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グローバル化を進める会社での、英語ができない役員の葛藤とその転換点

マネーフォワード取締役 グループ執行役員 ビジネスカンパニー COOの竹田です。

当社は、2024年度末にエンジニア組織の英語化を完了させる計画であることを、取締役CTOの中出がエンジニアブログで宣言しています。

今回は、マネーフォワードが英語化、グローバル化を進める中での、私個人の赤裸々な思いの変化について書いてきたいと思います。


はじめに

はじめにお伝えしますが、私は英語がとても苦手です。むしろ、英語ができないことにコンプレックスを持っていました。

これまでのキャリアの中でも、英語に向き合わなければならない波は何回か押し寄せてきていました。でも、その都度、波打ち際でじっとしてきました。みんなが英語でコミュニケーションしている会議で、一人だけついて行けずに惨めな思いをしたこともあります。日本語で話しかけてきた外国人の方に、動揺して片言の英語で回答して笑われたこともあります。そんなことを経験するたびに英語学習にチャレンジしようとしたことは何度もあります。しかし、まったく上達しないのです。

しかし、今回という今回はそうはいきません。マネーフォワードでのエンジニア組織の英語化、グローバル化はミッション実現のためには必然だからです。そうして始まったグローバル化の第一歩である英語化では、一つの基準としてTOEIC700点以上を取ることが明示されました。テストの点数で測られるということも相まって私の英語コンプレックスは頂点に達していました。

マネーフォワードにおける、英語化、グローバル化の必然性

ここで、マネーフォワードの状況を少しご案内します。マネーフォワードでは現在、55を超えるプロダクトを提供しています。

これらたくさんのプロダクトは、これから先もずっとさまざまな改善や機能の強化や追加をし続けていく必要があります。そして、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」というビジョンの達成に向けて、これからもさらに新たなプロダクトをリリースしていきます。

その実現のためには、開発チームはもっと大きくなっていかなければなりません。仲間をたくさん集めなければなりません。その中で私たちが選んだ道が、開発組織のグローバル化です。日本だけではなく、世界中のエンジニアメンバーが活躍できる組織になる。これは必然なのです。

ですからもちろん、私もこの方針に賛成しました。

ちなみに、この英語化の取り組みはエンジニア組織に限定する形ではじまっています。私は役割上、エンジニアメンバーと直接仕事をする機会は少ないこともあり、そういう意味では今すぐ英語を扱えないと仕事にならない、というわけではありませんでした。しかし、だからと言って自分は対象外だと、波打ち際に退避するわけにはいきません。全社の方針として打ち出し、大きなチャレンジをしているわけです。仮にも取締役という立場でありながら、逃げたりごまかしてしまったら、エンジニアのみなさんとちゃんと向き合えなくなってしまうと思いました。それに実際問題、英語を必要とするシーンも着実に増えてきていました。

しかし頭ではわかっているけれど、素直にさせてくれないのがコンプレックスです。エンジニア組織の英語化がスタートした当初の頃の私は「職種に関わらず、役員は英語必須だよねー」「役員はTOEIC700点くらい1年以内に達成でしょ」という軽いやりとりの言葉を耳にするたびに、勝手にくさっていました。時には、そんな言葉に、自分のことや自分の仕事を否定されているような気持ちになるほど、ダークサイドに堕ちたりしていました。めんどくさいヤツです(笑)。

進む英語化、増えるグローバルメンバー、本気の役員

そんな私のダークサイド状態などにはもちろんお構いなく、グローバルメンバーはどんどん仲間に加わってくれています。

2018年8月にマネーフォワードグループの日本国外初の法人として、マネーフォワードベトナム(Money Forward Vietnam Co., Ltd.)を設立、翌年1月にはホーチミンに、2022年4月にはハノイにも拠点を開設しました。

そして今、ベトナムに続く2ヶ国目の海外拠点として、インドの開発拠点の準備を本気で進めています。取締役CTOの中出は、今インドにいます。本気です。

日本で働くエンジニアも、日本語力を不問とする採用を2021年から本格的に開始し、現在では30を超える国と地域出身メンバーが当社グループで活躍しています。(Talent Forward Strategy 2024より)

結果として、既に当社グループのエンジニア組織は、既に4割以上がNon-Japaneseのメンバーで構成されています。

葛藤と転換点

2022年、夏の暑さもだいぶ穏やかになって過ごしやすくなってきた頃だったと思います。そろそろ明確にしないとダメだと強く思いました。自分が進むべき道は何かを決めよう。選択肢は3つだと。

  1. 完全に開き直って英語に向き合わずに平気なマインドにチェンジする

  2. 職を辞す

  3. 腹を括って英語の勉強に取り組む

素直に3番選べよと思われると思いますが、コンプレックスというのはこういうことを本気で悩ませるものなのです。モヤモヤしたり、憤ったり、凹んだりしながら、結局それからさらに2ヶ月くらい悩んだ末に、無事に3番を選んだのでした。

そうして英語の勉強をはじめた私でしたが、当然すぐ結果が出るわけでもありませんし、おもしろくもありません。翻訳システムの進化の方が自分の英語習得よりも絶対早いだろという思いを振り払いつつ、「やらないとダメになる」みたいな強迫観念を自分に植え付けて、とにかく英語に向き合う。はっきり言って単なる苦行です。

でもそんなある日、そんな英語に対する気持ちに大きな変化を与える出来事があったのです。それは、社内のNon-Japaneseメンバーと交流をしたことでした。

交流その1:国内メンバーとランチ

2023年、社内で英語化を推進するメンバーからの提案もあり、日本にいるNon-Japaneseのメンバーとランチする機会が巡ってきました。

どんなことを話したらいいのか、気まずい時間にならないか、失望されるだけなんじゃないか。いろいろ考えて足取りは決して軽くありません。(一応言っておくと私は人見知りなので、国籍、言語問わず、初対面の方には常に緊張しています。)

実際、初めてのランチ冒頭は、暑くもないのに一人だけ汗かきながら、よくわからないハイテンションで始まりました。

ところがです。話し始めたら意外と伝わるじゃないですか。言ってることも結構わかる。あれ、楽しい。しかもみんなめっちゃいいヤツじゃん。最高だな!ということで、あっという間のランチタイムだったのです。

3回ほどやって気づいたんですが、マネーフォワードで英語で仕事をするメンバーも、実はほとんどみんな母国語は英語ではないんですね。英語はあくまでも第2言語であり、習得して使っている。つまり私と同じだったのです。

msb田町オフィスでの3回目のランチの様子

いや、同じではないですね。彼ら、彼女らは英語に向き合った上に、日本に実際に来て、日本の会社に入って仕事をしているわけです。アホな三択並べてくさっていた私と同じだなんて言ってはいけませんね。

しかしそうやって、みんなと関わって話をして、とても素直に、みんなのことをもっと知りたいし、自分が思っていることも伝えたいという気持ちが溢れ出てきたわけです。そうして、英語に対しての気持ちが、学ぶものから使うものに変わったわけです。

交流その2:日本に短期で滞在していたベトナムメンバーとのセッション

2023年にコロナが収束し、日本-ベトナム間のメンバーの行き来が活発にできるようになりました。そこで、「Onsite Working Program」として、マネーフォワードベトナム(MFV)のマネージャーなどが3ヶ月間、日本のmsb田町オフィスで働くプログラムが実施されました。

そして私も8月に「Onsite Working Program」で来日していたメンバーとオフィスで話す場を持ち、そこで初めて対面でベトナムメンバーが日頃感じている課題や思いについて聞くことができました。

msb田町のオフィスで6名のベトナムメンバーと
(写真だけ見ると、すごい流暢に英語を話しているように見えますね、笑)

その時に感じたのは、一言でいうとみんな非常に優秀だなということです。何が優秀かと言うと、とにかく視座が高い。

「物理的に距離がある中でもワンチームで、最高のアウトプットを出すためには何をすべきか。」
「そのためにクリアすべき課題は何か。」
「マネーフォワードグループとしてのビジョンや戦略の解像度を上げるためにどうすべきか。」

そんな質問を受けながら、「自分たちはマネーフォワードの一員として一緒に成長したいんだ!」という強い意志を感じました。

この経験を通して、ベトナムメンバーの力がより発揮される環境をつくることで得られる価値は非常に高くなりそうだという感触を得ました。

そして、気がついたらその場で「今度は私がベトナムに行くから、もう一回話そう!」と皆に伝えていました(笑)。

交流その3:マネーフォワードベトナム訪問

10月、念願のベトナム訪問が叶いました。

ベトナム訪問の最大の目的は、ホーチミン、ハノイの各拠点で、キーマンとなるマネージャー陣とディスカッションをすることでした。

というのも、現状『マネーフォワード クラウド』の多くのプロダクトは、日本とベトナムとの共同開発という体制で開発が進められています。(例えば、2022年にローンチした「マネーフォワード クラウド個別原価」もその一つです。)

ただ、法人としては「マネーフォワード」と「マネーフォワードベトナム」で別会社だったり、ベトナム側は自分自身のマネジメントラインではなかったりすることから、解像度が低い状態でした。そこで、ベトナムの現場の第一線で活躍するマネージャー陣の本音を語ってもらうことで、まずはありのままの状況を知りたいと思ったのです。

2つのオフィスそれぞれで、まずはオフィスに勤務する全メンバーに対して挨拶を行う時間をもらったのですが、そこで印象に残ったのは、とにかくインクルーシブな雰囲気で、ウェルカムモードだったことです。

ハノイオフィスでの全体セッションの様子

ベトナムメンバーからすれば、私はいわば日本から来たよく知らない役員です。ともすると、変な距離が発生してしまったりとか、ちょっと構えてしまったりということがあると思うんです。

ただ、そんな雰囲気は微塵もなく、オフィスに入った瞬間に挨拶をしてくれたり、声をかけてくれたり、「一緒にやっている仲間同士、やっと会うことができましたね!」と迎え入れられる空気でした。

またセッションでは、こちらからの話に対して、分かりやすく反応してくれることが印象的でした。集められたという意識で一方的に聞くのではなく、一人ひとりの高い参加意識を感じましたし、よく笑うし身振り手振りの反応も豊か。言葉を発してくれるメンバーもいて、インタラクティブなコミュニケーションが自然に発生する場で、素直にとてもいい雰囲気だなと感じました。

その後の、マネージャーとのセッションでは、現場の状況や感じている課題についてのディスカッションを行いました。

課題として多く挙がったのはベトナムと日本との連携性で、それぞれ開発ツールが違うとか、日本発信の英語の情報が少ないから仕様のキャッチアップが難しいとか、セキュリティや権限の問題で同じ情報を見ることができないとか、いわゆるハード面の開発業務に直結する内容が多くあり、それはそれで、しっかり対応していく必要があるということを感じました。

一方で、もう少しソフト面での連携課題としては、グループや事業の目標をもっと解像度高く理解したい、その前段でお互いにどんな思いを持っているかの相互理解を進めたい、といった点でも意見や提案をもらいました。

その意見や提案はまさに、私自身もそうあるべきだと思っていることでした。職種が何であれ、国籍がどこであれ、大前提にあるのは、「なぜここに一緒にいるのか 」です。どんなミッションを実現するために、一緒に一丸になっていこうとしているのかという大前提の部分での共感と、相互理解がなにより重要だと思っていることをお話ししました。

ホーチミンのマネージャーのみなさんと

ダークサイドからの帰還

ここまでの書きっぷりを見ていただいて、そろそろみなさんお気づきかと思いますが、私はもうすでに、グローバルの皆さんと話すのが楽しくて仕方がなくなっています(笑)。

純粋に「英語がもっと喋れるようになったら、もっと分かり合えそう。」だったりとか「英語が上手くなれば友達が増えそうだな。」という思いでいっぱいです。

昨年のグローバルメンバーとの交流を通じて、「思っていた以上にたくさんの素敵な仲間がいるんだ」ということを、シンプルにすごく感じましたし、何しろ、ベトナムにもインドにも日本のグローバルメンバーにも優秀な人がたくさんいると感じました。

英語を話すというチャレンジをするだけで、こんなメンバーと一緒に仲間になれるんだと嬉しく思うシーンが増えて、 日本語だけで仕事している時よりもテンションが上がって、こんな多くの仲間とチャレンジができることが本当にいいなと心から思う機会を持つことができて、私の中では世界が大きく広がった2023年でした。

こうして私が感じたことを、普段仕事上での接点が少ない、日本のビジネス職メンバーに伝えたいという気持ちもあり、先月のMFBC Park Session(※)では、「グローバルでのOneTeam実現への道筋」をテーマに、さまざまな切り口でグローバルの取り組みを社内に紹介しました。
※「MFBC Park Session」とは、MFBCで継続している社内向けのウェビナー配信です。(参考note

先月のMFBC Park Session「グローバルでのOneTeam実現への道筋」の様子 マネーフォワードベトナムCEOの永井(Emma)もオンライン参加

グローバルでのOneTeam実現」は心から叶えたいと思いますし、その一つのステップとして、来月には再びベトナムを訪問し、ベトナムのマネージャー層にむけて、MFV版の「Leadership Forward Program(※)」の「チームビルディング」セッションを実施する予定です。
※「Leadership Forward Program」とは、マネーフォワードがリーダー育成のために実施するプログラムです。(参考note

この人たちともっと分かり合いたい」「もっと関わって、何ならお酒を飲みながら盛り上がりたい」と思える仲間が日本だけでなくグローバルにいるというのは、とてもワクワクしますし、幸せな環境だなと思います。

こんな仲間たちと、これからも、「ビジネスを前へ。働く人をもっと前へ。」進めていきたいと思います!

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