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大豆の種子と強盗団 @ マウア(ブラジル)

戦前、日本には満洲産の大豆が入って来ていましたが、もともと大豆は冷涼な地域の作物だったようです。
熱帯では、次の作付け用の種子を倉庫の中に貯蔵しておくと、発芽率が悪くなってしまい、そんな種を蒔くと畑がまだら模様になります。

でも、マウア(ブラジル・パラナ州)は冷涼な高原なので、マウアの種子は発芽率が良いと評判になりました。
それで日系の農業技師三人が種子会社を作って、日系農家のほとんどがその種子会社に収穫した大豆を納めました。
種子大豆は普通のより一割ほど高く払ってくれるので純益は倍になり、農家はホクホクです。
それで周囲の安い土地を今のうちに買っておけ、という訳でどんどん農地を広げました。

定住せずに移動する牧畜民や中東の人たちは、お金が儲かると持ち運べる財産、つまり宝石や貴金属を買いますし、ユダヤ人たちは株などの金融商品を買いますが、稲作民は田から離れられない定着民ですから、財産と言えば土地などの不動産です。
ですからジプシー(ロマ)の女性はジャラジャラと全財産を身に付けて歩き回りますが、日本着の女性には髪飾り以外のアクセサリーは似合いません。

マウアの好景気が周囲に知られるようになると、土地売りや宝石売り、絨毯売りなどの物売りと、強盗が集まってきます。

ブラジルの金持ちは金庫に宝石やドル紙幣をしまっているので、強盗も日本人の家に押し入ると、金塊はどこだ、金庫は、ドルは、と家長を責め立てます。
でも日本人の家庭は、奥さんのアクセサリーと旅行で余ったドルぐらいしか持っていないので、強盗が家長の頭を殴って脅すのです。
ピストルの握りは固いので、それで殴られるとすぐに血が出ます。頭皮の下は骨ですから出血すると顔の方に血が流れ出るので大変です。

このようにマウアの日本人の農場には、ちょいちょい強盗が来るので、自警団を作り、私も大豆作りではなかったですが、口径22の軽いライフルを持って、三人一組で夜回りをしました。
(2000年ごろのお話、私は50代後半でした)

【今日の名言】
正直は一生の宝。

短気は短命。

お読みになって頂きありがとうございます。宜しくお願い申し上げます。