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匂いの記憶

皆さんは、生まれ育った街に降り立った瞬間の、あの何だか懐かしい心持ちを感じたことがあるでしょうか。

目に見える懐かしい風景はもちろんですが、街全体から漂う雰囲気から懐かしい記憶が呼び覚まされたりもします。

たとえ建物が建て替えられていても、その土地の独特の雰囲気はどこかに残っているものですが、この雰囲気はどこから来ているのでしょう。

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たまに海外に出掛けてみると、その国の空港に降り立った瞬間に、特有の匂いを感じます。それはたとえばチーズの匂いであったり、タバコや酒の匂いだったりと様々です。

そうして、日本の空港に戻って感じるのが醤油の匂いです。醤油は大豆から発酵させて出来たものですから、匂いの元は麹カビなのです。

私の場合、長く離れたふるさとの九州に帰った時に、同じ醤油でも少し違う匂いを感じます。匂いが違うのは、実は地方ごとに麹カビの種類が違うからではないでしょうか。

身近にある匂いは慣れてしまうと感じなくなるものですが、実はその場所の懐かしさや心地よさは、匂いによるところが大きいのです。

そして、少しずつ違う匂いが混ざり合い「匂いのブレンド」となって、各家庭の雰囲気も出来上がっているのではないかと思うのです。

デザイナーが「懐かしさや心地良さ」をデザインする場合は、要素の一つとして匂いをどのように取り込むかも大きなポイントとなるのです。

正木 覚 http://ab-design.jp


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