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偶然と 縁が織り成す ひとり旅②

(最初に①をお読みください)

別府へ。

ワールドカップでクタクタになった体を休めて翌日。

別府に行ってみた。言わずと知れた温泉の街。初めての大分、初めての別府。興奮冷めやらん。

別府には「地獄めぐり」という、街を代表するような観光業がある。温泉のもとである熱湯や熱泥が湧きでており、まさに「地獄」とも言えることから名のついた街おこしである(詳細はこちら(http://www.beppu-jigoku.com/)から)。

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7か所あるうちの3つを見終えて、次の地獄を目指していたときのこと。

タクシーの運転手さんが、タクシーから降りるまでして、ボクに声をかけてきた。

「どのくらいまわった?」

「えーっと3つかな」

「あと4つか。うち2つは3km離れているから、どうだい?」

どうだい、というのは「タクシーに乗っていかないか?」ということ。まぁ観光の街だし、そこにひとり旅の男がウロウロしているなら、「客や!」とならない方がおかしい。親切よりも営業。最初に疑わしい思念が出てきてしまうということは、ずいぶんボクも汚れたもんだな。。

ちょっと考えてOKを出した。断って全部廻れなくなるメリットなんて無かったからだ。多少値が張るにしても、運転手さんの持っている知識をどれだけゲットできるかで、乗っている時間はずいぶんと価値あるものになるはず、と思ったから。ずいぶんボクも計算高くなったもんだな。

タクシーの中にて

タクシーの中ではいろんなことを聞いた。

・7つの地獄のうち、天然のは3つしかないこと

・バスは1時間に1本しかないらしく、非常に不便

・大分は坂が多いから、歩いて行くのは厳しいこと

「まずは、龍巻地獄からや」

まるで、家族を連れていくお父さんかのように、張り切って私を連れていった。なんでだろう??

そして、目的地に着いたら、「早く行け!」と(怒っているわけじゃない)。

なんだなんだ? 言われるままに小走りで行ってみた。そうしたら…。

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間欠泉が噴出していた。ちょうど出始めだったらしい。この噴出は40分くらいに1回しかないようで、タイミングが悪いと、ここで相当の時間を食ってしまう。

タクシーに戻った。間欠泉のすごさをボクなりに運転手さんに話してみた。

「だろぉ!」

まるで母に褒められる少年かのように、笑顔になった。

(この人は…)

そのあとも、地獄を巡った。「最後に海地獄に行こう。あそこで締めた方がいい思い出が残る」運転手さんは自信があるのだろう自分のプランを得意げに話した。

それは言ったとおりだった。海地獄は、

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確かにすごかった。これが自然か!と驚かされた。是非、みなさんに行ってもらいたい。

戻ってボクが感想を述べているときは、さっきと同じ顔だ。「だろぉ!」というアレである。

地獄をすべて見終えた。

運転手さんの人柄

その後は、明礬温泉に連れて行ってもらい、さらに地獄蒸しプリンも食べた。一人旅には似つかわしくないくらいの観光になった。

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最後に、別府駅まで送ってもらう時に、運転手さんは語った。

「楽しかったか?」

「えぇ、もちろん。たぶん、一人だったらこんなに楽しめなかったでしょうから。」

「お客さんにはな、楽しんでほしいんだわ。初めて大分に来たって言っただろう? 「あぁ、このお客さんにはいい思い出をつくってもらいたい」って思ったんだ。」

予感はした。もしかしたら、本当に真心で動いてくれている人なのではないかと。それは当たりだった。

ボクにいいものを見せようとして必死に車を走らせてくれたこと。

ボクが楽しんでいる間、メーターを止めていてくれていたこと。

ボクがプリンを食べたいと言ったから、事前に「閉めないで」とお店に連絡をしてくれていたこと。

温泉の入り口が坂だったので、タクシーで急坂を登ってくれたこと

なぜ、ここまでしてくれるのだろう? という不思議さもあった。その答えは「いい思い出を残してほしい」という純粋な親切心だった。少年のような笑顔はそれを物語っていた。

別府駅で別れる際、名刺をもらった。

「お抱え運転手がいるんだ、と大きなことを友人に言えばいいさ。大分に来たときはずっとまわってやるよ」

笑顔は最後まで少年だった。もしかしたら、もっともっと薄まっていたかもしれない今回の旅を彩ってくれたのは、まぎれもない運転手さんだった。

ボクが一人じゃなかったら、

ボクが車で来ていたら、

ボクがあの時の誘いを断っていたら、

こんな思い出は残せなかったかもしれない。すべては偶然だった。良き人との縁がつくりだした偶然だった。

ひとり旅はやめられない

ひとり旅にはコレがある。コレだからひとり旅はやめられない。

偶然なんて予想できない。偶然に期待も出来ない。縁だって、どこにあるかはわからない。もしかしたら、自分の行動も偶然を引き起こす一端を担っているのなら、自分の一挙手一投足に自信を持ってもいいのかもしれない。

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ありがとう運転手さん。

来週は静岡に飛ぶ。

ないかな ないよな きっとね いないよな 

そんな偶然に、相変わらず期待してしまうボクがいるのです。