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70点のパフォーマンスでOKなマネジメント術(ソウ・エクスペリエンス西村琢さん②)

前回は、西村さんが「コト消費ビジネスに目を付けた理由」というお話をお伝えしましたが、今回は「70点のパフォーマンスでOKなマネジメント術」というお話をお伝えしたいと思います。

コト消費のビジネスを軌道に乗せてきたビジプロ、ソウ・エクスペリエンスの西村琢さんのお話の2回目です。

西村さんの会社は、10年前から子連れ出勤OKなどワークライフバランスを意識した働き方でも世の中の先を行っています。

今回は、西村さんのどんな考え方がそんな働き方の会社につながったのかを聞きました。

この記事はFMラジオ、InterFMで毎週日曜夜8時半からお送りしている番組ビジプロで放送された内容と、未公開部分を併せて記事化しています。ビジプロは、サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさいなどの書籍や、個人M&A塾サラリーマンが会社を買うサロンで知られる事業投資家の三戸政和が、さまざまな分野の先駆者をゲストに招いて話を聞き、起業や個人M&Aなどで、新たな一歩を踏み出そうとしているサラリーマンを後押しする番組です。番組は三戸さんとの対談ですが、記事はゲストのひとり語り風に再構成しています。
音声アプリVoicyでは、ノーカット版「ビジプロ」を聴けますので、こちらもお楽しみください。

ワークライフバランスで先を行く秘訣

僕たちの会社は、ワークライフバランスや働き方改革という言葉が出てくるずっと以前から、ワークライフバランス的な働き方ができるようになっています。たとえば、うちでは10年くらい前から子連れ出勤が可能です。

子どもがいれば、子連れ出勤ができないのなら仕事を休まざるを得ないときがあります。私自身、子どもが生まれたばかりのときはありました。でもうちでは子どもを連れてきてもいいとみんなが理解してくれて、子連れ出勤が普通になりました。

いまはコロナで在宅勤務が増えていて、ズーム画面に子どもが登場したりしていますが、うちではオフィスでも子どもがいるのが当たり前なので、在宅勤務で子どもがいても、普段と変わりありません。

子どもが仕事の邪魔にならないかというと、もちろん邪魔になることはありますし、子どもがいることで、親である社員の仕事のパフォーマンスは70%ぐらいになってしまうこともあります。しかし、僕たちは仕事場に子どもがいることを認めていて、そのために仕事のパフォーマンスが70%になることも認めています。

もし、それを認めないのなら、子どもを持つ親は休職したり、退職したりすることになります。そうなると、会社はまた新しい人を雇ってトレーニングしなければなりません。それには多大なコストが掛かりますし、その人がいなくなれば、その人の持つナレッジ(個人が組織の中で持っている知識や経験、ノウハウやスキルなど)も失われてしまいます。

ですから70%のパフォーマンスがしばらく続くとしても、その人が働き続けてくれて、ナレッジも維持されるなら、長い目で見れば、つじつまが合うどころか、むしろプラスだと思うのです。実際その考えでこの10年やってきて、うまくワークしていますし、みんなも理解してくれています。

慣れることが大事

もちろん、この10年の間には議論もありました。子連れ出勤をするのはお母さんが多いので、子連れ出勤可といっても、結局、母親に負担を強いているだけじゃないかという意見もありました。

社内においても、小さな子どもがいることで、はさみやボールペンの置き場所など、子どもに危険をもたらさないよう配慮するのが大変だという意見もありました。でもそういう問題も、個別に対処することで何とかなってきました。

結局、子どもも親も周りの人も、慣れるんです。親としては子連れで出勤して働くこと、子どもとしては会社に行って過ごすこと、周りの社員としては子どもが会社にいること。そういう日々が1か月も続けば、非日常が日常になって、慣れてしまえば、慣れがいろんな問題を解決してくれるのです。

副業OK、働く時間も自由

うちの会社では当然、副業もOKなのですが、厳密にいうとそれは、Noになったことがないからです。ビジネスの立ち上げ当初は、自分たちの給料すら出ず、副業せざるを得ない状態でした。それがいまでも続いているのです。副業が本業に差し支えるケースもとくに見当たりませんでした。

僕たちの会社では、フルタイムで働く人、週に3日だけ働く人、午前中だけ働く人などが混在していて、それぞれに合った働き方ができます。ゆるい働き方、わがままな働き方と言われるかもしれませんが、そんな働き方を認めた方がいいと僕は思っています。

それぞれが自分のできる範囲で、100点を目指してくれればいいのです。それぞれがやるべきことをやっているかは、僕がちゃんと見ているつもりです。

僕たちの会社は、社員が10人ぐらいの頃からこんな形でやってきたので、入社する社員にもこんな働き方を前提に入ってもらっています。最近は働き方改革、ワークライフバランスなどが叫ばれ、さまざまな会社でそんな働き方を導入しようと苦労しているようです。

新しいことをあとから加えるには、多大なエネルギーやコストが必要ですが、幸い僕たちは最初からこんな働き方をしてきたので、良かったなと思っています。

コロナ後の世界

現在のコロナ禍では、私も社員も出社と在宅が半々になっています。コロナの感染状況は行ったり来たりするだろうと予想していたので、東京の感染者がレベル4になったら在宅ベース、レベル3以下になったらオフィスベースにしようと結構早い段階で決めていました。

あくまでも原則ですが、いまも一応それに基づいてやっています。

出社と在宅、半々の生活も、僕も社員にも最初は迷いがありましたが、いまはだいぶ慣れてきました。リモートになると雑談がなくなったり、社員の顔色がよく見えなかったり、リアルなコミュニケーションが乏しいことでの支障は少なからずあると思うので、出社したときにはしっかり話をするようにしています。オンラインでも社員と1対1で話す機会を増やしています。

コロナ後の世界は、それぞれの会社が、好きなような形でやるようになるでしょう。僕自身は、オフィスでみんなと交流しながら仕事をしたいという思いが強いです。

世間的にもオフィスの重要性はそれほど薄れないのではないでしょうか。コロナ禍の収束が見えてくれば、うちの会社では、みんながオフィスに集まって交流を図る日を、週に2回ぐらいは設けようと思っています。

とはいえ、在宅にもベネフィットが多いので、リアルとオンライン、どちらがいい、悪いというより、両方が併存する形になると思います。

たとえば、僕らの取締役会はギフティの面々と一緒にやるようになりましたが、双方忙しいので、基本的にはオンラインでやっています。でもリアルにはリアルなりの良さがあるので、ときどきはリアルでやります。

そういう意味では、やり方が増えたといえるでしょう。オンラインで完結するものはたくさんありますから、それぞれがそれぞれで判断して、両方うまくミックスしていくことになる。当たり前の答えだと思いますが、そうなるんじゃないかなと思っています。

70%でも利益を出せる

いま、僕は神奈川県の逗子に住んでいて、通勤に1時間ほど掛けています。そんな通勤時間、もったいないという人は多いでしょう。とくに、生き馬の目を抜くベンチャー界ではそう言う人が多いと思います。

働く時間は9時くらいから17時か18時くらいまでが通常です。仕事以外の時間は、海が近いので海に行ったり、プールで泳いだり、家族と過ごしたりしています。

ベンチャー起業家の中では、家族と過ごす時間が多い方でしょう。ただ、僕自身、家族と仕事でどちらが上みたいな優劣はありません。家族も大事だし、仕事もついてきてくれる社員も大事です。

僕は、仕事に対して、とにかく100%頑張ろう、頑張れば成果が出る、などとは考えていません。仕事にどれだけ自分を傾けることができるかは、時と場合によって、どうしても波が出るものです。それは創業者だから、社長だからといっても同じで、仕事は常に100%、というわけにはいきません。

やはり、人にはある程度の余裕が必要なんです。余裕がないと、自分が何のために働いているのか、わからなくなりますからね。だから、僕は自分がゆっくりできる時間を欠かさないようにしています。

いま自分が根をつめて頑張ることで、次の世代が余裕を享受してくれるということもあるかもしれませんが、僕は、僕たち自身がいま、その余裕を享受した方がいいというスタンスです。逗子からの1時間の通勤も、満員電車ではありませんし、本を読んだりしてゆっくりできる、結構いい時間なんです。

子連れ出勤でパフォーマンスが70%になっても、中長期的にみたらプラスだと考えるように、自分の持ち場で100%を目指しながらも、ときには70%になってもOKというのがうちの会社の基本的な考え方です。パフォーマンスが70%になっても利益が出せる。そんな会社が理想的だと思っています。

独立したければ宣言をしよう

独立に興味がある人、自分でビジネスをしてみたい人には、「宣言をしよう」と伝えたいです。「自分は独立するつもりだ」「僕はこれが好きだから、これでビジネスをやろうと思っている」などと、対外的に宣言をするということです。

宣言をすると、周囲から「この人はこういう人だ」というレッテルを貼ってもらえます。そうなると関連する情報が集まりやすくなるでしょう。

レッテルは自分で貼ってもいいですが、できる限りユニークなレッテル、ほかの人がすぐに覚えてしまうレッテルがいいと思います。宣言するのは勇気が必要ですし、恥ずかしい思いをすることもあるかもしれませんが、怖がらずにどんどん宣言することが大事です。

「どんなことをしたいかわからないけど独立したい」という人も、「独立したい」と宣言をしましょう。そんな宣言をすれば、アイデアにつながる対話の機会が得られるからです。

「独立したいんだけどネタがないんだ、ちょっとネタ探しに付き合ってくれ」と言えば、仲のいい友達や親戚などが、相談に乗ってくれるでしょう。何なら、僕自身が相談に乗ってあげてもいいです。

然るべき人と話せば、何らかのアイデアが絶対に出てくるはずです。でももし、そんな対話をしても、何もアイデアが出てこなかったとしたら、その人は可能性が低いと思うので、独立ではない道を歩む方がいいでしょう。


2回にわたってお伝えしてきたソウ・エクスペリエンス西村さんのお話ですが、次回は、転職サイトのアフィリエイターで「転職と副業のかけ算」がベストセラーになったmoto株式会社代表取締役、motoさんこと、戸塚俊介さんがゲストにお越しいただいた時のお話をお伝えしたいと思います。

これからもInterFMビジプロにゲスト出演してくださった方々が語ってくださった内容をまとめていきますので、noteのフォローもよろしくお願いします。

※この記事は、日曜20時30分からInterFMにて放送しているサラリーマンの挑戦を後押しするベンチャービジネス番組ビジプロの内容をまとめています。

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三戸政和(みとまさかず)事業投資家、ラジオDJ
1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先でのM&A戦略、株式公開支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行っている。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役も務める。
著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』(講談社+α新書)、『資本家マインドセット』(幻冬舎NewsPicks)、『営業はいらない』(SB新書)、『サラリーマンがオーナー社長になるための企業買収完全ガイド』(ダイヤモンド)、『サラリーマン絶滅世界を君たちはどう生きるか?』(プレジデント)などがある。Twitterのアカウントは、@310JPN