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承07 時給を上げないと、アルバイトは来ない?

◆北海道のニセコリゾートのアルバイトの時給が、東京を超えた!

先日、Xで「ニセコのバイト時給は東京超え」という記事に対して、人集めるためには、手っ取り早く、給料を上げることとが解決策だというポストを、数多く見ました。
金持ち外国人にも人気の、北海道のスキーリゾートとはいえ、確かに、「東京>>地方」という賃金相場が固まっている日本において、これまでの傾向とは異なる現象とは思いましたし、また、人手不足がそこまで、緊急性の高い問題となっているということの表れとも感じました。

◆その一方で

ここで、一つ気になったのが、時給だけで、人を集めることができるのか?それでいいのか?という疑問でした。
たとえば、東京ディズニーリゾートのキャストの時給を調べると、1060~1450円で、これは、東京都のバイト、パート、派遣平均時給1,438円に比べても、安いぐらいです。
それでも、やりたい人は多く、職種を限定しなくても、1.5~2倍と競争率は高く、憧れのアルバイトだといわれています。
 
とはいえ、ディズニーランドは特別とするならば、たとえば、有名な建築家の事務所のアルバイト、評判のレストランの下働き、政治家の秘書など、宝塚歌劇団もそうかもしれませんが、自分がやりたいことのための勉強と位置づけできるものも、比較的給料は安く、労働環境が悪くても、希望者が多い、人気の職場であったりします。また、人間関係や、居心地がいい職場も同様なことが言えるだろうと思います。

これらの職場は、「特別」、「特殊」と考えるべきでしょうか?
とするならば、どの職場も、「特別」、「特殊」を目指せばいいことではないでしょうか?

◆論点は2つ

この2つを考えあわせた時、私は、この問題では、以下の2つの論点について、考えてみようと思いました。
・給料アップで人手不足を解消できるか?
・人手不足に、仕事へのやりがいは効果があるか?
つまり、現実に照らすと、ニセコリゾートの人材不足は、時給の大幅アップで解消するのかということと、ニセコリゾートは、東京ディズニーランドのような職場にはなりえないのかということになるかと思います。

◆それぞれの職場に応募する人の立場で考えてみる

まず、ニセコリゾートのアルバイトに応募する人は、スキーが好き、北海道が好きという人もいるだろうと思いますが、今回の場合には、その時給の高さを、第一の要因として選ぶ人が多いと思います。そのお金は、厳しい生活のためという人もいれば、留学など何かやりたいことや、たとえば、車など買いたいもののためだろうかと思います。
とすると、ある程度まとまった金額を稼ぐことができれば、辞めてしまう可能性が高くなると思います。
 
一方、ディズニーランドに応募する人(、働いている人)については、おそらく、お金が主要因という人は少ないだろうと思います。考えられるのは、その、人から羨ましがられるステイタス、高倍率の採用された自負、単純にディズニーが好き、楽しい、将来就こうとするエンターテイメントの職場で生きてくる経験ができる、などのモチベーションを持っていることと想像します。

◆両者を比較し、その「メリット」、「デメリット」を考えてみる

そのような違いのある両者ですが、その「メリット」と、「デメリット」を考えてみたいと思います。
 
まず、時給を大幅に上げること、お金を働くモチベーションにすることの「メリット」は、他の求人と比較しての程度にもよりますが、おそらく、一定数の人は、すぐ応募してくるものと思います。これは、今、この時の、深刻な人手不足には、とても重要なことです。そして、募集数以上の応募が集まれば、より相応しい人を選ぶこともできると思います。
その一方で、先ほど述べたように、お金を必要としている人であれば、ある程度まとまったお金が貯まれば、やめることも考えられますし、他にもっと、時給が高い職場が現れれば、それに対応しないと、必要な人材から、やめてしまうことにもなりかねません。そういった、「デメリット」が考えられます。
一言でいうと、手っ取り早く採用できる反面、常に時給を上げ続けるか、採用活動をしていないと、人手不足に戻ってしまう可能性が高いと言えそうです。
 
次に、東京ディズニーランドのキャストのように、お金でなく、「やりがい」、「目的」に、働くモチベーションを置く場合の「メリット」は、楽しいとか、居心地がいいとか、勉強になるとか、自慢になるとかいった、モチベーションの要因がなくならない限り、雇ったスタッフは、時給に左右されずに、安定して、継続的に働いてくれる可能性が高いこと、つまり、費用的にも、採用活動においても、負担が小さくなるということが挙げられます。
そして、「デメリット」ですが、応募する側にとって、「やりがい」のある職場にする、あるいは、それを理解してもらうために、時間とノウハウ、労力が必要になり、簡単ではないということになると思います。
こちらは、体制の構築に時間と労力は掛かりますが、その体制が構築できれば、その後は、ランニングコストはかかりますが、比較的、負担は小さくてすむのではないかと思います。

◆この違いは、どこに?

モチベーションが、お金重視と、やりがい重視の違いはどこにあるのでしょうか?
 
お金重視の場合、求人する側も、応募する側も、手っ取り早く採用したい、手っ取り早くお金が欲しいという、今、この時の自分個人視点であるのに対し、やりがい重視の場合には、将来の自分、あるいは仲間との関係も考えての上で、空間的に、時間的に、お金重視の場合よりも、見ている視野、視界が広いように、私には感じられます。
これは、そのまま、これまでも書いてきた、「自分」の広さ、あるいは、「自分」と同等に考えられる広さの違いと言えるのではないでしょうか?
 
そして、とにかく、今、自分のことだけを考えた、短期、限定的な思考は、今の自分以外を「敵」と考え、「対立」、「競争」、「勝ち負け」の世界を呼びがちです。ニセコリゾートの場合でも、仮に、他社の求人の時給が上がれば、対抗して上げなくてはならず、人手不足が進むにつれ、どんどん上昇し、経営を圧迫し、最後は、ビジネスがなくなれば、求人(雇用)自体がなくなり、誰にとっても、「不幸」になります。
 
一方、「やりがい」重視の場合には、「やりがい」を高めるために、採用側が工夫、努力し、労働者側も、自分たちの、その「やりがい」を維持するために、協働する必要があります。その結果、いい仕事が、高い価値を生み、利用者、顧客にとっても、満足できる結果につながる、いわば、すべての人にとっての、「幸せ」を呼ぶことになります。これが、私が創りたい「やさしい世界」の一つだと思っています。

◆採用する側も、働く側にも、「共感」が必要

ここまでの話から、私は、採用する側は、応募する側、働く側、あるいは、そのサービス、商品の利用者に、もう一方の応募する側、働く側も、一緒に働く仲間や、利用者の立場に立って考え、関係する人すべてに寄り添い、それらの人にとって、いいと思うことを実践して、そこに、皆にとっていい環境を創り出すことが大切なのだと思います。
つまり、「共感」を通して、お互いを理解し、競争・対立の関係ではなく、協働の関係を打ち立てれば、そこに「やさしい世界」が創られ、自分と周囲の皆の「幸せ」につながるものと、私は考えたいと思います。そして、それが、私の「やさしい世界」を創りたいという思いでもあるのです。

◆まとめ

・人手不足に、時給アップで対応するのは、目先の対策としかならない。
・仕事に、「やりがい」を提供するには、時間と労力がかかるが、長期的な効果が望める。
・採用する側とされる側がお互いに、また、その同僚、利用者にとって最善のことを考え合い、実践することができれば、「やりがい」に溢れる職場は作ることができる。
・それは、「やさしい世界」である。

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