リリとロロ 「アザンの森」 ① ②
長編かつサスペンス初挑戦なので暖かい目で見守ってください。
先に言っておきますがグロテスクな表現、著しく倫理観の欠如した表現が含まれますので苦手な方は頑張ってください。
そして、あまりに長いので2話ごと掲載します。
普段の倍以上の文量なので価格はちょっと上がってて堪忍す。
「お昼休憩に読める600文字程度」を意識してきましたが、内容が内容なのでお昼に読む人はいないですね。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
少女のロロ
10歳前後か、思考はそのまま、身体が幼児化している。
10歳前後なので幼児ではないが、きっと親の手を離れかける年齢だろう。
散らばった尿を掃除せずにいた独特の臭いで、自分が和式便所にいることに気付いた。
どうしてまあこんなところに。ガキの考えることはわからない。
学校の体操着のような半ズボンにTシャツ。
如何にもといった感じの小学生。
和式便所に跨っていたのでズボンがずり上がり、白く毛のない腿に驚いた。
野太い音を立てる銀蝿が耳元で騒ぎ、大袈裟に手で払い立ち上がった。
どれくらい此処にいたのかわからないが、用を足したくて待っていた人に悪いと思い、一応流水のレバーを傾けた。
ドアを開けた瞬間、怒号が鼓膜を震わす。
そこは薄暗く小汚いスナックだった。
怒声の先を見遣ると、40代そこらの中年男性が少女の髪を掴み引き摺り回していた。
周りの女性が嗜める中、少女の顔は恐ろしく不気味なほど無表情だった。
冷たい表情とはよく言うがそういったものではない。
温度すら伴わない乾いた透明で、まるで人格が宿っていない人形のようだった。
「可愛げのねぇガキだな!」
本当に人形のように父親らしきその中年男性は少女の髪を離し、放り投げた。
投げ捨てられた小さい身体では遠心力に耐え切れず、背の高い椅子に頭を打ちつけ2,3脚の椅子と共に倒れ込んだ。
取り巻きの女性は見て見ぬふりで、中年男性は下品な笑い声を酒で流し込んだ。
そもそもこんな場所に子供が来ていいのか?
いつの時代なんだここは。
とはいえ紳士の心を有したままの僕は、そっと少女に手を差し伸べた。
少女は僕を一瞥し、何事もなかったかのように小さなお尻を叩き、丁寧に椅子を戻した。
そういうところだぞ、クソガキ。
漏れそうになった言葉をまだない喉仏あたりで留めた。
暴力を正当化するつもりはないが、あの男性の言葉には少し同意した。
椅子を戻し終わり上げた顔は、まあ可愛いじゃないか。
少しキツい目元だが、同じ年頃の女児にしては完成し切っているような、将来有望な顔立ちをしている。
まあ、強い女ってのは好きだ。
あと10年歳を食ったらスマートに口説いてやる。
「名前は?」
ガキらしいあどけない表情を作り、平静を装って聞いてみた。
ガキころのファーストコンタクトとしては妥当だろう。
彼女は全く表情を変えず、小さな声を軽く僕の耳に近付け言った。
「まずは自分から名乗るものじゃないの?」
マセガキめ。
初潮もきてないくせにイキがりやがって。
脳内の言葉を言い終わる前に彼女は、
「冗談。燈里。」と遮った。
完全に表情に表れる前でよかった。
いや、それすら読まれていたのかも知れないというほど底知れない無表情で、恐ろしい「女性」だと思った。
悪女と言うやつか。唆るな。
勝手な想像で言うとあそこに座っている中年男性の前妻との子か、再婚相手の連れ子かそこらだろう。
あまりに僕が彼女を見つめるので、彼女は眉間をヒクッと動かせた。
正木諧 「アザンの森」
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