二時間近く経ったのだ。

「ママ、行こっ!」と真美が実和子の手を引く。

陽気なクリスマスナンバーに乗ってスノーマンが踊っている。

こんなに明るい歌やったっけ。

こんなに楽しいダンスやったっけ。

こんなに、にぎやかなステージやったっけ。

実和子が真美の手をぎゅっと握ると、真美がぎゅっと握り返した。何も言葉を交わさなくても、二人は同じ景色を見て、同じ感動を味わっている。

真美は七歳の子どもらしく目を輝かせ、ショーに見入っている。頬を伝う涙を真美に見られなくて良かった。

ひらひらと真昼の雪が舞い降りた。さっきは寒々しく思えた雪が、今は心をあたためてくれる。

空からのクリスマスプレゼントみたいだ。

涙がひいたら、夫に電話しようと実和子は思った。

真美ったらなあ、いつの間にか、お姉ちゃんになってた。わたしらも、しっかりせなあかんね。

今なら、強がらず、素直に言える気がする。やっぱり来てよ、一緒に記念写真撮ろ、と。たかだか写真一枚だけど、わざわざ撮る価値はある。

パパと、真美と、わたしと、おなかの中のもう一人。この写真を撮れるのは、今年のクリスマス限りだから。

強情なところが実和子と似た者同士な夫も、何度も着信を確かめているかもしれない。

誰かが誰かのサンタに

書いてから10年。読み返してみると、サンタクロースを探し回っていた女の子よりも、お母さんがサンタクロースを必要としていた話なんだなと思う。

「ちゃんと見てるよ。大丈夫だよ」と絶対的な安定感で言ってくれる大きな存在。

もの書きであるわたしの場合、ものを書く依頼が来るというのは、サンタクロースの大きなてのひらで背中を押し、背中をさすられ、「書き続けていいんだよ」と豊かな白ひげの向こうから言われるようなものだ。

サンタクロースになってくれたN君、元々肉付きいい人だが、年々お腹がボリュームを増し、髪と伸ばした口髭は白くなり、2年前に再会したときは見た目もサンタクロース化が進んでいた。

わたしは10年経つ間にサンタクロースのてのひらに慣れ、ひとつひとつに感激したり感謝したりすることは減っていった。

それが今年、変わった。ものを書けるということ、それを発表する場所があり、それに値段がつくということがどれだけありがたいことか、見つめ直す年になった。

先週土曜日、12月5日からsaitaというサイトで小説の連載が始まった。誕生の経緯はひとつ前のnote「埋蔵主婦を発掘する」に書いたが、タイトルになっている「漂うわたし」たちの物語。ここに登場する大人たちもサンタクロースのてのひらを求めている。

ネットで小説を読んでもらえるのは「クリスマスの贈りもの」ぶりだ。

自分の書いたものが誰かへの贈りものになるのは、書き手にとっても贈りものになる。ここnoteで、わたしは毎日のように誰かの言葉にときめきや励ましや気づきをもらっている。わたしの小さな物語たちも誰かに届いて、ささやかなジングルベルを奏でられたらうれしい。

贈りもの贈りものを贈り合うように、誰かが誰かのサンタになれる。

※12/11追記。N君とのメールを掘り起こすと「クリスマスの贈りもの」がUSJ特設サイトに掲載されたのは2009年。10年前よりさらに前だったことが判明。2年目の掲載からは10年ということで本文はこのままにしておきます。

replayで聴くClubhouseクリスマス

2021.12.25 Miho.Fさん さんがつ亭しょこらさん Rie Kawataさん

2022.12.14 おもにゃん(Atsuko Fukuoka)さん

2023.12.19 おもにゃん(Atsuko Fukuoka)さん


目に留めていただき、ありがとうございます。わたしが物書きでいられるのは、面白がってくださる方々のおかげです。