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【令和3年度版】地域おこし協力隊の新制度

こんにちは、地域おこし協力隊OBで現在地方議員の中村です。地域おこし協力隊の制度は日進月歩で猫の目のように、年度の途中でも変更があります。

もしこの文章を読んでいる方が、協力隊の報償費は活動費込み400万円が上限だ、任期後の隊員の定住支援には国補助はない、任期後の起業補助金の申請期間は1年間のみ、海外帰国者は住民票がないため協力隊として直接雇用できない、と思っていたら、これらはすべて間違いです

今回は令和3年度の主な変更点を踏まえて、現在の協力隊制度をおさらいしていきます。

1.報償費等の増額

協力隊の給料は「報償費等」と呼ばれます。これは自治体から委嘱された場合も、会計年度任用職員として任命された場合でも支給される「お給料」のことです。令和2年度から地域おこし協力隊の報酬は増額され、令和3年度には470万円となっています。(詳しくは、note記事の「地域おこし協力隊の報酬は引き上げられています」をご覧ください)

2.空き家修繕費の交付税措置

3年間の任期を終えて任期後に定住する隊員については、令和3年度から国の特別交付税で空き家の改修費の50%補助が受けられるようになりました。これまでは空き家の修繕には「活動費から支出しても良い」という規定しかありませんでしたが、任期後の定住サポートの一つとして、国補助がされることとなりました。ただし、金額の上限などについて詳しい情報はないため、詳細が分かり次第追記したいと思います。

3.起業補助金の申請は2年間(令和3年のみの特例措置)

コロナ禍で起業準備が滞ることが予想されるため、令和3年度に関しては任期後の起業補助金(上限100万円)については、令和元年度(2019年度)に卒業した隊員の申請期間である令和2年度(2020年度)が、令和3年度(2021年度)までに延長されています。

つまり2019年3月に卒業した隊員でも、2022年の3月までは起業補助金を申請できることになります。今からでも間に合いますので、該当するOB・OG隊員はぜひ所属していた行政と相談するようにしてください。この特例は今のところ令和3年度限定の措置とされています。

4.海外在留者の協力隊採用

地域おこし協力隊の隊員には外国人や帰国子女も増えて来ました。しかしこれまでの制度設計では、住民基本台帳に登録のない人を直接協力隊として雇うことは出来ませんでした。協力隊は三大都市圏からの移住を前提とする制度設計のため、国内の都市圏に住民票のある人しか雇用対象に出来なかったのです。

しかし外国籍の方や帰国子女は地域のインバウンド戦略には重要な担い手となります。コロナ禍でこうしたビジネスチャンスも停滞していますが、今後、ポストコロナの世界では必ずマルチリンガルの人材は地方でも必要とされます。

こうしたことを踏まえ、国内に住民票がなくても、令和3年度から直接協力隊となることが出来るようになりました。これによって、協力隊の採用が決まったことで帰国・来日することが可能になります。海外居住者にとっては就職先の一つとして協力隊を受けてみる、ということが出来るようになりました。

5.まとめ

報償費等の増額は公務員の待遇の改善としての側面があります。ただし全国的に一律で470万円(令和4年度は480万円)となるため、地域によっては「高すぎる」という批判を受けることがあると思います。しかし増額されるのは活動費を含んだ金額です。隊員一人ひとりが、地域の福祉や町おこしに貢献するための予算も増額されているということです。単純に一人470万円の税金が年間かかっている、という一面的な捉え方がされないよう、そのうちの半分は公共の福祉に貢献するための予算です、と理解を求める姿勢が大切であると思います。

空き家改修の修繕費の交付税措置(50%国補助)については、店舗兼住宅など職住一体の空き家改修という使い方もあると思います。制度を上手に使うことで、定住後の働きやすさ住みやすさに繋げていけると思います。

起業支援金の100万円については、あまりに年度末ギリギリだと申請が通らない、ということがあると思います。年度途中に自治体の会計を通る新しい予算を組むことを補正予算と言います。補正予算を通すためには地方議会の議決を必要とします。通常、地方議会は3月、6月、9月、12月の年4回開かれます。今であれば12月議会に間に合うように担当職員の方に話を通しておきましょう。

海外在留者採用の緩和措置については、おそらくこれまでも各自治体から要件緩和の要望が上がっていたのではないかと思います。協力隊として採用したい海外人材がいたとしても、先に居住を要件に含めるとビザの取得が困難になるからです。普通、就労ビザは日本国内の就職先から内定を得た後でないと交付されません。

以上、令和3年度の新情報をまとめました。

私が地域おこし協力隊を務めた平成27〜30年の頃は、協力隊の制度は未整備なところも多く、活動費の使いみち(制約)でも隣接する自治体で大きく異なる、ということが当たり前にありました。そうした解釈は担当者のさじ加減によって大きく分かれるため、国が率先して制度の詳細を改める、というのは極めて重要なことです。裏を返せば、協力隊の情報は常にアップグレードされているため、最新の情報を見逃さないよう総務省のHPは逐次チェックするよう市町の担当者にはおすすめします。

参考資料
・【PDFファイル】地方財政審議会付議(説明)案件 令和 3 年 2 月 2 日(火)(案件名)地域自立応援施策の拡充について

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