見出し画像

[書評]川上徹也『すごいタイトル㊙法則』|売れるタイトルの案出やコピーライトの勘所がつかめる良書。

ジョン・ケープルズの名著『ザ・コピーライティング』は日本での2008年の発刊以来、珠玉の書としてたくさんの読者を獲得してきた。本書はアメリカ広告業界で伝説的コピーライターとして活躍したケープルズが実証的かつ即効性のある科学的広告ノウハウを明かしたものだ。「収益をあげる言葉」「売れる言葉」の数々がコピーとして躍動するさまは凄まじい。

今回紹介する川上徹也著『すごいタイトル㊙法則』は、その衣鉢を継ぐものである(と言うと川上氏は恐縮されるだろうが……)。この本では「タイトル」にフォーカスした「売れる言葉」の法則が示されている。

ウェブ上で万人が発信できる時代が到来して久しい。世は「タイトル氾濫時代」になった。例えばブログの題名、メールの件名、SNS投稿文のコピーなどをつける必要に多くの人が直面している。仕事でも企画書やプレゼン資料にタイトルをつける場面に出くわすだろう。そんな時に「気の利いた一言」が使えたらどんなに良いだろうか。SNS等でそれができれば、あなたのファンは急増するかもしれない。商材のタイトルがウケればヒットも生まれる。川上氏は、そんな読み手の願望に応える形で――書籍、映画、テレビ番組、楽曲、WEBコンテンツ、広告等々で過去売れたものを膨大に吟味し――「売れたタイトル」「すごいタイトル」に通底している法則を見いだし、提示してくれた。

詳しくは実際に本を読んでほしいが、すごいタイトルの「13の法則」は以下の通りである。

01.「いちご大福」の法則   02.「の」の法則
03.「もしドラ」の法則    04.「プレバト」の法則
05.「パワーワード」の法則  06.「なったらいいな」の法則
07.「数字は奇数」の法則   08.「さおだけ屋」の法則
09.「しなさいするな」の法則 10.「お名前+α」の法則
11.「ん」の法則       12.「ゴロリズム」の法則
13.「色キュン」の法則

ここでは一つだけ「01.いちご大福」の法則を説明する。だが、その前に一言。「すごいタイトル」をつけると言っても、これらの法則をただ知るだけでは恐らくうまくいかない。なぜなら大抵の場合「①売れる・ヒットする」表現と「②カッコいい・印象に残る」表現、そして「③内容がきちんと伝わる」表現は並立しにくいからだ。例えば、タイトルを見ただけで作品の趣旨がわかるような題名をつけようとすると、大体のケースで文字数が多く冗長になり、結果的に題名が印象に残りにくくなる。①~③の要件を満たすような「すごいタイトル」を創出するには、苦悶と知恵が必須なのだ。川上氏はタイトル創案時のポイントとして以下を提示している。

▶「読みたい」「観たい」「買いたい」気持ちにさせる
▶コンテンツの内容や世界観を端的に表現する
▶読者や視聴者の記憶に残り、口コミなどを誘発する

『すごいタイトル㊙法則』青春出版社、44㌻

これらを踏まえた上で、タイトルのスケッチを描く時に13の法則を知って活用すると、素案を考える際にハイレベルな案を次々産出できるようになる。それら素案のクオリティの高さは、最終的に「すごいタイトル」の誕生につながる確率を高めるはずだ。

さて、では「01.いちご大福」の法則に触れよう。これは端的にいえば

「タイトルの前半と後半がまったく合わない言葉を組み合わせる」

同52㌻

ということだ。あたかも「いちご」と「大福」という一見まみえそうにない食材を合体させることで「いちご大福」が美味になるように、関連のなさそうな2つの語を組み合わせて題を考えることで、タイトルが印象深くなるのである。これが当該の法則である。実際にこの手法で売れた「すごいタイトル」は数多とある。川上氏は試みに広告コピーの事例を紹介している。「おいしい生活。」「想像力と数百円」「サラリーマンという仕事はありません」「ココロも満タンに」……。書籍名でいえば『嫌われる勇気』『コンビニ人間』『空飛ぶタイヤ』『下町ロケット』『沈まぬ太陽』などがそれにあたる。たぶん読者の身近にも事例があるのではないだろうか。

本書は、この他12の法則についても納得の理論と事例をもとに紹介している。通読した私の感想としては、「目が見開かされた!」というのが正確だ。正直、感激した。

タイトルやキャッチコピーに悩むことが身近になった現代人にとって『すごいタイトル㊙法則』は座右の書になるだろう。興味を持たれた方は、ぜひ購入して一読し、手元に置いて活用してほしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?