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【読書録25】まずは「タグ付け」と発信から始めよう~村上臣「転職2.0」を読んで~


  副題は、「日本人の働き方の新・ルール」
「転職」というタイトルになっているが、日本人の今後の働き方への提言であり、その働き方を実現するための手段として「転職」を有効に活用せよと主張する。 

我慢しながらはたらく時代はもう終わった。これからは、自分が主体的にキャリアを切り開いていく時代である。

 転職2.0とは?

 「転職2.0」とは何か?
著者は、これからの転職に求められる思考・行動様式として、5つのキーコンセプトを用いて以下の通り整理する。

           転職1.0                             転職2.0
【目的】    1回の転職の成功               自己の市場価値の最大化
                   (転職=目的)      (転職=手段) 
【行動】    情報収集       ダグ付けと発信
【考え方】   スキル思考      ポジション思考
【価値基準】  会社で仕事を選ぶ   シナジーで仕事を選ぶ
【人間関係】  人脈づくり      ネットワークづくり
        (狭く深く)      (広くゆるく)

各々の意味するところの概要を見ていこう。

【目的】

 転職は、「自己の市場価値の最大化を行うため手段」であるとする。意識的に、「ある期間に成し遂げたいこと」を明確にして、それをなす為に転職を活用することが大切であるという。

【行動】

その目的達成のために、自分を「タグ付け」することで自分の希少価値を高めることの重要性を説く。そしてその「タグ付け」に沿って、SNS等で発信し、市場に認知してもらうことが大切であるという。

【考え方】

その際、どんなスキルをつけるかという思考よりも、自分が目指すポジションから逆算してキャリアを考えることが重要であり、それが、ジョブ型中心となるポスト終身雇用時代のキャリアに必須の考え方であるという。

【価値基準】

会社に所属することに価値観を置くよりも、個人と会社とがお互いに助け合いながら必要な役割を果たし、相乗効果で成果を出すということに価値を置くべきはないかという。人生100年時代。自身と会社の寿命の関係性を考えると、当然の帰結と言えば言える。

【人間関係】

上記のような考え方の帰結とも言えるが、所属する組織をどんどんと変わっていくため、狭く深い人間関係でやっていくよりも、広くゆるいつながり(ネットワーク)をもっていくことの重要性を説く。

 現状、転職しようという気はないが、これらの考え方には、大変惹かれるものがある。

タグの掛け合わせにより市場価値の向上

 「自分」の市場価値は、「需要と供給」で決まるため、大切なのは、市場という場を通じて、自分がどう見えるかをチェックすることであるという。

 そして、市場で通用する強みや適性を見つけることは、自分のタグを明らかにすることであるという。

 この「タグ」という考え方と、自分の「タグ」を明らかにする手法が本書で一番面白く惹かれた考え方である。

 まずは、自分の職務経歴書を更新し続けて、職務経歴書を以下の5つの観点からタグ付けすることがポイントであるという。

1.ポジションに紐づくタグ 例:商品開発、経営企画、営業  
2.スキルに紐づくタグ 例:英語、データ分析、財務、
3.業種に紐づくタグ 例:IT、運輸、不動産、金融
4.経験に紐づくタグ 例:海外駐在、経営・マネジメント
5.コンピテンシーに紐づくタグ 例;コミュニケーション能力、企画提案力

 

 そしてタグは市場に「認知してもらう」つまり発信してこそ意味があるという。
 SNSも、タグに沿って戦略的に活用するべきであるという。

 「食べ物」の発信をしている人がいるが、「誰が」それを発信しているかが重要なので、まずは、自分は何者か?それを戦略的に発信した方が良いとセルフプロデュースの重要性を説く。

 市場価値向上の基本は、「マーケット思考」であり、職業人としての自分の価値も、「市場」という物差しにあてることで計測可能となるという。
 市場価値は、タグの掛け合わせによって、いそうでいないレアな人材となることで高まるという。

  自分のタグを見渡して、掛け合わせると面白いモノを習得していく。自分がやりたい仕事、求めるポジションから足りないとタグを身に着けていくなどの考えは興味深かった。

転職するにあたって

 転職するにあたっての考え方、ノウハウもいろいろと触れられている。その中でも面白いと思ったのは以下の点である。

 ・どのような業界知るには、有価証券報告書のサマリーを読む

 業界動向は、その業界のトップ企業の有価証券報告書のサマリーを見よという。確かにその通りであるとおもった。時系列の情報もあるし、就職情報誌のようなバイアスもない。

 ・カルチャーフィットを大切にする

 こちらもその通りである。業務内容もそうであるが、やはり一緒に働く仲間やその会社のカルチャーはとても大切である。会社のカルチャーは、仕事の進め方はおろか私生活(と仕事の境界線)にまでおよぶ。ここが合わないと仕事の手前のところで苦しむことになるであろう。

 ・キャリアコンサルタントを有効に活用する

 転職する気があるなしにかかわらず、自分の市場価値を確かめるため、そして業界動向などを得るためにも有効に活用すべしという。自分を株式会社に見立てて、職務経歴書=有価証券報告書、キャリアコンサルタントとコミュニケ―ション=IRとする例えは面白かった。

転職を考えることは人生を考えること

 労働人口減少と終身雇用の崩壊で会社と個人が対等の関係になることで我慢を前提として働き方がすでに崩壊しつつあるという。

 今は、「会社にしがみつこうとする個人」と「会社と対等の関係であろうとする個人」とが混在する過渡期にあり、今後は、自分でキャリアを作るという発想を持った個人が増えていく。

 それは、会社を中心とした濃密な人脈を基軸にした関係から、所属する組織にとらえわれない、ひろくゆるいネットワークに人間関係の基軸が変わっていくことも変化の一つであろう。

 時代の変化の中、新たな価値へ変容するのは苦しい面もある。
しかし、変化した後の新たなキャリアの考え方は、大変魅力的でもある。

 まずは、職務経歴書の更新とそこからのタグ付け、タグ付けに沿った発信から始めよう。眠っているLinkedInアカウントも再開してみようか。

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