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【感想】劇場映画『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(主に怪獣映画の観点から)

突然だが、僕は怪獣映画が好きだ。
ってこの書き出し何かデジャビュ感あるなと思ったらこの記事で思いっきし同じことを書いていた。

実は本作『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』は特に怪獣映画を期待して見に行ったわけではなかった。
まぁ予告編で"Kaiju!!!"みたいに叫んでいる台詞があったので「怪獣らしき巨大生物が出てくるのかな」ぐらいには思っていたけど。
ところが蓋を開けてみたら紛うことなき怪獣映画だったのでこうして記事を書いている。
脚本の巧さとかアクションの斬新さとか本作を語るポイントは他にも色々あるのだが、それは僕なんかよりずっと優れた批評が既に存在する or これから出てくること間違いなしなのでそちらに譲ります。

というか大傑作なので何よりまず見てくださいw

上のnote記事からの引用

そもそも(特に平成ガメラ以降の)怪獣映画ではまず「怪獣を何のメタファーとするか?」が問題となる。
初代ゴジラは原爆、平成ガメラは戦争、シン・ゴジラは災害。
では本作のゴジラは?
ここに決定論の考え方における「避けられない未来」という超絶抽象的な対象を当てはめる離れ技。

本作のクライマックスに出てくる怪獣は、感想ツイートでは文字数の関係で「政府」と書いたが、より正確には「アメリカ合衆国」のメタファーである。
まず本作の舞台は中南米にある架空の独裁国家。
今まではよろしくやっていたのだがクーデターによってアメリカにとって都合の悪い人物が政権に就いてしまったのを抑え込むというのがミッションになっている。
これはまさしく中南米やアジアに介入して政治情勢をコントロールしてきた(もちろんそれが歴史上全て悪い方向に働いたとは言わないが)アメリカ合衆国への自己批評であろう。
『アイアンマン』がイラク戦争の自己批評だったのに通じるMCUイズム。

ここまで書いてきて気付いたが、これは怪獣というより本作のストーリー全体の構図の話だった。

次に、この怪獣には「小型版がいて、そいつがヒトの神経を侵食する」という設定がある。
あのシーンを見て「ソルジャーレギオンじゃん!」と思った人はいつかどこかで酒を一緒に飲みましょう。

それにしてもあのシーン気持ち悪かった…
(まぁ真のクライマックスでもっと大量のアレが出てくるんですけどね…)
この設定およびシーンはSNS時代の政治のメタファーに思える。

ここでジェームズ・ガンが本作の監督に決まった経緯を振り返ろう。

反トランプとして知られるガンが右派メディアに過去の不謹慎ツイートを掘り起こされてディズニー(マーベル・スタジオ)から即日解雇されてしまった。
そこをワーナーがすぐに拾って監督に抜擢したというのが簡単な経緯である。
ちなみにメル・ギブソンにもオファーが行っていたらしい(マジで)

あの怪獣がヒトの神経を侵食して意のままに操る場面は、昨年のアメリカ大統領選でトランプに煽られた支持者が議会に突入した現実の事件を思い出した。
自身もソーシャルメディアを発端にキャンセルされた(後にディズニーが解雇を撤回したけれど)ジェームズ・ガンだからこそ、このシーンは単に「怪獣が人を操る」以上の意味を見出してしまうのは考えすぎだろうか?
SNS・インターネットは簡単に大衆を操れる現代の怪獣になってしまった。

以上のようなテーマ性という点で僕にとっては『ゴジラvsコング』よりも本作の方がずっと怪獣映画である。
まさか怪獣を政府(アメリカ合衆国)やソーシャルメディアのメタファーとして描いてくるとは。
すごいぜジェームズ・ガン。

ただ、誤解してほしくないのは本作は前述のようなテーマ性を潜ませてはいるものの、決して難解だったり堅苦しかったりする映画ではないということ。
大前提としてコメディやアクションなど様々なジャンルの要素が入り混じった娯楽大作に仕上がっている。
樋口真嗣監督との対談動画を見ればまずは純粋に面白い映画を撮ってくれる人だということが伝わるはず。

『シン・ゴジラ』も好きって何か嬉しいなw

『シン・ゴジラ』では怪獣vs.日本政府という構図だったけど、本作は怪獣≒アメリカ合衆国という構図。

『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』は全国の映画館で公開中

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