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定期購入ビジネスの裏側について語る

みなさん「定期購入」って言葉を耳にしたことありますか?

最近だとコロナが流行っているので外出を控えてテレビやネットサーフィンの時間が増えている人も多いと思いますが、ときどきテレビから流れてくる化粧品や健康食品のCMで「今なら定期購入コースにご加入頂いたお客様は初回半額にさせて頂きます!」とかやってる、アレです。

最近だとAmazonでも定期購入できる商品が増えてきていますね。

よく考えてみると、新聞配達なんかも定期購読ですし、昔だと牛乳やヤクルトの定期配達なんかもありましたね(今もあるのかな?)

今回はこの「定期購入」ビジネスについて書きたいと思います(とくに裏側を)

定期購入のメリット

定期購入する顧客側のメリットってなんでしょうか?これは何のヒネリもなく単純な話で、

・定期的に届くので、買いに行く手間が省ける
・単発で買うよりも安くなる(ケースが多い)

この2つだと思います。

ちなみに定期購入を促す、事業者側のメリットは以下のようなものがあります。

・売上予測がしやすい
・在庫リスクの低減
・オペレーションの効率化
・一人当たりの収益(LTV)が増加

こんなかんじで、事業者側のメリットはかなりあります。だから通販会社はやたら定期購入を促してくるわけですね。

でも実はこれだけではありません。

定期購入がもたらす効果としてとても興味深いのが、非ロイヤル顧客の囲い込み効果です。具体的に説明しましょう。

非ロイヤル顧客の囲い込み効果

まず、ロイヤル顧客というのはその商品のファンの人達のことで、その商品が自分にとって一番いいと感じている(または信じている)ので、他の商品に浮気する可能性は低く、長く愛用してくれる傾向があります。

逆に、その商品を使用してみて「これじゃないな」「これよりも他の商品の方がイケてるな」と感じた顧客はリピート購入する確率は低く、基本的には離反します。(以後、離反顧客と表記)

一方、ロイヤル顧客でも離反顧客でもないという顧客層が存在します。その商品に対するロイヤルティ※が高ければロイヤル顧客、低ければ離反顧客なので、スパッと2つに分かれるわけもなく、それらは連続的にグラデーションしていると考えるべきでしょう。その中間に位置する顧客を本記事では非ロイヤル顧客と定義することにします。

※ちなみにロイヤルティとは
" 顧客が特定のブランドに対して感じる「愛着や信頼」 " のこと

この人達は(その定期購入している)商品をロイヤル顧客ほどお気に入りとは感じてはいませんが、購入をやめたいと考えている訳でもなく、わりと不安定な状態にあります。もしも定期購入をしていなかったら、現在使っている商品を使い切った時に、またその商品を購入するとは限りません。なんせこだわりがない訳ですから、似たようなスペック・効能をもつ他社製品を目にしたらそっちを買ってしまうことは十分に考えられます。

ではそのような非ロイヤル顧客を定期購入に加入するとどうなるか?

定期的に商品が届けられるため、もし他社製品に乗り換えるためには、定期購入の解約または一時停止の手続きが必要になるため手間が発生します。

そもそも非ロイヤル顧客は現在使っている商品に大きな不満があるわけでもないので、そこまで手間をかけて他社製品に乗り換えようとするモチベーションも低い傾向がありますので、これらが作用してスイッチングブレーキになり、結果的に顧客の囲い込みにつながるのです。

なので、日頃目にする通販系の広告やCMが初回から定期購入するのは心理的ハードルが高いのも見越して、「初回半額!」とか「今ならセットで○○もプレゼント!」みたいな強烈なオファー内容で推してくる理由はここにあります。

ただし、この非ロイヤル顧客の囲い込み効果を明確に認識しているマーケターはあまりいない気がしますね。ロイヤルティが高いから定期購入しているとは限らず、定期購入をあえて解約するほどロイヤルティは低くないから続けている非ロイヤル顧客層は相当数いるものです。

"顧客と長く接点をもてる"

さらに、定期購入だと定期的にモノを届けるタイミングがあるので、顧客との関係が(解約されない限り)長く続く傾向があります。

一見、まとめ買いしてもらった方が送料も低減できるし事業者メリットも高いように思えますが、まとめて販売すると確かにその瞬間は儲かりますが、それらを使い切ったタイミングで一定確率で離反が起きます。

一方、定期購入だと定期的に接点があるため、他の商品をおすすめするチラシや、会報誌(ANAの「翼の王国」みたいな)のように読み物として楽しめるコンテンツなどを届けることによってコミュニケーションし、顧客のマインドシェアをじわじわ高めていければ、非ロイヤル顧客をロイヤル顧客化することにつながり、結果的にまとめ買いよりも高い収益を上げられるという訳です。

定期購入の解約

以上の理由から、定期購入は事業者メリットがめちゃくちゃ高いという話をしてきました。

ですが、顧客にとってみればその商品では満足できなかったり、他の商品に目移りすることはあるワケで、定期購入を解約するケースは当然ありますよね。

一方、事業者からすると、定期購入の解約はストレートに痛手になります。世の中の通販会社では、初回購入時の定期コース加入率UPと、解約率の低減は最優先KPIになっている会社が多いです。解約率低減のためにCRM(顧客とのコミュニケーション施策)に力を入れている会社は多いですね。

一方で、いちマーケター視点としては実に美しくないなぁと思うのですが、解約率を低減させるために、ネット上で解約ページまでの動線をわかりにくくしたり、電話でしか解約を受け付けなかったり、オペレータに引き止めさせたりしている企業も少なからず存在します。確かに多少は効果はありますが、ダサいですよね単純に。。。

それよりはCRMに力を入れ、解約時には真摯に理由をインタビューして改善に努めたり、「またいつでも戻ってきてね」と堂々としている方が長期視点では良いことがありそうな気がするんですけどね。

例えばNetflixなんかも定期購入とは少し違いますがサブスクリプション型の定額プランを提供している点では同じですが、めちゃくちゃ解約するのはラクですし、さすが世界トップシェアカンパニーは堂々としてるなぁ、と感心しましたね。

※日本のケータイキャリアなんかは見習ってほしいものです。

まとめ

という訳で「定期購入」について解説してきました。個人的にはわりと奥が深い仕組みだと思う反面、顧客側のメリットについては各社が工夫を見出していく必要があると思っています。

例えば最近だと日本酒ソムリエがセレクトしてくれる日本酒や、フラワーコーディネーターがセレクトしてくれる花のサブスクリプションサービスがあったり、顧客側にとって定期的にモノが届く以外の付加価値を提供するサービスが急速に増えてきてますしね。

ではでは、またお会いしましょう。

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