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「天城山からの手紙」34話

写真家 土屋 正英

登山道へ着いた時、ライトに照らされた先は、1mも見えない程に濃い霧で包まれていた。一瞬、ちょっと危ないかな?と頭をよぎるが、目的地へ夜明け前に到着するには今出るしかない。そして、次の呼吸をしたらもう一歩足が進んでいた。すでに私の頭の中は、この霧の中で出会える情景で埋め尽くされていたからだ。これだけ濃い霧は珍しく、足元だけを見つめ、頭の中の地図と重ね合わせては一歩一歩進む。道半ば足を止めては霧に浮かぶ光景に心を揺さぶられ撮影したくてしょうがなくなってしまう。しかし目的地はまだ先なので、振り切る思いでまた歩く。しばらくすれば、また悩み振り切って・・・それほどまでに幻想的な空間が続いているのだ。もう暗闇の霧の中を歩いている事さえも忘れ去り、目の前を過行く情景にも大分慣れてきた頃、目の前に現れたのは、真っ赤な1本のツツジだった。そしてこれがトドメで、無事に予定変更となり、この場所で朝を迎える事となったのだ。実を言えば、こんな事はよくあることで、私のスタイル自体、出会いの瞬を優先させて撮影するので場所や予定なんて関係ない。だからフラフラと出かけては一期一会を楽しむ。段々と明るくなるにつれて、濃すぎた霧も丁度良く森を包み始める。そして、気づかなかったのだが、森の奥には、薄っすらと赤い花が見え隠れしている。歩を早め奥へと進むと、そこには、霧の魔法にかけられた子供たちが、森で遊んでいた。まるで私とかくれんぼをしているかのように・・・この時、もしかしたら私も、天城の魔法にかけられてたのかもしれない。こんな妄想もまた楽しくて仕方がない!

掲載写真 題名:「かくれんぼ」
撮影地:伊豆稜線歩道
カメラ:Canon EOS5D MARK4 EF24-105mm f/4LⅡ IS USM
撮影データ:焦点距離85mm F9 SS 3.2sec ISO400 WB太陽光 モードAV
日付:2017年6月8日AM4:46

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