【感想】NHKよるドラ『恋せぬふたり』第1・2話
1月からNHKよるドラ枠で始まった新ドラマ『恋せぬふたり』
大滝詠一の最後のシングル曲を彷彿させるタイトルである。
本作のあらすじ↓
恋愛を絶対的な善とする無邪気な恋愛史上主義に対するカウンター的な作品は近年増えてきた。
それに救われた人も少なくないのではないかと思う。
とはいえ、ゼロ年代からそういった作品が全く無かったわけではない。
名台詞、いや金言のオンパレードな平成を代表する名作ドラマ。
2010年代には古沢良太や野木亜紀子という人気脚本家がそれぞれ異なるアプローチで恋愛・結婚とは何かを問う作品を書いている。
直近だとこれかな。
ただ、これらの作品は恋愛に対する価値観や結婚という社会的システムの意義をエンタメという形で批評してはいるものの、結末としては主人公が本当の愛を知るなど「恋愛は良いものである」という着地になっている。
別に恋愛は絶対的な悪でもないわけなので、これはこれで決して悪いことではない。
時代は変わったとはいえ今も昔もラブストーリーへの需要は高いわけだし。
本当に誰も恋愛しなくなったら(少子化とか現実的な問題も含めて)それはそれで大変だ。
ただ、本作『恋せぬふたり』はそういう結末にはならなそうである。
主人公のセクシュアリティは他者に恋愛感情も性的欲求も抱かないアロマンティック・アセクシャル。
つまり、前述の作品のように主人公の考え方や価値観が変化して最終的に恋愛をするようになるという結末は考えづらいように思われる。
アセクシャル(無性愛)というテーマはNetflixの傑作ドラマ『セックス・エデュケーション』のシーズン2でも触れられていた。
ただ、海外ドラマでもこの作品以外で描かれているのは(少なくとも僕は)見たことがない。
まだ先進的な位置付けになってしまっている(だからこそエンタメやポップカルチャーという形で届ける必要性のある)テーマなのだと思う。
そんな本作の脚本を手がけたのは吉田恵里香。
自分は過去作品は正直なところ馴染みが薄く、何とか作品名は知ってるレベルなのがこの辺り。
まぁジャンル的には学校が舞台のティーン向けラブコメなので僕は観客層の想定ターゲットからは外れてそうだw
そんなザ・恋愛至上主義ともいえるラブコメを手がけてきた脚本家が原作なしオリジナルで本作を生み出したというのは興味深い。
非常に優れた批評眼と優しさ。
第1話はスッと静かに始まり、第2話では早くもテーマの核心に迫るような感情を吐露する台詞が出てきた。
第3話以降もどのような台詞によってストーリーテリングが為されてテーマを打ち出していくのか楽しみ。
また、本作でとても面白い試みだと思っているのがスタッフブログ。
各話の放送後に演出を担当した監督が自ら注目ポイントと称して演出意図を語っている。
例えば第1話ではスプリットスクリーンの狙いや色のこだわり。
特に色の使い方は放送を見た段階では意識できていなかったので「なるほど!」と膝を打つ思いだった。
これ普通ならDVDの特典映像とか配信サービスの副音声とか公式ガイドブックとか何にせよ有料でアクセスできる内容なのでありがたい。
(いや、でもNHKには前もって受信料を払ってるから実質これもその受信料でまかなわれた有料コンテンツなのか…?)
第2話は小道具について。
こういう社会的なテーマが明確に打ち出されている作品はどうしてもそのメッセージの中身が注目されがちで演出はなかなか語られづらい部分がある。
そうでなくても最近は「脚本に書かれたテーマをきちんと読み解こう」という風潮が強いし。
(過剰に正解を求めすぎなければ別に悪いことではないのですが)
なのでこうして演出にも目を向けさせるのはとても良い施策。
おまけ
今泉力哉監督の『愛がなんだ』で「好き」という恋愛感情をこれでもかと体現しすぎなほど体現していた岸井ゆきのが本作の主演というキャスティングも面白いなぁと思います。
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