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主機高温冷却清水|舶用ディーゼルエンジンの冷却水とは。

冷却水はディーゼルエンジンのシリンダライナや各クーラーを冷やす水です。

シリンダライナではライナ周囲を冷却水が流れることにより燃料燃焼によって発生した熱を吸収、冷却します。クーラーではすでに各部の熱を吸収して来た潤滑油や給気に使用する過給機通過後の空気を冷却します。

クーラーとは”熱交換器”のことで筒の中に銅管を無数に設置して筒と銅管に別々の流体を流すシェルアンドチューブ式やプレートを隣り合わせに数十枚重ねて交互に別々の流体を流すプレート式があります。

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冷却水にはいくつか種類があり、まず清水(水道水)と海水に分かれます。さらに清水は高温冷却清水と低温冷却清水に分かれ、ディーゼルエンジンのシリンダライナ周辺を冷やすのが高温冷却清水(60℃以上)。潤滑油クーラー、インタークーラー、空気圧縮機等を冷やすのが低温冷却清水(31〜42℃)となります。そしてこれらの清水を冷やすのが海水です。海水温度は季節によって変化し東京湾で10〜30℃です。

冷やす順番は海水→低温冷却清水→高温冷却清水と言ったところです。海水と清水、清水と冷却対象は前述のクーラーを使用するため混ざり合うことはありません。一方、低温冷却清水と高温冷却清水の清水同士は同じ系統になっていて、冷やした水と温まった水を混ぜ合わせて設定された温度に調整する家庭のシャワーと同じ原理です。三方弁というものを使用しています。

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温度調整には三方弁をどのように作動させるのか違いがあり、手動式と自動式があります。陸上のシャワーは一定温度の温水と冷水を元に設定温度を目指すので手動式で十分ですが、船ではエンジン負荷によって変化する温水と海水温度によって変化する冷水を使用して設定温度を目指すので常に一定温度を保つ事が難しく、随時対応可能な自動式が多く採用されています。

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1箇所で集中的に清水を海水で冷却し、その他全ての冷却を清水で賄う方式をセントラルクーリングシステムと言います。

セントラルクーリングシステムではない船のエンジンは低温系統に海水を使用しています。設備投資が少ない代わりに海水がクーラーや配管を早く腐食させたり、海洋生物による詰まりを発生させるなどのデメリットもあります。船の大きさにより異なる場合もあります。

では、セントラルクーリングシステムも海水も無い車のエンジンは何で冷却水を冷やしているのでしょう?

そうです、正解は空気です。空気で冷却水を冷やしています。ファンでフィン付きのラジエーターを流れる冷却水を冷やし、エンジンに循環しています。ファンベルトがいかに大切かが分かりますね。

高温冷却清水と聞くとなんだか難しく聞こえるかもしれませんが、車で言ういわゆるクーラントを混ぜて入れるあの水の事です。

高温冷却清水の温度調整はエンジン出口温度で行います。エンジンに入る温度では無く出口で制御する事により、エンジン内で異常加熱や冷却不良があったときにすぐにわかります。

高温冷却清水、エンジン出口温度は80℃から90℃が適当です。95℃になると警報が設定されていて自動減速や自動停止するエンジンが殆どです。

セントラルクーリングシステムで使用している冷却清水には添加剤を入れています。私が乗船している船ではポリクリンを使用していて、8,700ppm、pH8前後に調整管理しています。

海水冷却式の船のエンジンでは、クーラントを使用します。濃度が濃くなれば凍結し辛くなりますので運航海域によって調整しましょう。極寒地に行かないのであればせいぜい30%以下といったところでしょうか。東京湾では10%で十分です。入れすぎると冷却効率が下がりますので、程よく添加しましょう。

以上、船のディーゼルエンジンの冷却水でした。

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