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住む場所は自分で決める

夕焼けを見に、車で近くの山に上がった。

頂上に上がるまでの途中に、ちょうど良さそうな場所があったので、車を止めて、近くのベンチに腰掛けた。

ふと気づいたら、つがいのワライカワセミが近くの木に止まっていた。
こんな近くで見ることは中々ないから、まじまじと見つめながら、

鳥ってあまり、見つめたらいけないんだっけ、
と、のんびり考えた。

この小さな山は、街の中心地からすぐなのに、とても静かだ。

緑と灰色を混ぜたような色の葉っぱ。
夕日は、橙色と桃色を混ぜたような色あいで、全体的に甘い感じの自然が広がっていた。

豊かな場所だな、と、あらためて思った。


今、住んでいるところは好きだろうか?

私は、大都会に生まれ、そこで育ってきた。
でも、物心ついたときから、ずっと、ここではないどこかに住みたいと思っていたんだ。
海のある、川のある、山のある、どこか。

それでも、どこかに移ることなく居続けて、いろいろと調整を図ってきた。
ある意味、長い間、静かに苦しんでいたのかも。

週末は、電車で遠出をして海を見に行った。
自然あふれる土地の暮らしを感じるモノを集め、本を読み、そんなような洋服を買った。

感性を満足させるために、たくさんのことをした。
お金もたくさん使ったし、
たくさんの知識も得たし、
たくさんの仲間もできた。

なんだかんだ、都会は美しい。
自然を越える「自然」をめざす、技や芸術、信仰や哲学が集まる、人間の場所だ。
その人間の健気さや切なさが、都会の美しさなのかもしれない。

そうやって、「ここではないどこか」を忘れて、
いつしか、住む場所を愛でることができるようになっていた。


でも今は、その生まれ育った場所ではなくて、自然に囲まれた小さな都市に住んでいる。

半分は都会、半分は大自然みたいな場所だ。
ここに住んで二年くらい経つかな。

昨日、美しい夕焼けを見ながら、ふと気づいたんだ。

以前のように、「ここではないどこか」に行きたいとは思わないし、あまりたくさんのお金を使わなくなったような気がする。
そして、一人で過ごす時間が増えた。

なにかを探さない。
これが、住みたい場所に住んでる、という感じなんだろうか。

「いたい場所」と、「いる必要がある場所」

以前の自分も含めて、だいたいの人は、その二つが一致していなくて、折り合いをつけて暮らしている。すごく当たり前のことだ。

でも、今こうして、生まれて初めて、まあまあ気に入った場所に住めて、ようやく分かったんだ。

もし、ただいるだけで心が満たされる場所があるなら、
本当に住んでみたい場所があるなら、

勇気を出して、行ってみるのがいいと思う。

本当にそう思う。

5月2日 晴れ