[大阪戦]ここは通過点。初勝利に残る富山の難題 -第5節-
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第5節。富山vs大阪。
富山は前節同様にマブンガと上澤のツーガードでスタートし、序盤からリードを奪う。
改善された攻撃力をそのままに、さらに今節では課題の終盤についても質を上げた。
その結果、最終スコアは82-67。
ついに今季初勝利を挙げた。
しかし、喜ばしい勝利とは裏腹に富山にはここから52試合かけて着手しなくてはならない難題も残った。
今回の記事では富山の改善された攻守について。
最後に富山がここから向き合っていく難題について解説していく。
大阪戦の勝因
まずは攻守において改善された富山の内容から解説したい。
1、2-3ゾーンの向上
この日も富山は多くのディフェンスを2-3ゾーンで行った。
琉球戦では平均89失点した富山のゾーンディフェンスだが、この試合では大阪を67点に抑えている。
(第4Qはわずか8失点)
・守るコツは”打たれる”ではなく"打たせる"
富山の2-3ゾーンの考え方は
”打たせず止める”
のではなく、
”打たせて取る”
というものだ。
多くは得点効率の悪いミドルシュートを打たせるというものだが、
当然無策でシュートを許せば100%近く決められ相手の得点効率は下がらない。
そのためハイポストの守り方が課題になった。
(↓詳しくは前節の記事の後半部分を参考にしてほしい)
ここを解決したのが晴山と水戸、前線の2人の運動量である。
前は3Pラインより2~3m離れたエリアまで、後はハイポストのラインまで守備範囲を広げ、連携してポジションをスイッチしながらイージーシュートを作らせない。
とはいえ、各オフェンダーへクローズアウトを繰り返すことになるので、シュートは防げてもペネトレイトは防げない。
そこで4Qには優先順位をつけて守る工夫を加えた。
ニュービルはダブルチーム。
合田選手はスリーを徹底ケア。
他の選手はバッドショットなら打たせて構わない。
スラッシャーでない選手は抜かれて良く、むしろハイポストへ追い込んで挟み撃ちにする。
他にアイラや竹内など、本来ミドルシュートがある選手達にも直前にドリブルの乱れや選択肢の迷いが生じた状態でハイポストを打たせるように守った。
傍目には大阪がシュートを打てているように見えるのだが、これは富山が
”打たれている”
のではなく
"打たせている"のだ。
それは相手が自信をもって選んだシュートなのか?
不本意な形で打たされた不得意なシュートなのか?
中盤ではスリーを決めている合田選手に2本、3本と立て続けに許してしまったが、これは前者だ。
富山のような”打たせて取る”系のディフェンスはこれをいかに後者にできるかがポイントになる。
”打たれる”ではなく"打たせる"
これを遂行できたのが4Q、そして水戸と晴山だった。
気持ちよくシュートを打たせてもらえなかったニュービル、アイラはそれぞれFG4/12、FG3/13に留まっている。
2、オフェンスの"共通理解"
琉球戦では終盤にシュートを決めれず、勝ちきれないことが課題に挙がった。
それは"共通理解"によるものだったが富山は見事にこの点を改善した。
ここでは第3Q、残り3分のオフェンスを例に解説したい。
メンバーはマブンガ・KJ・水戸・ラモス・BJだ。
①
2-3ゾーン成功後、ラモスがボールプッシュし、BJのスクリーンを呼んでP&Rを行った。
②
ラモスのドライブとBJのダイブにタイミングを合わせ、水戸はコーナーからウイングへリフト。
松井はマブンガへダウンスクリーンしてマブンガのスリーをアシストする。
周りの水戸・松井・マブンガは仕掛けているが、ラモスとブライスがP&Rをするためのエリアを邪魔していないことがわかる。
尚且つ、それらの仕掛けが自分のマークが2人のP&Rに寄った場合にアウトサイドシュートを打てるカウンターになっている。
③
しかしブライスは綺麗に空かず、ラモスもリングへ直線的に切り裂くことができない。
大回りをした分、松井をマークするドンリーに寄られたので松井へパスアウトするがこれも決定的なノーマークにはならない。
ラモスとBJのP&Rは失敗に終わり、富山は次なる仕掛けが必要になった。
④
松井は一旦マブンガへボールを戻して仕切り直す。
そして自分がスクリナーになって再度P&Rのツーメンゲームを始める。
その間、ラモスはコーナーへ捌ける。
今度は2人のマブンガとKJのスペースを確保するためだ。
⑤
マブンガは松井のスクリーンを使ってペネトレイトする。
その時、水戸はコーナーへ降り、ラモスが入れ替わる形でウイングへ上がる。
松井は自分のマークがマブンガへダブルチームに行くのを見て外へ開き、ノーマークに。
マブンガも松井のこの意図を受け取り、キックアウト。
結果はパスがずれてバックコートバイオレーションとなり、惜しくも失敗に終わるのだが、
このポゼッションで見られた2回のツーメンゲームと他の3人の動きが連動していることがわかる。
「ラモスとBJが主役でペイントを使い、他はスリーで合わせる。」
「ダメだった。なら次。マブンガとKJならあのP&Rだ。」
「マブンガのアタックとKJのスリーが本命で、他は囮として動く。」
瞬間瞬間の作りたいオフェンスの"共通理解"
その瞬間の "主役" と "囮" の役割分担
その為のスペースの棲み分けと仕掛け方
前節の試合で琉球ができていて、富山ができなかった部分だ。
これによって富山は勝負どころの後半。
3Qでは20点、4Qでは21得点を挙げ、ターンオーバーも後半4回に留まるなどオフェンスのクオリティを維持して見せた。
3、相互作用し始める一つ一つの積み重ね
こうした共通理解があれば、ツーメンゲームを効果的に行える。
スペースが広くなり、オフボールのアクションもあるのでマブンガとラモスのクリエイトは決まるようになる。
そうして広いオフェンスのままシュートに至ればスミスとBJのオフェンスリバウンドも取りやすくなる。
それらの積み重ねによってついに成功したのがこのプレーだ。
このマブンガ→水戸のハンドオフは昨シーズンでもよく行っていたプレーだ。
しかし、今期はここまで計4回行い、いずれも失敗している。
(岩沢調べ。精度は保証できない。)
しかし、エリスがマブンガのクリエイトを警戒して簡単にスイッチできないこと。
3線のアイラもBJのオフェンスリバウンドを警戒してヘルプに出れないこと。
こういった積み重ねによって水戸選手の得意とするレーンが綺麗に空いた。
ここまでくれば富山は昨シーズン同様に多彩で強い富山になる。
初勝利に残る富山の難題
試合後のインタビューで浜口HCも触れていたが、この試合では小野・飴谷がDNP。阿部は2分、宇都は4分のプレーに留まっている。
初勝利を収めたものの、未だ全員が機能する形で使い切ることはできていないのである。
実はこれはプレシーズンゲームでの初勝利である渋谷戦でも同じことが言える。
あの時もスミス・マブンガ・ラモス・松井がDNPだった。
考えてみれば確かに今の富山のロスター全員を40分間に盛り込むのは難しいことだ。
上手く使えば誰もが東京戦のKJのようにゲームを支配する影響力を持てる。
しかし、活かし方にコツが要る選手が多い。
浜口HCのタスクを考えると、現状はDNPが4人くらいいた方が40分間の内容を形にする上では丁度いいのだろう。
(贅沢な悩みだが)
・BJオン1体制に宇都を加えたアップテンポなユニット
・プリンストンオフェンス
・宇都、飴谷、小野、阿部の使い方
持て余しているものが現時点でこれだけあり、組み合わせや相手次第ではこれからもっと増えるだろう。
初勝利とは言えまだここは通過点。
むしろ、”富山グラウジーズの40分間”を最高の作品に仕上げる浜口炎HCの戦いはここからである。
・本当に喜ぶのはまだ早いかもしれない
今節が念願の初勝利となったが、喜ぶのはまだ早い。
目先の1勝ということであれば、浜口HCは名古屋戦GAME2で不調のマブンガとスミスを下げて取りに行くこともできた。
しかし、結果などはそっちのけに主軸の2人を起用し、あくまで勝ち方を優先した。
そこそこの成績を残すならともかく、本気でCSを考えるのであれば勝利の先に連勝を見込める、再現性の高い勝利を挙げる必要があるからだ。
8連敗分の投資を回収した時、
「浜口HCの采配は正しかった」
「8連敗中の富山の取り組みは正しかった」
と言うことができる。
そういう意味で、本当に喜ぶのはまだ早いかもしれない。
散々だった信州戦以降。
富山に進歩の無かった週は一つもない。
内容にフォーカスし、こうして腐らずに取り組めるチームは強くなるものだ。
富山はこれから強くなるだろうし、勝ち星も先行していくだろう。
次は天皇杯。
3連戦で富山はどう変化していくのか。
引き続き富山の成長を見ていきたい。
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