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【感想】フジ木10ドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○』第1話

うーん、色々惜しい!もったいない!
でも面白くなりそうな雰囲気はまだ残ってる。
そんな初回だった。

フジ木曜22時枠で始まった新ドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の◯◯』
あらすじはこんな感じ。

カンフルNEWSは、他社のニュースやブログ記事、コメントをコピペしただけのいわゆる“コタツ記事”を、放任主義の編集長をはじめとする男性編集部員たちが発信するWebメディア。編集部に新たに加わった凛々子は、PV(ページビュー)数を伸ばすために手段を選ばず仕事をこなしていく。しかし記事をアップしていくうちに、必要とされていないと思っていたネットニュースの仕事は少しずつ意味のあるものに変化。また、凛々子のまっすぐな仕事ぶりと、実は不器用で無垢な一面に触れるうち、周囲の男たちは彼女へ好意を持ち始める。そして凛々子もまた、人間的に成長していく。
https://natalie.mu/eiga/news/452977

ところでこの記事中の「男性」とか「男」とか性差を意識した表現はドラマの実態と合ってないし(石井杏奈演じる女性編集部員がいる)そもそもコタツ記事って別に男性だけが書くものでもないような?

社会派“風”お仕事エンターテインメントを謳っており、チーフ演出は『リーガル・ハイ』で社会派“風”エンタメの実績がある石川淳一。

脚本家・古沢良太の最高傑作。
近年は『コンフィデンスマンJP』『GREAT PRETENDER』とコンゲーム作品が続いているけどまたこういう作品も見たいな。
実現しても大河ドラマの後だから随分先だけどw

社会を描くのがエンタメの役割の1つということで、ネットメディアやネットニュースを題材にした作品は近年増えている。
その筆頭はやはり脚本家の野木亜紀子。
まずは2018年のNHKドラマ『フェイクニュース』

さらに2020年のTBSドラマ『MIU404』の第10話。

取材を受けた桔梗隊長(麻生久美子)がネット上で叩かれたり、ナウチューバーのREC(渡邊圭祐)が久住(菅田将暉)にPCを乗っ取られてフェイクニュースを流してしまいそれが拡散するといったエピソード。

藤井道人監督もメディアをよく描いている。
近作は2021年配信のABEMAオムニバスドラマ『箱庭のレミング』内の『KILLER NEWS』

炎上記事でPVを稼ぐ記者(吉谷彩子)がデマを記事にしてしまったことで自身が炎上の標的になるというストーリー。

上記はプロデューサーだが、監督・脚本を務めた作品といえば日本アカデミー賞を獲って出世作となった映画『新聞記者』

1/13(木)にはNetflixドラマ版が配信予定。

他にも神戸新聞の記者を経て作家に転身した塩田武士はメディアを描いた小説を何本か発表しており、フェイクニュースを扱った『歪んだ波紋』が2019年にNHKでドラマ化。

『罪の声』も野木亜紀子の脚本で映画化されてましたね。

こちらはジャンル的にはミステリー作品。
メディア論は主題ではないものの言及されていました。

ただ、前述の作品はフェイクニュースを扱ったもので、いわゆるコタツ記事は昨年10月クールにテレ朝で放送されていた『和田家の男たち』で描かれていました。

家族というテーマもある作品だったので硬派なメディア論はそこまで見られなかったですが。

海外だと日本で言われているようなネットニュース(コタツ記事)を描いたものは少ない印象。
(そもそも海外にはコタツ記事というものは存在するのだろうか?)
フェイクニュースやメディア論を扱った作品は結構ある。

自分が印象に残ってる作品はこれかな。
組織的な活動としてのフェイクニュース作成&配信がゴリゴリに描かれている。

あとは実話を基にメディアやジャーナリズムのあるべき姿を描いた作品か。

※『コレクティブ 国家の嘘』はドキュメンタリー映画

直接的でなくても社会批評SF作品などはメタファーという形でフェイクニュースやメディア論に言及している。
例えばこの辺のアメコミ映画とか。

余談ですがスパイダーマンは最新作『ノー・ウェイ・ホーム』がファンサービス満載で裏を返せばそれに終始したと感じられたのに比べて、この『ファー・フロム・ホーム』はテーマやメッセージがしっかりしていて個人的にはこっちの方が好み。

そろそろ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の○○』の話に。
前述の通り国内外を見渡してもフェイクニュースやメディアのあるべき姿を問う作品は多々あるものの、無邪気なコタツ記事を扱った作品はまだ少ない。
やり方次第では勝算ある企画なのではないか?というのが視聴前の自分の見立て。
また、近年の日本ドラマはネットニュースやネットメディアのPV至上主義というイシューの提示までは行くものの、そこからの展開が手詰まりになっている印象が正直あったのでそこを打破してくれる事への期待もあった。

ただ、第1話を見た感想としては、もう一歩…という感じ。

カンフルNEWSの親会社であるクスノキ出版の経理部から異動してきた主人公。
何やら役員の1人(安藤政信)からカンフルNEWSの立て直しを密かに任されたらしい。
19年前(!)に同枠で放送されていた『美女か野獣』を思い出す立ち上がり。

松嶋菜々子&福山雅治のダブル主演でテレビの報道局を舞台にした木10の金字塔。
松嶋菜々子が視聴率低下に苦しむニュース番組の立て直しを任される敏腕プロデューサー役でした。

カンフルNEWSが扱っているのはテレビやSNSから拾った情報を特に取材せず記事化する、いわゆるコタツ記事。
この手の低俗な記事を扱う編集部を描いた作品で思い出すのは映画『SCOOP!』

この作品は大根仁監督が自身を投影してる部分もあるのか「たとえ時代に取り残されてるとしても、こういうゲスい記事を大衆は読みたいんだ!」という気概を登場人物が持ってました。
対して『ゴシップ』の方は窓際部署ってことで全員士気は低い感じ。
次回予告を見た感じだと第2話はまさに芸能ゴシップを扱うストーリーになるんだろうか?

コタツ記事を扱うネットニュース編集部という舞台設定は確かに現代的だが、そこで繰り広げられる物語は意外にオールドメディアを舞台にしてきた過去の作品と差別化しづらいのかな?

空気を読まない異分子がある日突然やって来て腐敗した組織を変えるというプロットもまぁベタですし。

第1話では誤報の謝罪記事を出すためSNSを使って取材というよりほとんど“捜査”を行う展開が見せ場になるのだが、いざ映像で見るとテレ東ドラマ『アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜』やNetflixドラマ『アメリカを荒らす者たち』や映画『search/サーチ』で見たことあるやつじゃんとなってしまった。

まぁ本質的にSNS捜査をやってるわけだから被るのは当然っちゃ当然か。
で、クライマックスではそのSNS捜査で見つけたある人物に主人公が会って話を聞くのだが、こうなると映像的には既存のオールドメディアを舞台にしてきた作品とほとんど変わらなく見えてしまう。
ただ、ここで人と人が直接対峙しないと確かにドラマの盛り上がり的には厳しいよなぁ。
安楽椅子探偵的に主人公が編集部から出ないでPCの前だけで取材・捜査→解決ってのもありっちゃありだが…
堂本光一と深田恭子のダブル主演ドラマ『リモート』はそんな話だった。

もう20年前の作品なのか。
これ後半バリエーションが尽きたか最終回までマンネリせず持続できたかどうか記憶が定かではないので何ともなのですが。
あと、このフォーマットだと主人公の手足となって現場で動く人が必要になりますね。
新編集長になった瀬古凛々子(黒木華)が強権発動すればワンチャン…?

冒頭に「惜しい」「もったいない」と書いたのは、前述のような感じで新規性がありそうだと思って見たんだけど蓋を開けたら意外に既視感があるぞと。
(現代において過去の作品に対する参照・引用・編集それ自体は当たり前なので、個別の要素ではなくそれらが組み合わさることで新規性が生まれていればいいと自分は考えています。今作の場合は組み合わせの妙がもう一歩欲しいなと)
一方で、終盤の「コタツ記事によって自分の声を拾ってくれたと感謝する人がいる。だが、それとデマを流したことによる誹謗中傷は全く別問題」というバランス感覚は、脚本が何も考えずにただ今っぽい要素を並べて書いてるわけじゃないと感じさせる光はあった。
第2話以降はこれらの組み合わせによって何か新しさが見えてくると嬉しいな。

原作なしオリジナル脚本ということで応援したいし、面白くなってほしいと願ってます。

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