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「天城山からの手紙 41話」

今回からは、視点をグッと寄せて小さな存在を追いかけてみたい。森を歩いていると、こぼれるほどの光が気になり、自然と空を仰いでしまう。そこからは、風に揺れて動く葉の隙間から、キラキラと光がこぼれ落ち、眩しくて薄目にしたその先は、真夏の色で溢れていた。濃い緑に染めた葉は、これでもかというほど生命力に溢れ、強い日差しなど苦にしていない。情けないことに私は、降り注ぐ陽に、「勘弁してくれ」と呟くのだから、森の者達に笑われていた気がした・・・。そして、涼を求めて次に向ったのは、夏の渓谷だ。流れる水の音が、上流から涼しい風を連れてきては顔を撫で、流れの中に足を付ければ火照った体の熱を洗い流す。そんな中をあてもなく歩き、涼の瞬を楽しむのだ。しばらく歩き、ふと空を見上げると、なんとそこには、季節外れの紅葉が揺れていた。その先へと目を向けると、キラキラと輝く光が、隆々とした緑の葉からこぼれ落ち、紅葉を照らす。そんな姿を見ていると、ついさっき森から退散してきた私と被り、心に笑みが溢れた。よし!コイツを撮ってあげよう!ここから、私と紅葉の物語が始まるのだ。そして、じーっと見つめていると・・・きっとオレンジになっているのは、暑くて火照っているからだ・・・もうたまらず負けて逃げだしそう・・・頑張っているんだから祝福されているような感じにしてあげたいな・・・。どうだろう?そんな物語がこの写真でできただろうか?実に、こんな楽しみも写真の醍醐味なのだ。

掲載写真 題名:「火照る体」
撮影地:水生地
カメラ:Canon EOS 5D Mark III EF24-105mm f/4L IS USM
撮影データ:焦点距離102mm F4 SS 1/80sec ISO400 WB太陽光 モードAV
日付:2014年8月09日 AM11:19

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