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リリとロロ 「アザンの森」 ⑦ ⑧



今回結構ヘヴィーで露骨な表現があるので注意




「遅えと思ったら、さっきのボウズ連れ込んで油売ってたのか!」

勢いよくドアを引っ張り、燈里の頭部を殴った。


「何だお前。このガキのことが好きなのか。母親に似てお前もサカってんな!」

「そういうんじゃ」

「そもそも誰だよ、この小便臭いガキは。」

「私も初めて会ったから」

「一目惚れってやつか!」

「だから…」


「ああ!ちょうどいいな!お前、好きな男の前でしゃくれよ!」


男は強引に助手席に乗り込み、ジーンズを下ろした。
降りようとする燈里の髪を掴み、ダッシュボードに何度も何度も打ちつけた。


「なあお前、わかってんの?」

流石に燈里も痛みと屈辱で目を赤くし、観念したように口を開けた。


下卑た嗤い声が男の口から漏れた時、彼女が必死に声を殺して泣いている空気が伝わってきた。



少なくとも彼女は男根を咥える行為を恥ずかしく思っていることが、その惨めな表情から伝わる。


年端も行かぬ少女に口淫を強いるなんてこの男、つくづく救いようのない外道だ。



「おっ、上手くなったじゃねえか。」

男は快感で燈里の髪を離し、座席を倒すレバーを引いた。

刹那、ずり上がる燈里の覚悟を決めた目がこちらに向いた。


「い゙ッッ!!!あ゙あ゙ぁッッ!!!!」

絶頂の声かと思った。


ただ決定的に違うのは彼女の口から溢れるのは精液ではなく、赤黒い血液だった。




僕はスパナを振り下ろした。

車内は狭く身体も小さいため、それは振り下ろすというより、突き刺すという表現が相応しく、両手にぐにゃりとした嫌な感覚が走った。

呻き声を上げる男は野良猫のように潰れた片目を押さえ、ドアを開けた燈里を車外へと蹴飛ばした。



「てめっ、ぜって、ころ」

言い終わる前に落ちていた消臭スプレーを吹きかけ、車から駆け降りた。

生殖機能と視力を同時に失った男は唸り声を上げながら必死に掴み掛かろうとするが、手負いのためか動きが鈍く間一髪避け切った。


燈里の手を引き走る。

とにかく、車が来にくいところへ。

坂を登り続けた。

どうなるかなんてわからない。

少なからずあいつは死んでない。

必ず追ってくるだろう。

金なんて持ってない。

着の身着のまま、血のルージュとネイルで走る少年少女。

人目に付く場所なんて行けるはずもないが、そうしたところで燈里があの親の元に帰るのであれば元の木阿弥だ。


森の方へ。

彼女を見遣ると「見るな」と言わんばかりに前だけを見ている。

それもそう、歳の近い異性にあんな姿を見せた恥辱をこの歳で感じたのだ。

これから一生彼女を蝕むのだろう。考えたくもない事実だ。



暫く走り続けて、漸く林間の廃墟のような場所に辿り着いた。

ふと昔、こんな風に貯水タンクで死体を弄んだ猟奇的事件があったことを思い出した。


もう後戻りはできない。


正木諧 「アザンの森」

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