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【感想】Netflixアニメ『GAMERA -Rebirth-』

ガメラ新作の製作が発表されたのは2022年11月17日。
遂に、遂にという感じであった。

奇しくも1年後の2023年11月17日にはApple TV+でゴジラも登場するドラマが配信予定。

さて、ガメラといえば昭和版と平成版に大きく区別されるわけだが、日本映画史における重要性という観点から考えるとより外せないのはいわゆる平成ガメラ三部作。

ここで平成ガメラを語ろうとすると「何がどう凄いのか?」という客観的な話から先日亡くなった祖父との思い出話といった個人的な話まで右往左往(?)してしまうので最低限に留めようと思う。

おじいちゃん本当にありがとう。

既存の怪獣映画とは一味も二味も違うものを作ってやろうと煮えたぎっていた制作陣が世に送り出した、日本特撮映画の到達点にして正真正銘の金字塔。

  • <監督>金子修介

  • <脚本>伊藤和典

  • <特撮監督>樋口真嗣

今見ると改めてとんでもない座組みである。
三部作を貫く特徴はSF考証や自衛隊の描写など「大人の鑑賞にも耐え得る怪獣映画」を達成している点。
このイズムは15年以上経ってから『シン・ゴジラ』に受け継がれることとなる。

もちろん僕も大好きで、2015年の東京国際映画祭で4Kデジタルリストア版を観たり蒲田でやっていた特撮のDNA展にも足を運んだり。

2021年に開催された4K HDR版のDolby Cinema上映企画はコロナ禍もあって行けなかったんだよなぁ。無念。

ただ、功があれば罪もあるのが世の常というもの。
ガメラがギャオスを倒す戦闘の最中に倒壊した建物に巻き込まれて亡くなった人もいるのだ。
平成ガメラ三部作はシンプルにハードルを上げすぎて実写の新作をやりづらくなってしまった。
平成ガメラとは完全に別個の世界観の作品として製作された『小さき勇者たち 〜ガメラ〜』は批評的にも興行的にもあまりパッとしない結果に。

まぁ観客も平成ガメラの亡霊に囚われていたというのはあると思われる。
さらに2015年にはガメラ生誕50周年を記念した映像が公開。

ロングバージョンも見ました。

しかし長編映画の実現は音沙汰なし。
個人的にはこの映像は好きだったが、伊藤和典からは手厳しい声も。

いいかげん『G3』の呪縛から離れたほうがいいというのが印象。

映画秘宝2021年4月号 P.11

辛辣w
まぁでも言わんとすることはわからないでもない。
でも結局ファン・観客の方が平成ガメラの続編的なものを求めてしまっているんだよな。

そんなわけで遂に実現した新作は誰がどう撮るんだろうと冒頭に貼った記事を読んだら何とまさかのアニメ。
なるほど全く異なるアートフォームを選ぶという戦い方。

監督は瀬下寛之。
アニメ映画のGODZILLA三部作の監督も務めており、今作でゴジラとガメラ両方を制覇。
(金子修介、樋口真嗣に続く3人目?)

新海誠監督『すずめの戸締まり』でのCG演出の仕事も記憶に新しい。

近年ではSF・怪獣ジャンルのアニメ監督の第一人者な気がする。
納得の人選。

前述のアニメ映画版GODZILLA三部作は話が進むに連れて虚淵玄の作風がどんどん前傾化していった印象があるが、今作のシリーズ構成には瀬古浩司の名前が。

近年のヒット作を多数手がける職人。
原作のイメージを上書きするほどには自身の色を出さず手堅くまとめてくれそうである。

期待と不安が半々で第1話を観たら『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』のラストから繋がったようなギャオスの群れが新宿に襲来!
しかもギャオスは超グロテスク。
早くも「おぉっ」と思わされる。

主人公は子供たち4人組。
「ガメラは子供の味方」という昭和版のテイストが明確に復活させられている。
原点回帰。
どこか牧歌的でほのぼのした面もある作劇は平成ガメラのファンからは好みが分かれるかもしれない。
自分は上述の伊藤和典の言葉ではないが「ここまで神格化されている平成ガメラと今さら同じ事やっても仕方ない」という考えで観ていたのでそこまで気にならなかった。

ただ、ガメラを「亀のような」とか「巨大亀」と呼ぶ台詞は平成版の「この劇中世界では亀という生物は絶滅している。だからガメラを見ても誰も亀と口にしない」という裏設定に膝を打った身としてはどうしても気になるw
こればかりは仕方ないw

では平成版のようなハード路線が一切ないのかというと米軍や自衛隊が全編に絡んでくるポリティカル・フィクションがストーリーの下敷きに。
例えば第2話で米軍がジャイガーではなくガメラを攻撃してしまうシーンは間違いなく『ガメラ2 レギオン襲来』を踏まえている。

大人たちも慌てる未曾有の危機に子供たちが立ち向かい、やがて巨大な陰謀が明らかになっていく構成はNetflixの大人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』が意外と違いんじゃないかと思ったり。

(そもそも『ストレンジャー・シングス』が80年台リバイバル的な作品なので若干倒錯的な分析ではあるのだけど)

ガメラと心が通じ合う子供もいるし、昭和版と平成版のハイブリッドといった感じか。
どちらの過去作にもかなりオマージュやリスペクトを捧げているように見受けられた。

正直途中までは「オマージュ過剰でオリジナリティが薄いような…」と心配だったのだけど、後半にちゃんと新鮮な展開が用意されていたのは良かった。
エミコのあの若干浮世離れした雰囲気は子供の目線から見た年上のお姉さんを表現しているのかと思っていたら、ミスリードかつ昭和版への特大オマージュでもあったとは。

そして本作最大の長所・魅力がアニメならではの表現ポテンシャルを活かした実写特撮には出来ない怪獣バトルシーンの数々。

  • <第3話>ガメラ3のイリス戦を彷彿とさせるジグラとの海中戦

  • <第4話>本作のハイライトというべき、特撮では不可能なジャンプ連発で躍動するギロン

  • <第5話>バイラスに対する飛行しながらのプラズマ火球連発

特にギロンって個人的に(あくまで個人的にです)昭和版ではそこまでカッコいい怪獣デザインと思えなくて、むしろコミカルな印象すらあったのだけど、今回のギロンはヤバかった。
手裏剣もむちゃくちゃ改良されてる!w

あとゴジラには出来なくてガメラには出来るアクションである飛行シーンがたっぷりあるのも良い。
対ゴジラの戦い方をよく分かっている。

短所を挙げるなら、既に多くの人が指摘しているように人間キャラクターの3DCGクオリティ不足は若干気になるか。
怪獣バトルシーンは3DCGのメリットをめちゃくちゃ享受してるんですけどね。

とはいえ今作で「昭和から平成に受け継がれてきたガメラを令和にリブートさせる」というお題目は達成されて多くのファンが溜飲を下げたと思う。
もし次があるならば『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』で円城塔がやったような暴走気味の換骨奪胎も見てみたい。

これは大怪作で大傑作。

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