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若者に刺さる「持ち家は負債」論の罠


持ち家は負債

という考え方が現代の若者に刺さっています。

この考え方を世に広めたのは

ロバートキヨサキ氏の書いた「金持ち父さん貧乏父さん」です。

私も若い頃に読んでとても感銘を受けた本です。

内容は

スモールビジネスで起業し、稼いだお金は節約して、そのお金を不動産投資することで金持ちになれる

というシンプルなものです。

しかし、なぜか多くの読者は

  • 不動産は負債

  • お金持ちになるには投資をする必要がある

という解釈をしてしまっているようです。

SNSによるインフルエンサーの影響なのか、個人の読解力の問題なのか、本書の書き方に問題があるのかはわかりませんが

不動産は負債になるので買ってはいけない

というメッセージが強調されて伝わってしまっています。

そして、このメッセージを信じている日本の若者(中年も)は多いです。

しかし、実際の日本の不動産価格データの推移を見てみると

2013年頃から現在2024年までの約10年間、ずっと不動産価格は上昇を続けています

不動産価格指数 via 国土交通省

特にマンションの価格上昇はすさまじく、10年で約2倍の価格になっています。

これは日経平均が、2013年頃から現在2024年の約10年間で3倍になったことと比較しても遜色ありません。

生活するうえで必ず家賃が発生することを考慮すると、不動産はこの10年、株式より良い投資対象だったと言えるでしょう。

さらに住宅は

自己資本を使わないで銀行からお金を借りて購入する

こともできます。

住宅ローンを使うと、事業でお金を借りるのとは比較にならない低金利で、お金を借りることができます。

なので、

株式・債権等の投資から得られる金額 > 家賃

の状態で住宅を購入している人も多いはずです。

加えて、住宅ローン減税、リフォーム時には国からの補助金を利用することもできます。

しかし、これだけの優遇措置を国から与えられていながらも

不動産は負債だから賃貸

という選択をしている人は多いです。

しかし、

独身者、転勤のある会社に勤めている人、高齢者以外は、不動産を購入した方がお得

です。

なぜなら

持ち家より賃貸が優位なのはデフレ期だけ

だからです。

インフレ局面では

引っ越すたびに家賃が上がります。(田舎を除く)

こう言うと

「引っ越さなければいい」

という人がいますが

そもそも同じ場所に住み続けるのであれば購入した方がお得

です。

これらのことは、不動産を少し学習していれば簡単にわかることです

では、なぜここまで

持ち家は負債

という考えを支持して、賃貸を選んでしまう人が多いのでしょうか

今回はこのテーマについて分析、考察していきます。

投資系インフルエンサーの影響


持ち家は負債という考えが浸透しているのは

投資系インフルエンサーの影響

があります。

彼らの多くは

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)等の分散された投資信託やETFに長期投資することを推奨し、住宅は賃貸を推奨

する傾向が見られます。

確かにeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は素晴らしい投資商品です。私も新NISAではeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を購入しています。

しかし、住宅に賃貸を推奨するのは合理的だとは思えません。

彼らの動画を見て思うのは

不動産投資の経験がないのに、雰囲気で不動産の購入は危険と思い込んでいる

ということです。

確かに不動産には、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のような、知識ゼロで他人の真似をするだけでソコソコのリターンを狙える投資商品は存在しません。

不動産についての学習が必須です。

しかし、不動産は一般的にミドルリスクミドルリターンと言われているように、それほど危険な投資商品ではありません。

不動産がリスクになってしまうのは

  • ワンルームマンションに投資する

  • 利便性の悪い場所に新築一戸建ての注文住宅を購入する

  • 収入や資産に見合わない高額な住宅ローンを組む

ような場合です。

逆に言うと、上記の点さえ気をつけておけば、不動産の購入はそこまで危険ではありません。

しかし、それでも

不動産を買うのは怖い

という人は多いと思います。

不動産は高額なので、そう思ってしまうのも無理はないと思います。

また、多くの人がこのような考えになってしまうのは

直近30年の日本社会にも原因があります。

次は直近30年間の日本社会を振り返りましょう。

インフレの経験がない


不動産は負債になる

という言葉が多くの人に受け入れられてしまうのは

日本は30年間ずっとデフレだった

ということも大きな一因です。

つまり

不動産を購入するより現金を持っていた方が安心だし安全

な社会だったということです。

資産を持っていても価値が下がっていくのだから、現金を持っていた方がいいのは当たり前です。

しかし、このようなマインドは、2024年以降は変えていかないといけません。

なぜなら

日本のデフレは2022年に終わった

からです。

今後の日本は、人手不足と資源高によるインフレが進行していきます。

その兆候は、建設資材物価の推移にも現れています。

建設資材物価指数(東京:2015年平均=100) via 建設物価調査会

インフレ目標は国策で定められているので、この傾向は今後も続いていきます。

なので

現金を持っているより不動産を買っておいた方が資産価値が維持されるし安心

な社会に変わっていきます。

おそらく日本政府は、海外と同じような社会構造にしていきたいのでしょう。

また、人口動態を考えると、今後デフレに戻る可能性は限りなく低いです。

なので、我々はインフレ社会に合わせた思考に変えていく必要があります。

注意しなければならないのは

現在の社会で発言力のある人は、デフレ社会で成功してきた人がほとんど

ということです。

つまり

デフレ社会における成功方法を経験則から話しているので、インフレ社会だと役に立たない可能性が高い

ということです。

例えば

昔のインフレ時代には、衣料品はデパートなどで販売されている高価なブランド品が売れていましたが、デフレの時代ではユニクロなどの安価なファストファッションが人気となりました。

これはどちらが良いとか悪いとかでなく、

現金の価値が上昇して物の価値が下がるデフレ局面なら、安価な服を買って手元に現金を残したほうがいいし

現金の価値が目減りするインフレ局面なら、高価で良い素材の服を長く利用したほうが安上がりになる

という経済的合理性に過ぎません。

不動産も同じで、デフレ局面で不動産を買っても、負債になる可能性のほうが高いです。

なぜなら給料や物価が下がっていく社会構造だからです。

しかし、今後はインフレになるので逆になります。

給料や物価や不動産価格があがっていきます。

日本では一度賃貸契約を結んで入居すると家賃はあがりませんが、今後はあがります。

一般的にインフレになると、遅れて家賃も上昇します。

実際、都心は賃料があがってきています。

賃貸についてきちんと学習している人は

家賃の値上げは拒否することができる

と反論するでしょうが、今後、拒否は厳しくなるでしょう。

なぜなら、

近年の経済状況に伴い、物価が上昇し維持費用が高くなった場合や、不動産市場での家賃相場が上がっていることを証明できる場合は、家賃値上げの正当な理由になる

からです。

現在家賃の上昇は東京都心部だけで、まだ表面化してきていませんが、今後は日本中に浸透し、住宅に対する考え方を変えることになるはずです。

移動制限の不安


最後は

移動制限の不安

です。

私が初めて不動産を購入する時に最も不安だったのは

不動産は流動性が低いので、引っ越し等の移動がしにくくなる

ことでした。

しかし、流行り病が流行した結果

仕事がリモートワークになったので、この不安は杞憂に終わりました。

また、現代は都市圏の不動産であれば、比較的短期間で売却できます。

これらのことは、ここ数年のインターネットの進化によって可能となりました。

具体的には、

slackやzoomなどで仕事のコミュニケーションを取れるし、sumoなどのwebサイトは誰もが売買情報にアクセスすることを可能にし、Lineを使って不動産屋と朝から晩まで非同期でのコミュニケーションが可能です。

このように、インターネットの進化は、これまでより確実に不動産に流動性をもたらしています。

そしてこれから先の未来は、さらなるテクノロジーの発展によって不動産はもっと流動性が高くなるはずです。

このようなテクノロジーの進化については

昭和のオッサン「テクノ・オプティミスト・マニフェスト」を書く

という記事でも触れているので、よかったら是非目を通して見てください。

他に、不動産の流動性を高めるためには

立地を考えて購入する

ことが重要です。

率直に言うと

不動産の価値は、9割が立地で決まります。

利便性の低い郊外の新築一戸建ての注文住宅が負債になってしまうのは、立地条件が悪くて売りたい時に売れない

からです。

都市圏だと高くて買えない

という人もいるでしょう。

そういう人は、郊外でもウワモノの価格を抑えた住宅を買えば問題ありません。

やってはいけないことは

価値が目減りしない土地ではなく、価値の目減りするウワモノにお金をかけすぎる

ことです。

そういった行動は、ブランド物を買う行為と変わりません。

たちが悪いのは

こういった人に限って「住宅は資産」といっているケースが多いことです。

残念ながらこのような住宅は負債です。

正しい不動産の買い方は

価値があがる土地にお金をかけて、価値が目減りするウワモノにはあまりお金をかけない

ことです。

このようにすれば、不動産はそこそこ流動性の高い資産として保持することができます。

まとめ


今回は

若者に刺さる「持ち家は負債」論の罠

についてお話しました。

持ち家は負債という考えが合理的だと思ってしまう理由は、今回説明したこと以外にも色々とあると思います。

しかし、「持ち家は負債」論が刺さる一番の理由は

社会を支えるメインの世代の日本人の多くにインフレの経験がない

ことだと思います。

30年間、日本では給料がろくにあがらず、結果として物価も家賃もあがりませんでした。

多くのインフルエンサーが言う通り

持ち家は負債

は感覚的にも正しかったのです。

しかし、2024年の今は違います。

2022年後半から日本社会はインフレに入りました。

今後日本がデフレに戻ることは、生産人口が減少する社会構造上的にも考えにくいです。(大増税によるデフレはありえる)

過去のデータを持ち出して

持ち家は負債だから賃貸が良い

といっているインフルエンサーの意見を丸呑みにしてはいけません。

その意見は、過去30年の日本の社会構造では正しかったかもしれませんが、今後も正しい意見であり続ける可能性は低いです。

例えば有名なお金のインフルエンサーは

「アメリカの住宅価格はあがるけど、日本の住宅価格はあがらないから買わないほうがいい」

と昔の動画内で言ってました。

確かに当時(2020年頃)の状況では、この意見は正しかったと思います。

しかし、今(2024年)は違います。

このままインフレが定着すれば、10年後には

持ち家より賃貸が良い

と言っている人は少数派になっているでしょう。

インフレ局面で持ち家より賃貸が良いのは、家賃を経費に入れられる経営者くらいです。

不動産は高額だし、株式のように誰もが買いたい商品を買えるわけではありません。

しかしだからといって

「持ち家は負債」

と不動産の勉強から逃げていると、インフレの時代では損をしてしまいます。

現代は時代の流れが早く、過去のBestが今後もBestであり続ける時代ではありません。

情報収集やデータ分析を人任せにせず、自分で考えるようにしていきましょう。

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