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水戸選手のスタッツに残らない貢献をどうにかして数字で語る記事

今回はタイトル通り、
スタッツには残らないが間違いなくチームに貢献しているミスターグラウジーズこと水戸健史選手の貢献をどうにかして数字で語っていきたいと思う。

↑こちらの動画をまだ見ていない方はまずこちらからご視聴ください。


EFF(貢献度)という指標

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バスケットボールにはEFFという項目がある。
その算出式は以下の通りだ。

EFF=
(得点 + リバウンド + アシスト+ スチール + ブロック)
– (シュート失敗数 + フリースロー失敗数 + ターンオーバー)

この算出式からわかるようにEFFにはバスケットボールの主要スタッツのほとんどが含まれている。
このため、EFFはその選手のざっくりとした貢献度の目安として使われている。

しかし、これらのスタッツ項目は非常に限られた要素である。

例えば見方がチャンスメイクしたノーマークを見逃したり、
ボールコントロールを失ってショットクロックを浪費してしまったり、
自分のマークにシュートを決められるなど
これらのプレーを記録する項目は無く、故にEFF(貢献度)成績にも影響がない。

しかし、そういったプレーは確実に状況を悪くする。
なので私は個人的にこのEFFという指標を単独ではあまり重要視していない。
(逆に、味方に良いスクリーンを掛けたり、味方がプレーしやすいスペーシングを取るなど、記録に残らず状況を良くするプレーを数多くある)

それらはスタッツには表れないがしかし、得点が止まったり、失点が増えたりという数字にはある程度表れる。

故に選手の貢献度の評価には、+/-(得失点)という指標も含めた方がよいと私は考える。

↓ちなみにグラウジーズロスターの一試合平均EFF

スミス  28.1
マブンガ 27.7
ソロモン 22.7
宇都   12.4
前田     8.1
岡田     7.5
松脇     4.9
水戸     4.7
橋本     4.5
阿部     2.4
城宝     1.1
山口     1.0


+/-(得失点)という指標

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+/-(得失点)という指標をご存じだろうか?
これはその選手がコートにいるときの得失点を記録したものである。

例えばとある選手が20分出場し、その選手がコートにいた20分間にチームが45得点と35失点をした場合。
その選手の+/-(得失点)は+10となる。

下記リンクのNBAジャーナリストの記事によれば、この数字は+3で優秀。+6でオールスター選手とのこと。

参考:[丹羽政善コラム第13回]シェーン・バティエ(マイアミ・ヒート)――ペイサーズ戦のカギを握る伏兵

(2014年と少し前の、それもNBAについて語った記事の基準なので、現代のBリーグでどこまで参考にできるかはわからないが一つの基準として持っておくと見やすいと思う)


Bリーグの公式スタッツにこの+/-(得失点)の項目は無いが、ありがたいことにbasketballnavi.DB 様のスタッツデータ集にこの+/-が記録されている。

そして、この+/-(得失点)を1試合平均で見た富山のロスターがこちら。

マブンガ +6.59 (34分) 
スミス  +5.91 (29分)
前田   +4.52 (26分)
水戸   +4.15 (17分)
松脇   +4.26 (19分)
岡田   +3.53 (22分)
ソロモン +1.94 (22分)
宇都   +1.81 (23分)
橋本   +1.61 (15分)
城宝   +0.15 (7分)
山口   - 0.27 (6分)
阿部   - 1.25 (7分)

()内は平均出場時間

これの見方はマブンガ選手でいうと、"1試合に34分出場し、1人で6~7点分のプラスをチームにもたらしている"ということだ。マブンガ先生はやはりさすがである。


1分当たりの+/-にすると...

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しかし、これをさらに公平な数字にしたい。
というのも、プレー時間が長いほど大きく点差を開けるチャンスに恵まれるので、これで言うとマブンガ選手は有利という見方もできるからだ。

なので、この+/-を1分当たりの数字に直していく。
すると、順位はこのようになった。

水戸   +0.238 /分
松脇   +0.221 /分
スミス  +0.203 /分
マブンガ +0.192 /分
前田   +0.174 /分
岡田   +0.161 /分
橋本   +0.113 /分
ソロモン +0.090 /分
宇都   +0.077 /分
城宝   +0.021 /分
山口   - 0.043 /分
阿部   - 0.187 /分

ようやく水戸選手のスタッツに残らない貢献を数値化することができた。

プレータイムこそ多くないがしかし、彼がコート上にいる時は富山に最も多くのプラスをもたらしている。
1分当たりの得失点に関してはマブンガ選手をも凌ぐのが彼なのである。


+/- の注意点

水戸選手の魅力についてさらに踏み込んでいきたいが、その前に+/- の注意点について触れておきたい。

実はこれにも万能でない点があるのだ。
それは城宝選手、山口選手、阿部選手の数字に表れている。

城宝   +0.021 /分
山口   - 0.043 /分
阿部   - 0.187 /分

彼らは出場時間が水戸選手以上に限られており、さらに今シーズンに彼らがプレータイムを与えられた機会の多くは試合終盤の外国籍選手を下げた時間だ。
オン0で戦えば得失点が悪くなるのは当然のことであり、これは彼らの責任とは言い難い。

どんな状況で、誰と一緒にコート出ているか?
この数字にはそういった影響も出てしまうので、やはりこの指標も単独では正当に貢献度を評価できるとは限らないのである。


水戸選手の貢献を裏付けるもう1つの数字

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ではこの+0.238 /分という数字の他に、水戸選手の貢献を裏付けるもう1つの数字を提示したい。

それは平均ターンオーバーだ。

平均17分プレーする彼の一試合平均ターンオーバーは0.37である。
これはつまり彼がターンオーバーをするシーンは3試合に1回しか見られないという事である。

そしてなんとこの0.37という数字は一試合平均で13分以上プレーした選手の中で最も少ない数字なのだ。

彼がオフボールでペイント内に飛び込み、パスを受けてドリブル無しでシュートを決めるシーンは何度も目にしていると思う。
通常このプレーはパスカット、被ブロック、パスミスやキャッチミスといったターンオーバーのリスクを伴うが、これを正確に成功させているのが彼なのである。

これは彼のオフボールの適切な判断と動きで味方のアシストを量産し、チームに貢献していることの裏付けであると私は考える。


例えば下の動画のプレー。
多嶋選手は外側に偏ったディナイをしており、水戸選手はいつでもバックドアカットで裏を取れる状況だ。

しかし、松脇、城宝らが先にペイント内へカットしているため、それらが完了してしっかり自分の道が開けるのを待っている。
さらにそれまでの間、多嶋選手にバックドアカットを勘付かれないようにスクリーンのサインをするなどで時間を稼いでいる。

水戸選手のこういったプレーはチームの状況を良くしていく。
相手のローテーションDFを崩すことや、味方の1on1を助けることに繋がり、それらの好影響はただの2点に留まらない。

1on1野郎軍団の富山を影で支える彼の貢献は、"+/-(1分当たり)""平均ターンオーバー" に確かに残っていた。
(仮に "アシストパスからシュートを決めた回数" のデータがあれば、少なくともアウトサイドの選手内ではリーグ1位であるように思う)

仕掛けるときは正確に。
パスが通った時には既に相手を仕留めている。
それはまるで忍者のよう。

これが水戸健史の魅力と言えるだろう。


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岩沢マサフミ
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