正木覚

ガーデンデザイナー・環境デザイナー。1952年 福岡県生まれ。1984年 エービーデザ…

正木覚

ガーデンデザイナー・環境デザイナー。1952年 福岡県生まれ。1984年 エービーデザイン(株)設立。個人、集合住宅を始め、住宅開発、商業空間の"心地よさ"を追求した庭をデザイン。「趣味の園芸」に出演、JAG(ジャパンガーデンデザイナーズ協会)名誉会長。

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  • パン屋が出来るまで。

    パン屋のガーデンデザインについて書いています

  • ガーデンデザインのこと

最近の記事

匂いの記憶

皆さんは、生まれ育った街に降り立った瞬間の、あの何だか懐かしい心持ちを感じたことがあるでしょうか。 目に見える懐かしい風景はもちろんですが、街全体から漂う雰囲気から懐かしい記憶が呼び覚まされたりもします。 たとえ建物が建て替えられていても、その土地の独特の雰囲気はどこかに残っているものですが、この雰囲気はどこから来ているのでしょう。 たまに海外に出掛けてみると、その国の空港に降り立った瞬間に、特有の匂いを感じます。それはたとえばチーズの匂いであったり、タバコや酒の匂いだ

    • 天使(妖精、妖怪)の棲む家

      古い民家には、ある種の想像力を掻き立てるものがあります。私の子供の頃は深夜になると天井裏でミシミシと物音がして、生き物の気配があるようでゾクッとしたものです。台風などの風雨の強い日は建物全体が生き物の様に揺すられ、一緒に耐えている様に感じました。天井板の木目模様を見ると、昔話の想像の世界が広がったものです。 また、工作用の木の端切れを探しに納屋の奥に入った時には闇の先に別の世界があるのではないかと感じたものです。土間に染み込んだオイルと鉄サビの匂いが立ち上り

      • 武蔵野のパン屋

        東京郊外の農家の敷地内に立つ古い建物を改修したパン屋の庭を作る事になりました。店のデザインを手がけた家具デザイナーの山上さんと一緒に考えたコンセプトイメージは宮崎駿のアニメ「となりのトトロ」に出て来そうな昭和の雰囲気のある店でした。気取らず飽きのこないパン屋さんをやりたいと言う店主の希望を考えるうちに馴染み深い景色として思い至ったのが武蔵野郊外の風景でした。 小さな洋館(小屋)の前庭には柿の木、梅の木、キンカン、アオキ、アジサイなどの馴染み深い植木が植えられています。植え込

        • 植物が緑色をしているワケ

          植物の殆どが緑色をしているのはどうしてでしょう? 植物が太陽の光エネルギーを使って二酸化炭素と水から栄養素をつくっていることはよく知られていますが、その時、主に赤外線周辺と紫外線周辺の光エネルギーを使って光合成をし、緑色付近の光エネルギーは反射していると言われています。  その結果、植物は緑色に見えるのですが、これでは少々効率が悪いのではないでしょうか。太陽の光エネルギー全てを吸収する方が効率は良い筈です。  そうしない理由を動物の方から考えてみるのはどうでしょう。 全て

        匂いの記憶

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        • パン屋が出来るまで。
          2本
        • ガーデンデザインのこと
          5本

        記事

          夏目漱石「三四郎」 庭づくりへのオマージュ

          今回の庭づくりの現場は東京の下町「谷中」、夏目漱石の小説「三四郎」に描かれている唐辛子栽培の農家だったと言われているお宅でした。 主人公「三四郎」のモデルと言われている小宮豊隆は同郷の学校の大先輩であり、しかも小説の中で、三四郎の出身地が京都郡真崎村となっています。私の出身も同じ福岡県京都郡で名前が「まさき」であることから以前から何か関係があるのではないかと思い、縁を感じていました。 そんなことから、改めて小説を読み返してイメージを膨らませて庭づくりを始めることにしました。

          夏目漱石「三四郎」 庭づくりへのオマージュ

          「地表に近い庭」の居心地のよさ

          日比谷、丸の内界隈には帝国ホテルとペニンシュラホテルと言う高級ホテルが近接してありますが、そのラウンジの雰囲気の違いに驚かされることがありました。片方は玄関のフロアレベルより数段低くなっており、もう片方は同じフロアレベルになっています。 たったこれだけの違いで落ち着き度合いが随分と違います。 ラウンジがフロアレベルより低い方はゆったりと包まれた感じがして、片や同じレベルにある方はザワザワとして落ち着きがありません。 この違いはどこから来るのでしょうか?  以前、サンクン

          「地表に近い庭」の居心地のよさ

          本当は北側の庭が気持ちが良い

          こんにちは。始めて投稿します。 ガーデンデザイナー・環境デザイナーの正木覚です。 個人邸、集合住宅、施設などの庭づくり、メディア出演(趣味の園芸他)などをしています。 長年庭づくりをやってきた経験から、ガーデンデザインに関する情報を定期的に配信していこうと思います。 さて、記念すべき!第一回目は庭の方位について投稿したいと思います。 一般に住宅の北側の庭は薄暗く、ジメジメしたものと思われがちですが、実は昔から贅沢な庭を作る事が出来る場所として知られています。 夏は涼し

          本当は北側の庭が気持ちが良い