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はきだこ 第三回

※センシティブな内容を含むので苦手な人は飛ばしてください。

無宗教というものは恐い。
「肉体は魂の器でしかない」というのも少し違う。
死を以て生物は世界との境界線を失くすものだと思う。
単細胞の死は膜が破け、徐々に崩壊していく。
ただ唄のように空中に溶け出し、不協和音のように混じり合う。

「一緒に電車に乗ろう」と意味不明な約束を交わしたこともずっと忘れずにここに残っている。


「はきだこ」は作詞した楽曲にまつわるあれやこれやを綴ったショートショートです。

以降は有料記事になっていて、歌詞とラジオのような気の抜けた手記が読めます。
100円ポッキリに設定しているので購入していただけると、明日の僕がちょっと良いコンビニのおにぎりを食べることができます。

今時ガチャガチャですら100円は珍しいと思うので、たまには四角い袋に入ったおにぎりの封を切らせていただけると幸いです。


Sue (She'd kill suddenly) by dat kids

春の陽射しに触れないまま
君は飛び降りて疲れちゃったよ
鉛の重さと赤子の夜泣き
ヤニに汚れた二人の唄へ

The waiting is over.
I delight in discord in this way.

活字の海 ひけらかす知識 阪急電鉄
デカダンな僕らの音楽 遠い国の戦争
何もかもがとにかく今は目障りでさ
ヤニに汚れた二人の唄へ

The waiting is over.
I delight in discord in this way.


はきだこ 第三回

僕は歌詞を覚えるのが苦手で、歌詞は基本的に短く端的にまとめようと努めている。
もちろんその分、より意味を凝縮しようと無駄を省いているわけだが。
そのせいもあって、今回のはきだこ本文に関しては短くなってしまった。
その代わり有料記事を長く書こうと思う。

冒頭にも注意書きしたがセンシティブな内容を含むので、せっかく有料記事を買ったのに苦手だったという人はドンマイ。嘘。ごめんね。


変わった友人がいた。
元々、友人のバンドでベースを弾いていて知り合い、そのバンドの活動が停止しても個人的に遊びに行く同い年の友人だった。

バンドが活動しなくなったので彼が独りにならないようにライブに呼ぶと、「マッチングアプリで知り合った女の子と出るわ!」と言い、結果一人で来て笑った。
そのライブではギターを少し弾いては「やっぱ辞めます」と言って、日記の朗読をし始めたり、また弾き語りを少ししたり、おかしな言動を繰り返していた。
僕にはそれが彼の魅力だったが、彼にとってどうだったかは今となってはわからない。
余談だが偽名を使って出演したくせに告知はずっと自分の漢字を間違えていたし、僕は本名も忘れた。
終演後僕から「死にそうやったから呼んでよかったわ」と言うと「絶対死なんよ!決めた!」と彼は言った。

その翌月、彼は飛び降り自殺をした。


共通の友人からの訃報に動揺は隠しきれなかった。

後日、彼の遺品であるCDやカセットテープやレコードを大量に受け取った。
買ったのかレンタルしっぱなしなのか万引きしたのかわからないものばかりだったが、「50円で手に入ったから今度会ったらあげるわ!」と言っていた村八分のCDは見当たらなかった。

良いやつだったと美談にするつもりはない。
なにせ僕との約束を破ったやつだ。
僕にだって希死念慮はある。
ただ僕はお前とそれを共有したかった。
別々の唄で同じ空気を吐き出したかった。

原題はSuicideだったが何となく彼に笑われる気がして、Sueという女性名にした。
この三人称視点は"rough boy"という曲の話へと続く。
けどそういう目線で"rough boy"の歌詞を読み解いていくと面白いかもね。
恐らく"rough boy"のはきだこは書かないと思うので、ファーストアルバムを買って歌詞を読んでくれたら嬉しい。

ライブに誘ったとき
意味不明な約束

第四回以降、dat kids以外の歌詞についても書いていこうと思う。

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