見出し画像

【大惨事!?】シリンダライナの抜き出し整備を10年しないとどうなる…?

ある朝、冷却清水膨張タンクの水位が急激に減りました。

機関室内は冷却清水添加剤で使用しているポリクリンの匂いが充満。

直ぐに右舷主機からの漏水だとわかりました。

場所はシリンダヘッドとブロックの隙間でエンジンの傾斜に沿って4番シリンダから1番シリンダまで冷却清水が溜まっていました。

実はこの場所、1年前のドック出渠時に若干漏水があった場所でした。運転中の熱やポリクリンによって直ぐに止まりましたので何とか1年乗り越えて欲しいところでしたが、まさかの入渠10日前に再発してしまいました。

シリンダヘッドとブロックの間という事は漏水場所はヘッド冷却用の清水連絡菅かジャケット冷却清水が流れるライナのどちらかが濃厚です。

幸い、・エアラン→異常なし・クランク室→漏水なし・高温低温清水圧力→異常なしでしたのでかろうじて使用可能でした。

が、高温清水ポンプが機付きのため、主機回転上昇に伴う高温清水圧力上昇により漏水が悪化したり、漏水シリンダの冷却不良を招いたり最悪の事態を避けるため入渠間近でしたが、緊急で解放整備を依頼しました。

周辺配管を取り外し、油圧でヘッドボルトを緩めてヘッドを吊り上げると漏水場所はライナだと判明しました。

↓ライナを抜き出します。

画像2

調べるとシリンダライナの抜き出しをしばらくしていないようで、なんと10年近く整備していない可能性が、、。

そりゃ漏れますよ。

Oリングはパリパリでリング溝には若干腐食を発生していました。長年整備していない事で高い代償を払う事になってしまいました。

長年放置するとこのような事になってしまいます。定期的に抜き出し整備していれば交換する必要のなかったライナもOリング溝の腐食が進めば交換になってしまいます。今回はまだ不幸中の幸いでしたが、酷くなれば焼きつきを起こしたり、冷却水が潤滑油サンプタンクに流れ込んだりと莫大な費用がかかる事になります。

画像2

という事で、エンジン始動時の各部点検は勿論ですが、シリンダヘッドとブロックの隙間もしっかり点検し、水、油、ガスの漏れがない事を入念に確認しましょう。

また、整備計画では必ず6年から5年の間に1回は整備を行いましょう。ライナ抜き出し整備は定期検査項目にあるので忘れる事は少ないかも知れませんが、本船のようにエンジン項目が検査対象外の船は気を付けましょう。

※4サイクルディーゼルエンジン1471kw(2,000ps)750min-1   2機2軸

おしまい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?