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自分を待つ

ある小説の一節。年上の女性に自分の彼氏を奪われた高校生の女の子。
とてもじゃないけど、その年上の女性に敵わないと悟った彼女だが、でも彼氏のことを諦めた訳じゃないという。
友人から「じゃあ、彼が心変わりするのを待つの?」と聞かれて、女の子はこう答える。

「彼を待つわけじゃないわ。自分のことを、待つのよ」

山田詠美さんの、『放課後の音符(キーノート)』の中に収録されている『Red Zone』という話に出てくるこの台詞がとても好きだ。

この話の中では、恋の観点で使われているけれど、恋に限らず「自分のことを待つ」って良い表現だなと思った。

自分の知らない自分がいたり。まだ知らない気分や感情がこの先生きていればあるかも知れない。

今じゃないし、時間がかかる。でもいつかくる自分の変化を待っている。

味覚がゆっくり変わっていくように、自分の心の触覚も少しずつ変わっていくと良い。

新しい世界とか今までと違う世界とかって、自分の心の触覚が変化して、訪れるのかも知れない。

淡々と平日の業務に汗をかく自分にとって、とても広く、自由な言葉のような気がして、「自分を待つ」って言葉を大切に取っておこうと思った。

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