僕は小児科医

お仕事は?と聞かれると、必ず僕はこう答える。

「小児科医です。」

返ってくる返事はだいたい同じだ。

「子供が好きなんですね。」

「今、小児科の先生って少ないんですよね。偉いですね。」

うーん、こども・・、好きでもないし嫌いでもない。

小児科医って少ないのか・・・でも、小児科学会なんてかなり医者が集まるし、そもそも他との比較ができないからよく分からない・・・。

まあ、でもだいたいこんな感じで変わった人間扱いされるか、マイナー科であることを必然的に自覚させられるかだ。(注:医学の世界では、一般的に内科・外科がメジャー科、それ以外がマイナー科と呼ばれることが多い。)

そもそも医者を志す人間がみんな聖人君主であるはずがない。お金を儲けたいという人間もいれば、自分のキャリアを磨いて出世したいという上昇志向の塊のような人間、家が開業医だから選択の余地なく選ばざるを得なかった人間、みなモチベーションは人それぞれだ。それを否定するつもりはないしその資格も当然僕にはない。

でも、自分が果たしてそういうモチベーションで働いているかというとそうとも言えない。お金を重視するならもっと割りのいい科はあるはずだし、出世を目指すならもっと王道なメジャー科だろう。ドラマになるのもやっぱり外科や内科、救急ばかりだし、いわゆる医者のイメージってやっぱりそういうものだろう。僕だって医者になるまではそうだった。

どうして僕は小児科を選んだんだろう。

でも、続けている理由は分かる。目の前にいる患者が、1年後、2年後には見違えるように歩いたり言葉をしゃべったり、学校に入学したり、日々の移ろいを感じながら、自分の救うことができた命が新たに日々を育んでいくのが他の何事にも代えがたい喜びだからだ。

だから、きっと僕は小児科医を続け、そうである自分を誇れるのだろう。

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