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日本のジェンダー格差と日本人が持っている序列感覚

年々下がっている「日本におけるジェンダー格差」の国際的なポジション、という見逃すことのできない事実に、私たち日本人は気づいていながらそれほど大きな問題にしているようには見えません。それほど騒がれてはいないということです。たぶん、そうした現実があっても、仕方のないこと、として見過ごしているのでしょう。

■「ジェンダー格差」と「伸びない労働生産性」
今年のジェンダー格差は昨年の110位からさらに順位を下げ、過去最低の121位になってしまいました。G7の中では、ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、英国21位、米国53位、イタリア76位ですから圧倒的な最下位です。ちなみに中国は106位、韓国は108位ですから日本より上になっています。

これは何も日本のジェンダー格差が年々ひどくなっている、というわけではないのです。というよりも日本では、ジェンダーに関する進化が止まっている、もしくは遅々として進んでいない。その間に世界はどんどん進化してきている、というのが本当のところだろうと思います。

ジェンダー格差の話と状況が似ているのは、今、日本の一番の問題点だと私が考えている「日本の生産性の伸びの低さ」の問題です。日本企業が生産性を伸ばせずに苦しんでいる間に、他の主要な先進国の企業はみんな急速に生産性を伸ばしてきている、という事実があるからです。

「生産性が伸びないこと」を前提に、企業が無理にでも利益を捻出しようとすれば、切り詰められるところは何としてでも切り詰めなくてはなりません。その結果、無理が効く労働分配率を低めていくことが当たり前のように起こり、非正規雇用を次々に生み出すことにつながってきたのです。

それがどういう結果を生み出したかといえば、収入の少ない若者をたくさん作り出し、経済的な理由で結婚できない人が増えたということです。当然のことながら出生率は年々下がっていくわけですから、人口減少につながるわけです。
この非正規労働者には女性も多数含まれているわけで、それもジェンダー格差を生む原因のひとつになっているのではないかと思います。

■日本のジェンダー格差はどこから来ているのだろう?
もちろん、今までも日本がジェンダー格差という問題を無視し、手をこまねいてきた、というわけではありません。政府も方針としてその解消を掲げています。とはいえ成果が上がっていないことは数字が明白に示しているのです。努力しているにもかかわらず、結果が伴わない。そこには隠されたより本質的な問題が潜んでいると思われます。

このことに関する私の仮説は、日本のジェンダー格差が、その解消を叫ばれながらも一向に成果を見せることができていない理由には、そもそも私たち日本人の中に潜んでいる序列感覚(男尊女卑)の問題があるということです。

私たち日本人が密かにあこがれ、尊敬の念を抱いている武士道の世界。武士道は、主君に対する忠義と、その忠義を貫くために自分を捨てることもいとわない、ある意味では非常にストイックなモラルから成り立つ思想です。

武士道は、忠義を貫くという体面を保つために、何が何でも守り切らねばならない格式から成り立っています。体面を守るストイックな生き方を強いられます。そこでの格式はしっかりとした序列意識で構成されており、その中では実は男尊女卑という意識も重要な構成要素になっているのです。

こうした感覚は明治維新を経て、日常的な社会通念というか、ある種の生活感覚として無意識のうちに私たちに受け継がれてきているのです。
私が日本社会に蔓延している調整文化と言っているものの中には、こうした序列意識、男尊女卑の感覚も込められています。

今回は、ジェンダー格差が一向に改善されて行かないという厳然たる事実の背景に、武士道に由来する序列意識(男尊女卑)の感覚があることを指摘しておくことにとどめます。また機会があれば、このジェンダー格差の問題を生産性の伸びの低さとも絡めて、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。

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