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【感想】Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス』シーズン4とショーン・レヴィとスピルバーグ

5月末に配信されたNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス』のシーズン4。
言わずと知れた大人気シリーズの最新作。
現在はvol.1と称して第7話までが配信されていて、7/1(金)にvol.2として第8・9話が配信予定。

『E.T.』『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』といった80年代のスピルバーグ的もしくはアンブリン・エンターテインメント的なジュブナイル冒険活劇。
本作もこの系譜というか文字通り現代に蘇らせたリバイバル作品。

時代や地域を選ばない不朽の名作。
(余談だが、勝手に『スタンド・バイ・ミー』はスピルバーグ製作総指揮だと思い込んでいて、今回記憶違いをしていたと知った)

実はスピルバーグ本人も2011年にプロデューサーとしてJ.J.エイブラムス監督作『SUPER 8/スーパーエイト』に参加して自らその再現に挑んでいる。

結果は…失敗とは言わないまでも(E.T.×スタンド・バイ・ミーという宣伝文句は世間にも受け入れられていたと思う)大成功でもないという微妙な感じにw
スピルバーグ本人の力を借りてもあの80年代ジュブナイル映画の再現は困難ということが図らずも実証されてしまった。

その後J.J.は活動範囲をテレビから映画にシフトしていく。
キャリアハイになると思われた『スター・ウォーズ』続三部作は賛否両論となり、少なくともポスト・スピルバーグ候補者レース(そんなものがあるのか知らないが)において順位を下げた感は否めない。

時を同じくしてNetflixによりテレビドラマの再ブームが始まる。
その中でも『ストレンジャー・シングス』は大ヒットして80年代リバイバルの決定打に。
では、本作のスピルバーグっぽさを支えているのは何(もしくは誰)なのか?
イケてないグループの少年たちを主人公に据えたストーリーであるとか膨大なポップカルチャー引用であるとか要因は色々あるが、僕はショーン・レヴィの存在を挙げたい。

ショーン・レヴィは本作の製作総指揮であり、各シーズンの第3・4話で監督も務めてきた人物。
そもそも原作者のダファー兄弟がありとあらゆるスタジオに本作の企画を持ち込んでは断られていたところを彼が良いアイデアだと見込んでNetflixに繋いだらしい。

Levy has been a believer from the beginning, when series creators Matt and Ross Duffer first pitched the idea to his production company, 21 Laps. He came on board, helped bring the series to Netflix, agreed to direct two episodes, and continues to champion the show as it finds its audience.
https://variety.com/2016/tv/news/stranger-things-season-1-shawn-levy-interview-winona-ryder-netflix-1201820811/

グッジョブすぎる。

正直当時のショーン・レヴィは『ナイトミュージアム』シリーズなど駄作ではないし確かに面白い娯楽映画を作る人ではあるけれど、重要な映画監督とは認識されていなかったと思う。

「ショーン・レヴィの新作だから観る」という人が『ストレンジャー・シングス』以前はどれほどいただろうか?
(ファンの方、ごめんなさい)

それが本作でまず重要プロデューサーに格上げ。
さらに監督としても2021年の『フリー・ガイ』や2022年の『アダム&アダム』で明らかにそれまでとはステージが異なる面白さの娯楽作品を撮ってみせた。

そして次作はデッドプール3!

ライアン・レイノルズと仕事しまくってるw

プロデューサーとしてダファー兄弟を見守りながら(きっと時にはアドバイスや指摘をしながら)クリエイティブをまとめてきた間違いなく最大の功労者だろう。
シーズン4でも第3・4話を監督。
特に第4話が素晴らしかった。
このエピソードのモチーフは「走る」

  • 学校に駆け込んでくるルーカス

  • 刑務所から脱走するホッパー

  • マイクとウィルたちも家が急襲されてピザ屋の車で逃走

  • 病院で捕まるも走って車まで逃げるナンシーとロビン

一見シンプルではあるが横長の画面に映える「走る」というアクション。

そしてあのクライマックス。
シリーズ屈指の名場面であるシーズン2最終回のスノーボールの時と同じ面々がマックスを助けるために空間をまたいで奔走する。
あの頃の三角関係の甘酸っぱい恋模様を経て、振られた男(ダスティン)と結ばれた男(ルーカス)が想った女性を助けるために共闘する。
そこには子守役を任されたスティーブもいて、あの時に別れたナンシーがダスティンに託した情報を信じて必死で協力する。
恋愛を経験した友情の成熟。

遂に見つかったマックスの好きな曲。
このシーンで流れたことで世界的に再ヒットしているケイト・ブッシュの『Running Up That Hill』

これに乗せてマックスの思い出深いシーンの数々が走馬灯のように駆け巡る編集はズルいw
あんなん絶対泣くでしょw

マックスは走る。
生きるために。
表の世界に戻るために。
そして画面全体が数秒間ブラックアウトする編集を挟んでのラストカット。
素晴らしかった。

曲といえば前述のスノーボールのシーンをエモーショナルに彩っていた『Time After Time』と『Every Breath You Take』の歌詞がこのシーンへの伏線にも聴こえるというのは深読みしすぎだろうか?

I’m walking too far ahead
ずっと遠くを歩いてる私を
You’re calling to me
あなたは私を呼ぶけど
I can’t hear what you’ve said
あなたの声は私に届かない
https://aanii.net/time-after-time/
Every move you make
Every step you take
I'll be watching you

君の動きすべて
君の歩みすべて
僕はずっと見てるよ
http://www.worldfolksong.com/popular/every-breath-you-take.html

最後に、僕がショーン・レヴィとスピルバーグを結び付けたくなったもう一つの理由を。
有名な話だが、スピルバーグは脚本を書かない映画監督である。
これまでに脚本を書いたのは2作品だけ。

この辺の話は以前別の記事に書きました。

で、実はショーン・レヴィも自分で脚本を書かない映画監督なのだ。

IMDbによると監督作が43本に対して脚本を書いた作品は2本のみ。
しかもその内の1本はNetflixでこれから配信されるシリーズで、もう1本は1998年放送のテレビドラマ。
彼もまた脚本家が生み出したストーリーを映画という形で語ることに特化した種類の人なんじゃないかと思うのである。
さすがに「スピルバーグの再来」と言えるほどの巨匠感やヒットメイカー感はまだ無いけれどw

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