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はきだこ 第十三回


昔住んでいた公団の前を歩いた。

こんなにミニチュアのような遊具だったろうか。

夢の中にいるみたいに不思議な気持ちだが、ぬるい風は確かに頬を撫ぜている。


好きだった子の家は綺麗に建て替わるらしい。

よく遊んだ友人は、今はもう連絡先すら知らない。

そこそこ離れているはずだが、海風は坂を登り僕の元まで届いてくれる。


色々な場所に住んだ。

色々な場所を故郷だと思い込んだ。

だがどの海も違う匂いがする。

ここにあるのは死にたくなるような満たされた匂い。


皆はどこに行ったのだろう。

僕だけが空を泳いでいる。


皆はどこに行ったのだろう。


僕一人を置いて。


そもそも僕はどこにいるんだろう。


あの子は何をしているだろうか。

そう思うこと自体が罪なんだろう。



空の端から端までツーと指でなぞれば、あの頃に入れるか。

はたまた夢から醒めるか。


何も必要ない僕が、今はただ必要だ。


「はきだこ」は作詞した楽曲にまつわるあれやこれやを綴ったショートショートです。

以降は有料記事になっていて、歌詞とラジオのような気の抜けた手記が読めます。
100円ポッキリに設定しているので購入していただけると、明日の僕がちょっと良いコンビニのおにぎりを食べることができます。

今時ガチャガチャですら100円は珍しいと思うので、たまには四角い袋に入ったおにぎりの封を切らせていただけると幸いです。


少年 by dat kids

宛もなく歩く道 この町が好きだった
君の家の近く 柔くぬるい風で
祈りの音響けば ダサい鞄に詰めて
君を愛してくれる 人を祝いたくなる

確かめたい言葉を頼って生きている
合言葉なんてないよ

僕らが笑うなら 砂の地をなぞって さあ
僕らが唄うなら 恥もなく踊ってよ


海風が届くまで 粉々の思い出を
忘れないよう遠く 一番奥にやって
君の横顔だとか 浅い呼吸の裏で
ここで終える最後も 悪くないと思える


知りたくない事実に隠れて生きている
合言葉なんてないよ

僕らが笑うなら 砂の地をなぞって さあ
僕らが唄うなら 恥もなく踊ってよ

僕らが笑うから
僕らが唄うから


はきだこ 第十三回

お久しぶりのはきだこ。

忘れていたわけでも、辞めたわけでもない。

ただ新曲について書きたかった。

あとラジオみたいなことを定期的にしたくなる。


満足の出来ない状況がdatkidsで続き、新たに別の形態でdatkidsを行うことにした。

これが正しいことなのかはわからないが、新曲を書き、何とか動こうとはしている。


この曲がkidsのアンセムになればいいなあ。



都会とも田舎とも呼べない中途半端な町に生まれ、変人として育ち、ちっぽけな僕には勿体無いくらい衝撃的な出逢いをし、そんな僕に相応しい呆気なく憐れな別れをした。

くだらない人生の総括に、遺書のような厳かなものは添えられない。

あっさりと、読む人には横目で見る程度の、薄っぺらなちり紙が似合う。


涙が滲むような言葉は、歯が浮き、嘘吐きの僕の言葉だと誰も信じようとしない。


まるで昨日のことのように、軽々しく、ここで過ごした二十数年間を語ろう。

そこで終えれば良かったのだ。


僕はいま、人生の蛇足を、語り切れなかった昨日を、生きている。

それだけで満足している。


死ぬにはいい日なんて死ぬまでこないって刃牙でも読んだ。

僕には明日を生きる希望なんてものは存在しないし、必要もない。


ただ、死ぬまで生きるだけ。


いつ死んだっていい。


それが明日だろうと明後日だろうと、相も変わらず昨日までを歌うだけだ


不定期にはなるけど、読んでくれている人がいる限り、はきだこは続けていくつもりだ。

薄々勘付いている人は多いと思うが、僕は根暗だ。

だからこそ寄り添うことのできる人がいることも知っている。

僕を悪い手本として、下には下がいると嘲って、皆に安心してほしい。


生きてるうちは、次作も楽しみにしていて欲しい。
君も、僕も。

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