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はきだこ 第二回

随分と歩いてきて、地上に出た。
今はただ日を除けるためだけにあるシャッター街を歩く。

白い壁に木の床。がらんとした空間に吹き抜けの二階。丸い窓からは公園とラブホテルが見える。
その無機質な空間で音楽は鳴り響いた。
中学生の頃に通った古いレコーディングスタジオのように煙草臭い箱の中、端から端まで音に塗れる時間で、ただ面白いことを見つけて遊んで帰る大人たち。
そんな人たちと場所が好きだった。

音楽で何かを伝えたいなどおこがましいことは考えていないが、遊具があれば無限の遊び方を思いつく子供たちのように、無限のイマジネーションをくすぐられるのが芸術の力だと思ってる。

そんな場所も今は閉ざされ、その筒はちょうど真ん中で分断されている。
ここのところ工事車両の出入りが激しくなり、ただ空しく線路の軋む音だけが鳴り響くようになった。
いま一度、遊び場の価値を見直し、何を追い求め、どう守っていくかを考えたい。


「はきだこ」は作詞した楽曲にまつわるあれやこれやを綴ったショートショートです。

以降は有料記事になっていて、歌詞とラジオのような気の抜けた手記が読めます。
100円ポッキリに設定しているので購入していただけると、明日の僕がちょっと良いコンビニのおにぎりを食べることができます。

今時ガチャガチャですら100円は珍しいと思うので、たまには四角い袋に入ったおにぎりの封を切らせていただけると幸いです。



parks by dat kids

ああ そんな夢見て この街の人はおかしくなった
もう帰ってこれないのか 先はないはずだ
誰も間違いを正してはくれなかったんだ

希望は似合わない 絶望は気障だ
戯けて明るく いつも通りさ

ここからは見えないが行き交う人の手は 強く握られて筋張ってる
悪いのはたぶん きっと彼じゃない
誰も間違いを正してはくれなかったんだ

政治とかじゃない 難しくはない
君もただただ 笑ってたいんだろう?

天を見上げるまあるいガラス
ハシゴで上げるでっかいアンプ
ヤニで汚れてる白い壁のペンキ
苦しくなるほど大きな音で

Run away from the wheels.
Dance in the parks from dusk till dawn.
Ya Run away,Just keep doing.
Save our parks.


はきだこ 第二回

僕がまだ高校一年生だった頃、がらくたロボットというバンドでベースを弾き、元町高架下三番街のO.J.Bで定期的にイベントをしていた。
そのイベントで一行あけてのメンバーに出逢い、この場所でツアーファイナルを打ち、サンメリアのミュージックビデオを撮った。
イベント企画者もMV監督も全て僕がやっていた。

その頃の高架下は女性もののパンティーや煌びやかな小袋に入ったお薬のようなものをビニールカーテンの中で売っていたり、ロングコートの中に骨と皮しか残っていない女性の露出狂がいたり、エキサイティングな場所だった。

不健全で完全な青春が僕らのロックンロールに直結していたからこそ、今のひねくれて美しい音楽というアティテュードを確立できたのだと思う。

そういった場所を失いたくない一心で、惜しまれながらも今年閉店したハンバーガーショップ Louie Louie で"parks"というイベントを始めた。
このイベント自体、結成当初から構想していて、今となって言える裏テーマは「お客さんが抱く創作というものへのハードルを取っ払い、何か始めたくなって欲しい」というものだった。
僕らバンドは何もステージで輝くだけのものではなく、フラットな目線で見れば皆と同じ、音楽を愛するものだという感覚で僕らは居たし、お客さんにもそう感じて欲しかった。

O.J.BもLouie Louieも閉店し、元町高架下は耐震工事の影響で徐々に危なっかしい空気から、今風のクリーンな場へと生まれ変わっていった。
その土地で商いを続けてきた人の怒りの声はいくつも聞いたが、僕は一概に誰が悪いとは言えない。
ただ「こない坂だらけで元々駐輪場あんのに、これ以上チャリ屋と駐輪場作ってどないすんねん」とは正直思った。

政治や既得権益は僕には難しくてわからないが、ただあの空間を失った哀しみに暮れてるだけでは何も変わらないと思う。
僕たちだけだろうと、常に面白い遊び場を探し続けるkidsで在り続けたい。

一行あけてのアーティスト写真も撮った
2階の小部屋のような場所


それでは皆さん、第三回でお会いしましょう。(小粋なジャズナンバーと共に)

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