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超短編|思い出の上にあるもの

 
 ねえ、おぼえてる?
 学生時代、屋上に続く階段の踊り場を、部室として使っていたじゃない。誰も来ない西側の階段だったし、天気の良い日はそのまま屋上に出たりしてさ。
 
 使われなくなった机がいくつも置いてあったから、それを並べ替えてパーテーションや棚の代わりにして。勉強したりボードゲームで遊んだり、突発的にありとあらゆる選手権や大会が開催されたり。
 わたしはそれで優勝しまくったおかげで自分の記憶力が良いってことを知ったし、きみは人狼ゲームで無双して頭の回転が速いひとだって分かった。
 先輩たちはあの西階段部室でふたりっきりになった隙に告白して、付き合うことになって、来年はついに結婚式だよ。
 屋上で日向ぼっこもしたし、こっそりプランターを持ち込んでミニトマトを育ててみたりもしたね。
 二年生の終わりに、騒ぎ過ぎて先生に注意されたけれど、「じゃあ部室をください」って言ったら、先生は渋い顔をして、結局「綺麗に、静かに、程々に使えよ」って、正式に西階段が部室になった。
 
 本当に、楽しかったよね。今も思い出す学生時代の記憶のほとんどは、西階段部室での出来事だよ。本当に、本当に、良い学生生活だった。
 
 
 
 あそこ今、荷物置き場で、屋上は封鎖されているんだって。
 わたしたちの思い出を知らない誰かが、思い出の上に荷物を置いて、思い出を封鎖したんだね。



(了)

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