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LIFE CREATE 入社100日

 LIFE CREATEに入社して7ヶ月が経ちました。withコロナの生活がしばらく続く見込みとなり、少し落ち着きつつある今のタイミングで過去のメモを辿りながら振り返りをしておきたいと思います。
 この未曾有の危機、状況が激変した業界に転職し、どのように経営チームの一員として意思決定し会社運営を進めたかを記録に残すことは、いま変革途上にあるLIFE CREATEにとっても有用と考え、記憶が少しずつ薄れていく前にnoteします。

入社前

(1) 北海道での緊急事態宣言
 LIFE CREATEは本社を札幌に置き、東京との2オフィス体制で運営しています。2020年の北海道は記録的な雪不足で、さっぽろ雪まつりの開催も危ぶまれていましたが、ちょうど雪まつりが閉幕した2月中旬から道内でコロナ感染者が急拡大、鈴木北海道知事は2月28日に北海道を対象とした緊急事態宣言を発しました。
 その週明けの3月1日入社日。札幌本社には既に何度か訪問していましたが、一抹の不安を抱えながら渦中にある新千歳空港に向かいました。LIFE CREATEの主な管理機能は札幌本社にあり、取引金融機関も主に札幌が取引店であることから、この後札幌との往復を度重ねることになります。

(2) フィットネス業界の状況
 LIFE CREATEが属するフィットネス業界は、スポーツジム等における感染者の利用や感染が連日報じられました。感染が拡大するにつれて、スポーツジムが「クラスター」の1つとして例示され、不特定多数の人の接触の恐れがある場所として利用を控えるよう呼びかけられました。
 このような状況で、日本フィットネス産業協会がいち早く3月3日に「フィットネス関連施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を公表したのは評価されるべき動きだったと思います。

 当初フィットネス関連施設は、社会生活を維持する上で必要な施設と位置づけるには難しく、休業を実施する施設と感染防止対策を講じて営業を継続する施設とに対策が分かれました。

初動

 このように日々刻々と変わる不確実性が高い状況において、経営チームはあらゆる方針をスピード感を持って意思決定し、対応を進めました。入社間もなく、会社や事業、メンバーといったあらゆることを不眠不休のフル回転で理解を進めながら、経営チームの一員として動きました。

(1) 社内に対する会社方針の共有
 LIFE CREATEは、感染予防対策や施設清掃・消毒強化、お客様対応を徹底し、スタジオの営業を継続しました。お客様がこういった状況下でも心身共に健やかにお過ごしいただくための最善の対応を考えての方針です。
 一方でスタジオには「なぜ店舗を休みにしないのか」「感染を広げるのか」といったお客様からのご批判や電話での問い合わせ、店舗スタッフも感染の心配や生活への不安を抱える一方で、約500名の社員の生活を支える経営とのバランス。
 そういった状況で、代表の前川や事業責任者からトップダウンで、全スタジオの社員に向けて会社方針をタイムリーに共有していきました。実態の数字を基に、なぜ営業を継続しているのか、店舗の運営方針や雇用に対する方針など。慣れないオンラインで発信し、少しでも不安を和らげ前向きに仕事に取り組んでもらいたいという思いでした。

(2) 店舗オペレーション
 報道が加熱していく中で不安を感じられるお客様の問い合わせが目に見えて増加し、対応窓口となるコロナ専用回線を開設。また、お客様が安心して休んでいただけるように月会費支払を一時的に停止する「特別休会」の受付を開始、お客様が自主的に再開できるような契約形態を設けました。
 このような形態変更は店舗オペレーションの変更を伴うことになります。経営で決めた方針を、本部から店舗に展開するべく翻訳し、店舗スタッフが行動できるように分かりやすく、かつタイムリーに対応する。翻訳においては誰でも理解できるルールの明確化・マニュアル化・想定されるQAの作成・スタッフへの徹底事項など。これに加えて、会費を管理する部門も例外的なオペレーションの対応が求められ、まさにチームの連携が肝でした。

(3) ワーストケースの事業シミュレーション
 僕が初動で取り組んだ役割は、ワーストケースを想定した事業シミュレーションでした。上記方針や契約形態を変更を社内で意思決定するための基礎であり、金融機関とのコミュニケーションの土台になるものです。
 3月初旬に組んだ初期シミュレーションの前提として、コロナ影響での特別休会の増加と新規入会の減少が半年程度継続することを想定し、ベースとなるトップラインを設定。手元資金の確保を最優先事項とする方針の下、新規出店や採用等の投資計画は一旦白紙。前期は26店舗の出店・84名の新卒採用を実行しましたが、スピード加速から耐え忍ぶ方針への急転換。コストも人件費を除いた全費目ゼロベースで見直し。この損益構造をベースに資金計画を策定し、キャッシュをシミュレーション。
 このモデリングは、その後の状況変化により何度もアップデートを重ねることになります。

(4) 手元資金の確保
 シミュレーションを策定しながら、金融機関や株主とのコミュニケーションも即行動。金融機関をまわり、入社挨拶も兼ねてワーストケースの説明、それに対する自助努力方針と調達シナリオを示しながら今後のスタンスを確認していきます。
 当社のメインバンクは、道内トップの地方銀行である北洋銀行ですが、このような緊急時においては、情報や信頼を積み重ねて地盤企業をしっかり支援していく地方銀行がメインであったことはポジティブでした。また、これまでの東日本大震災やリーマンショックといった緊急事態時での経験から、政府系金融機関の存在感が大きくなることは予想できたので、事前にコミュニケーション。株主であるアカツキさんとは日常からチャットでやり取りしており、タイムリーに情報開示していきました。

緊急事態宣言

 このように緊急時で極めて重要な初動対応をタイムリーに進めましたが、この後3月25日の小池東京都知事の外出自粛要請の会見から、首都圏がロックダウンになり羽田から移動することができなくなる(=札幌に行けなくなる?ヤバい)等の噂も錯綜しながら、事態はさらに深刻化し、追加的な対応を迫られることになります。ちなみに、札幌の飲食店も休業するお店が増え始めて、出張族にとっては心身ともに厳しい日々でした。

(1) 店舗運営方針
 3月下旬から、いつ緊急事態宣言が公表されてもおかしくない状況になりました。会社方針として、休業要請には適切に従う心づもりはしていました。4月8日に首都圏と大阪・兵庫・福岡を対象とした緊急事態宣言が発令、当社のスタジオは地方に分散出店していたことから一部店舗に限られましたが、その後対象が全国となったことで「全店休業」。休業期間の会費は、お客様に日割返金(正確には、前受で預かった会費を先の会費に充当)するため、1ヶ月分近くの売上が蒸発し、文字通り「売上ゼロ」です。以前ユニクロで仕事をしていた時に柳井社長は「店舗にお客様が来るのを当たり前と思うな」とおっしゃってましたが、その現実を目の当たりにしました。

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(2) 事業シミュレーションのアップデート
 3月のロックダウン情報の頃から、事業シミュレーションはさらにストレスをかけて2ヶ月全店休業が継続することを想定して、その後の会員様数も一気に戻ることはなく、徐々に回復していくというシナリオにしました。
 宣言が出た後、何をもって宣言を緩和・解除するかが当初不明確であったことから休業期間がいつまで続くのか終わりが見えない、即ちリスクを定量化できないという点が頭を悩ませ続けました。

(3) キャッシュの確保

 全店休業という未曾有の状況のなかでも、固定費がキャッシュアウトしていく状況でしたが、メインバンクや株主とコミュニケーションを取りつつ
 ・日本政策金融公庫・商工組合中央金庫からの融資
 ・セーフティネット4号5号・危機関連対応保証
 ・雇用調整助成金
 ・都道府県からの休業要請協力金、持続化給付金、家賃支援給付金
など、政府からの手厚いメニューが矢継ぎ早に用意されたことは、大きな助けとなりました(手続や様式が都道府県によって異なる煩雑さはどうにかしてほしかった)。また、コスト構成の大きな家賃について、一部オーナーが家賃減免を応諾いただいたことには本当に感謝しております。
 こういった一番厳しい状況において、人や会社の本性が出ると思っており、そのような中でご支援いただいたパートナーのみなさまの恩はありがたいと思っており、今後事業を通じて返していきたいと思っています。

営業再開

 6月2日、全店再開の日。札幌本社のすぐ隣に「loIve札幌駅前店」がありますが、スタジオの中から外まで会員様の長い列。ソーシャル・ディスタンスを確保しながら、受付に並んでいただいたため、お店の中では列が収まらない状況でした。レッスンを待ち望まれていたその姿を見て、涙が止まりませんでした。お客様が目の前で喜んでいるのを肌で感じられるのは、サービス業に従事する一員としての何ものにも代え難い嬉しさで、商売の原点です。

(1) フィットネス業界の現実
 一方で、フィットネス業界の厳しい現実が浮き彫りになりました(BEHIND THE FITNESS社資料より転用)。総合スポーツクラブからパーソナルまで大きな痛手を被り、全社赤字となりました。フィットネス業界の損益構造は、人件費と賃借料・水道光熱費、広告宣伝が主たる構成で、広告宣伝はコントロールできますが、それ以外は固定的費用の割合が大きいことからコストコントロールの打ち手は限られ、減収がそのまま減益となります。

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(2) フィットネス業界特有の事情
 フィットネス業界が飲食店や宿泊業と異なる点として、料金の収授の仕方があります。フィットネス業界の収入は、主に月額会費を定額でいただくサブスクリプションモデルです。ですので、毎月会員資格を更新し継続的に受講いただくことが重要になります。
 コロナ禍の先行きが不透明、レッスンスケジュールが読みにくい状況で、定額受講料を支払うか、休会を継続するか、一旦解約するかで会員様の心は揺れ動くことになります。このような状況で、フィットネスの各スタジオと会員様とのエンゲージメント、つまりスタジオで過ごす場と時間、体験がお客様にとって生活に欠かせないものであるか、お客様に価値を提供できているかの存在意義が試されている。第2四半期のフィットネス各社の業績が間もなく開示されますが、その差が如実に現れるのではないかと思っています。

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