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ヨーロッパ旅行記3〜プラハ到着〜


1カ国目のチェコ。
プラハと聞いて頭に浮かぶのは、プラハの春と綺麗な街並みであった。先輩もプラハはすごくよかったと言っていた。
駅を出て街並みを見ながら今日泊まるアパートメントの鍵を受け取るため指定されたホステルを目指す。この時もう19時半を過ぎていた。とりあえず早くアパートメントに行ってシャワーを浴びて一息つきたい。マップを見ながら歩いていく。
街並みを見ながら気づいたことがあった。見たことのない文字で溢れている。チェコは英語なんかとは全然違うタイプの文字を使うのだ。ドイツ語は基本的に英語と同じ文字を使う。文字が同じであれば、発音できなくても知らない単語でもなんとなく意味が分かったりする。ただ、文字が違うとお手上げだ。英語と同じ文字や、あるいは漢字などが書いてあれば助かるのだが。最悪ギリシア文字でもいい。チェコ語を街で見かけるたびに、古代ギリシア語を履修し始めた頃に感じた、文字を覚えるというのはここまで大変なことなのかということを思い出す。

だが文字が読めなくても僕にはマップアプリがある。住所を目的地にコピペして案内開始を押せば向かうべき道が示されている。読み方すら知らない建物に向かうことができる。素晴らしい世の中だ。
他にチェコについて知っていたのは、チェコの通貨はユーロではないということだった。ヨーロッパの国すべてでユーロが使えると思っている人もいるがそうではない。いくつかの国では違う通貨が使われている。EUに加盟している国でも例外はある。
通貨が違うというのもなかなか困る問題だった。僕はユーロと円しか持っていない。1泊2日しかいないチェコのために、換金するのはめんどくさい。ドイツに来てから換金したことはなかったし、ATMでの換金方法を調べる際、ほぼすべてのサイトでカードが出てこなくなる可能性があると書かれていたから怖くて換金なんてできたもんじゃない。クレカを持っていたので換金はしないことにした。それに今回の旅は貧乏旅だ。極力お金は使わないようにする。
僕がこの時知っていたチェコについての情報はこのくらいだった。前日にネットで一応チェコについて調べたが、ユーロが使えないことくらいしか覚えていなかった。

不安や期待を胸に見ず知らずの街を1人で歩く。先輩も言っていた通り、街並みはとても綺麗だ。ドイツとは全然違う街並みである。隣の国なのにここまで雰囲気が変わるものなのかと感心しながらホステルを目指す。
ようやくマップが到着を知らせる。
だが、それらしい建物が見つからない。近くにはビルが横並びに建っているだけだ。とりあえずブッキングを開き、住所を確認し直す。正しい。だがいくら探してもホステルのような建物はない。だいたい僕はホステルに泊まったことはなかった。しかし、さすがに看板があったり、受付が目に見えるところにあるだろうと考えていた。
だけどいくら探してもそれらしい建物はない。ここで僕は考えた。もしかしたら、アパートメントに向かえばもう鍵は開けといてくれているかもしれない。ここにいてもまったく分からないしとりあえず向かうしかない。
目的地にアパートメントの住所を入れ直す。とりあえず歩いて向かう。夏場に6時間夜行バスに揺られ、朝6時から1日京都の寺巡りをした僕からしたら10㎞以内は徒歩圏内だった。それに僕はプラハの交通機関の乗り方を知らないし、そもそもプラハで使えるお金を持っていない。歩くしかない。

けれど、ここは日本でない。言葉も道も分からないし、話し相手はいない。もしバックパックを背負った若いアジア人に話しかけてくる人間がいたら、それは9割方善人とは言えない人だろう。ヨーロッパで向こうから話してくる人間がいたら基本は無視だ。
話しかけてこなくても注意しなければならないことがある。それはスリだ。いつ盗られるか分かったもんじゃない。明らかに若い旅行者だと分かる僕はそんな人間たちの格好の相手だった。
1人で知らない道を注意しながら歩くことはなかなか精神的にくるものがある。なるべくこの辺りに慣れていないと諭されないようにマップを見る回数もできるだけ減らす。

そして、アパートメントの住所に着いた。しかし、最悪なことにこちらでもすぐに目的の建物が見つからなかった。そこにあったのはレンガ作りの外からはなんの建物か分からない建物ばかりなのだ。近くに綺麗なホテルがあった。もうそっちに泊まってしまおうかと思ったが、簡単に諦めてはダメだ。近くにあった1階がガラス張りの建物内におじさんがいたから外からノックしてみる。怪訝そうな顔をしていたが開けてくれた。英語でこのアパートメントはどこにあるのか聞く。そこだみたいなことを言われて終わった気がする。連れてって教えてくれよとか思ったが、礼を伝え外に出る。
困ったものだ。だがもう人に聞くしかない。人は追い詰められた時に力が発揮されるんだと信じ声をかける相手を探す。そこは両サイドを建物に囲まれている薄暗い道だったので人もあまりいない。売人とかじゃないといいな〜とか思いながら、とても優しそうには見えない男の人に声をかける。「excuse me」。先ほどのおじさんに聞いたのと同じように、この住所に書いてあるところに行きたいのだがと告げる。その時、1台の車が僕らがいたところに横付けしてきた。やべえ、連れてかれる。だがその心配はすぐに消えた。中からとても綺麗な女の人が出てきて、僕が話しかけた男の人とキスをする。その男の人のパートナーだったのだ。彼はそこで待ち合わせをしていたのだ。
彼らはとても優しかった。彼は、僕はチェコ語が話せないんだと言う。現地の人ではなかったのだとそこで初めて知る。だけど、彼女がチェコ語を話せるんだと彼は言う。最高な展開だ。彼女は私が電話で話してあげるわと言う。僕は、ホステルの電話番号を伝え彼女が話を始める。やはり、先に鍵を受け取らないといけないとのことで僕のマップアプリの目的地に住所を打ち込んでくれる。電話を切ったあと、ここに向かえばいいよと彼女はスマホを差し出してくれる。なんという優しさだろうか。今noteで開催されている優しさグランプリで優勝できるくらいの優しさである。
僕は2人に心からのお礼を言う。2人での貴重なデート時間を、見知らぬ国で迷子になっている日本人のために使ってくれたのだ。最初は怖かった彼も笑顔で彼女も英語もチェコ語も使いこなす美女で本当にナイスカップルだった。
心からの礼を伝えたが、英語でしか礼が言えない僕は少し申し訳ない気持ちだった。せめて、現地でありがとうはどう言うのかくらいは調べてから行こうとこの時思った。

追い込まれるとやはり人間は強い。僕はこの時慣れない英語で誰にでも話せるくらいの精神状態になっていた。たぶんあの状態の中東京でキャッチをやらせれば1番客を捕まえていただろう。なんせ日本で日本語で話せるのだから。

とりあえず次は、目的地に書かれたところへ向かえばいい。
心身共に疲れた身体に鞭を打ち歩みを進める。

4へ続く。


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