【感想】Disney+ドラマ『すべて忘れてしまうから』第1話
アカデミー賞を筆頭に海外で絶賛された映画『ドライブ・マイ・カー』
賞レースでは脚本賞もしくは脚色賞へのノミネートが多く、ワールドプレミアとなったカンヌ国際映画祭で受賞したのも脚本賞。
実は『ドライブ・マイ・カー』の脚本クレジットは濱口竜介監督の単独ではなく共同脚本になっている。
そのもう1人の脚本家が今回『すべて忘れてしまうから』の監督に名を連ねる大江崇允。
つまり本作は「ドライブ・マイ・カーの脚本家の新作」と言っても決して嘘ではない。
さらに大江監督以外のスタッフの並びも凄まじい。
監督・脚本:岨手由貴子(あのこは貴族)
監督・脚本:沖田修一(子供はわかってあげない、さかなのこ)
撮影:四宮秀俊(ドライブ・マイ・カー)
照明:高井大樹(ドライブ・マイ・カー)
美術:安宅紀史(あのこは貴族、子供はわかってあげない、さかなのこ)
ガチガチの鉄壁布陣。
(オンライン試写会で第3話まで観た人の情報によると第1〜3話は岨手由貴子監督が手がけているらしい)
あらすじはこんな感じのミステリー調。
ところが原作は燃え殻のエッセイ。
ミステリー色は皆無。
ドラマを観る前に原作を読みながら「これで合ってんのかな…?」と何度不安になったことかw
燃え殻の小説・エッセイといえば「エモい」という感想に代表されるノスタルジーな作風だと思う。
映像化されたもので記憶に新しいのはNetflixで昨年配信された『ボクたちはみんな大人になれなかった』
僕は90年代当時は小学生だったのである程度新鮮かつノスタルジー消費の側面も楽しめたが、人によっては「もっと今を描いた作品が観たい」となるかも。
話を戻すと、本作はどうやらエッセイに着想を得てオリジナルストーリーが執筆されたということらしい。
舞台は2021年か2022年だしノスタルジーは薄め。
原作のエッセイに書かれたエピソードは随所に引用されており、自分が第1話で見つけた範囲だと
とある女性が突如消える(ねぇ、なんで追ってこないの?)
主人公とバーの店長は長い付き合いだがお互いの本名を知らない(今日も誰とも会わずに一日が終わろうとしている)
新人編集者の企画で連載エッセイを描くことになった(すべて忘れてしまうから)
素性も知らない女と何十年も連れ添った男のニュース(男と女は、世界でふたりぼっちだったんじゃないだろうか)
子猫を拾った(記憶は優しい嘘をつく)
この世界は飲み放題と一緒(今夜は、悪口かエロ話だけにしましょう)
といった辺り。
メインのミステリー要素はドラマのオリジナル。
酒井美紀が演じるFの姉のほぼ不条理劇な台詞は完全オリジナル。
巻き込まれる阿部寛も『結婚できない男』っぽい冴えない佇まいが最高w
ただ、まだ第1話しか配信されてないので感想を書こうにも何ともストーリーやテーマが掴めない。
とはいえ演出面は第1話からかなり冴え渡っている。
やはり四宮秀俊の撮影が出色。
ファーストカットから明らかに映画ともテレビドラマとも映像の質感が違う。
それもそのはず、なんと全編16mmフィルム撮影!
そんな作品『私立探偵 濱マイク』ぐらいしか聞いたことない。
初回はあのザラついた質感の映像を眺めているだけで30分あっという間だった。
もう一つ面白い試みがエンディング曲を毎回異なるアーティストが手がけること。
『大豆田とわ子と三人の元夫』のあれと近い感じか。
第1話は本作の劇伴も手がけるTENDREの演奏シーンをたっぷり長尺で。
この仕掛けを知らずストーリーの本筋に関係あるシーンだと思って観ていたので「歌のシーンやけに長いな」と戸惑ってしまったが、改めて見返したら超贅沢。
第2話以降ミステリー要素がどう転がっていくか楽しみ。
そういえば大江崇允は年末にもう1本ドラマがDisney+で配信されるらしい。
監督は『さがす』の片山慎三。
『ガンニバル』も楽しみ。
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