僕が新生児科医だったころのこと 1

僕が小児科医であることは前回の記事で書かせて頂いた。

小児科と一言で言っても、実はかなり奥が深く中で細分化されている。

心疾患の診療を行う小児循環器、ホルモン関連の診療を行う小児内分泌、てんかんなどの神経疾患を扱う小児神経、ネフローゼ症候群や腎不全などを診療する小児腎疾患科・・・、などなど本当に数えきれないくらい細分化されている。

各地方にあるようなこども病院なんかは、いわゆる小児の総合病院なので、「小児循環器科」「小児神経科」「小児整形外科」「小児泌尿器科」なんて具合にさながら小児の大学病院みたいだ。

そういう小児の分野の中の一つに新生児科がある。

新生児とは、定義は生後0日から28日までの期間の児のことを言う。この期間で一番状態が悪化しやすいのはやはり生まれた直後。だから、新生児科がみる患者の多くは生まれた瞬間から患者に関わる。もしかすると、母親より早く子供に対面することの方が多いのかもしれない。

例えば、あなたが病気で入院して、その結果説明の時に

「おめでとうございます。あなたは癌です。」

なんて言われた日にはきっとその主治医に憤慨し、二度とその病院は受診しないだろう(果たしてそれだけですむだろうか?)。それくらい、病院での病状説明において大半を占めているのはbad newsなのである。

ただし、新生児科は違う。必ず最初の病状説明(多くの場合、母は出産直後で来れず、父や祖父母への説明になることが多い)は、

「おめでとうございます。かわいい男の子(あるいは女の子)ですよ!」

なのだ。これは、私が病院の見学に来た時に、部長のS先生に教えられたことだった。

「病気」が生まれてきたわけではない。生まれてきた子が病気だったんだ。病気が先じゃなくて、その子そのものの存在が先なんだ。


そんなわけで、僕の小児科医としての第一歩は新生児科でのスタートだった。

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