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【読書録62】『わかっちゃいるけどやめられない』からどう抜け出すか~R・キーガン、L・L・レイヒー「なぜ人と組織は変われないのか」を読んで
手にとった理由
インパクトのある書名が以前から気になっていた。
本書の読書会が行われることを知り、読書会に参加することにするとともに、本書を購入して読んでみた。
なぜ書名に惹かれたのか?
変わりたくてもなかなか変われないという意識を持っているからであろう。
著者らは、人や組織が変われないのは、意志の欠如ではなく、変われない構造的な理由があるという。
それを「免疫システム」というメカニズムを比喩に用いて浮かび上がらせる。
免疫という人間の体に備わった決して悪いものではないメカニズムを比喩に用いているのが面白いし、実際、本書で掲げられている事例を読むと「わかる、わかる」と共感できるものも多かった。
著者らも本書は『学習する組織』の実践版という位置づけと言っている。
免疫マップ
本書の中核をなす変化を妨げる構造を俯瞰して見える化したものが免疫マップである。
何か変えたいと思う目標(本書では「改善目標」と呼ぶ)を掲げるものの、その目標達成を阻害する行動をなかなか辞められないということはよくあるであろう。
そのような行動を本書では「阻害行動」と呼ぶ。
その「阻害行動」は意志の力で辞められるものでもなく、その「阻害構造」をとらせる、「裏の目標」を明らかにし、問題を正確に把握することが、人が変わる第1歩であるという。
本書で例として取り上げられている、大手金融サービス会社のCEO、ピーター・ドノバンは、部下の意見をもっと受け入れたい、権限委譲したいという「改善目標」を持っている。一方で、新しい考え方を問答無用に却下したり、相手の発言を封じたり、相手が自分にうかがいを立てざるを得ないような話し方をしたり、すぐに自分の意見を言ってしまったりという「阻害行動」を取ってしまう。
そこには、自分のやり方でやりたい、自分がものごとに直接影響を及ぼしていると実感したい、自分が誰よりも知識豊富な人物であると思いたいという「裏の目的」を持っていると分析している。
読んでいて、「わかるわかる」と共感した。
では、「改善目標」と「裏の目的」のジレンマからどう脱出するか?
その方法として、「裏の目的」を形作っている「強力な固定観念」を明らかにすることであるという。
そしてその「強力な固定観念」を客体としてとらえて、それが妥当なものかどうかを検証するため、固定観念に反する実験を行い、振り返りを行うことで克服することができるというのが一連の流れである。
以下のような表に個人もしくは組織の免疫マップを記載していく流れとなっている。
![](https://assets.st-note.com/img/1666404623549-wU8U6alYzn.jpg?width=1200)
変わるために必要な3つの要素
免疫マップを用いた、個人・組織の変革というのが本書の柱であるが、第8章では、「変わるために必要な3つの要素」を挙げている。
1つ目が、「心の底」である。
変えたいと思うこと、免疫マップでいうと、第1枠に記載する改善目標を「心の底」から変えたと思う事であるという。単に理にかなった目標というレベルでなく、本能から「心の底」を揺さぶるものでないと変われないという。
待ち受ける、阻害行動に絶えぬき、裏の目標に匹敵するものでないと変われないというのは、非常によくわかる。
2つ目が、「思考と感情の両方にはたらきかける」である。
変えようと思うことに真剣に考えて熱心に努力するだけではなく、自分がどう感じるかが問題の一部になっている。「どう感じるか」は「どう知っているか」と切っても切れない関係にあるという。
理性で分かっていても恐れを感じてしまうとか、感情面をどうケアするのかはとっても大切だと思う。
3つ目が、「思考と行動を同時に変える」である。
著者は、カントの「思考をともわない知覚は、盲目であることと変わらない」につけ加え「行動をともなわない思考は、機能マヒに陥る」と言っている。
新しい行動を取らなければ、変化は生み出せない。「手」を動かして初めて変革は可能になるのである。
行動によって思考様式がアップデートする。そして思考様式をアップデートして行動変容につながる。このサイクルが大切なのだと思う。
行動し、内省する。どう感じどう思うかで次の行動も変わってくる。
行動の重要性は、いくら語っても語りきれない。私自身の課題でもある。
一方で行動だけでは、本来行動したことの目的から離れて行動が変わったことに満足しがちであるので、両方同時に変えるのが重要であるという指摘は興味深かった。
私の免疫マップ
本書では、免疫マップの作成方法やその際の留意点を詳細に解説してくれている。その際に実際に作業しながら読み進めるように薦めている。
私も試しに作ってみた。
1.改善目標
常々、すぐにムキになってしまうことを改善したいと思っている。周囲の少し年上の人をみると、ご機嫌なオジサン、不機嫌な人オジサン、両方いる。最近は、不機嫌な人が多いような気がするが、常にご機嫌でいたい。余裕のある人でありたいと思っている。
好きな人物もそんな人が多い。
2. 阻害行動
一方で、時間がないときにイライラしてしまったり、上司から分かっていることを聞かれたり指示されたりすると態度に出てしまったり、部下からのあいまいな報告や的を得ない報告にすぐにイライラしてしまう。
3.裏の目的
本書を読むまで、あまり「裏の目的」という観点に全く自覚的ではなかった。
「阻害行動」と逆の行動をとった時に陥る不安を考えて、裏の目的を考えてみると、
・上司には、自分のことを信頼してほしい
・部下には、問題をすぐに解決できる上司であることを見せたい
・何でも解決できる自分でありたい
というような裏の目的があるというように感じた。
4.固定観念
「裏の目的」をもつ、固定観念としては、以下のような事があるのではないかと考えた。もっと深堀すると、自分に対して自信がないことが余裕の無さを生み出しているようにも思った。
・自分のグループの運営や業務内容については、上司よりも自分が一番詳 しくあるべき
・部下の問いに対しては、常に正しい答えをもっているべき
・助言やアドバイスは、自分が到らないらないからされるもの
![](https://assets.st-note.com/img/1666401849704-0QzjpDL2Dz.jpg?width=1200)
作成してみて、なかなか自分一人で深堀するのは限界があり、周囲の協力が必要という本書で書かれていることも実感できた。
また、私の改善目標と裏の目標の間のジレンマも書いてみてよくわかった。また究極的には、自信の無さが、余裕の無さを生み出しているようにも感じた。
組織版免疫マップについて
自分の免疫マップをつくることで内容理解は深まった。
思考と行動を同時に変えていくという点は、非常に心に刺さった。
本書では、免疫マップを用いた組織変革についても書かれている。というか学習する組織の実践版という本書では、そちらの方がメインストーリーなのかもしれない。
組織が変わるには、組織の免疫マップをガチ対話しながらつくりあげていくこと。また個人個人が組織の改善目標に紐づく目標を掲げて免疫マップを作って取り組むこと。つまり一人ひとりが当事者意識をもつこと重要であるとしている。
免疫マップをつくる過程での対話、免疫マップで状況を「見える化」する。そして、個人、一人ひとりが、組織を作っているそんな意識を持ち、組織の改善目標達成に向けた個人の免疫マップを作っていくことがポイントなのかなと思った。
なかなか実践するにはハードルがあるかなとも思うが、少なくとも個人の免疫マップをつくれたことは良かった。あとは、強固な固定観念を検証する実験にどう踏み出すかである。
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