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【読書録85】リーダーとは「人間成長という山の頂に向かって登り続ける人間」のこと~田坂広志「なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか」を読んで~

 何とも直球なタイトルである。
そして、ちょうど今置かれている状況で読みたくなった本である。
巡り合うことができて良かった。

 本書を読み「なぜ、我々はマネジメント」の道を歩むのか?と言う問いは、私にとっては、こう言い換える事もできると感じた。
 
 「私が仕事をする意味は何なのか?」

 本書は、マネジメントの最高の報酬は「人間としての成長」と結論づけるが、私に取っては、それは、仕事をすることの意味そのものである。

マネジメントこそ「成長への意欲」を持つべし


著者は、こう言う。

 我われが、部下の成長を支えたいのであれば、決して忘れてはならないことがある。それは何か。
 自分が「成長」すること
人を成長させることはできない。自発的に本人が「成長したい」とおもわないかぎり、成長することはない。
部下は自分の上司の「後姿」から、最も大切なことを学ぶ。

著者が紹介する、昔の上司の言葉は、本当に素晴らしいなあと感じさせる。
私もこういう感覚で生きていきたい。

「毎日、会社で色々な問題にぶつかって、苦労するよ。そのときは、会社の方針に原因があると思ったりもする。周りの誰かに責任があると思って、腹を立てたりもする。けれど、家に帰って一人で静かに考えていると、いつも、一つの結論にたどり着く。すべては自分に原因がある。そのことに気が付くのだね」

「この歳になって、まったく新しい職場での仕事。やはり、大変だよ。疲れるな。だけど、俺たちは、こうして自分を磨いていくんだろうな

 こういう上司の姿から、著者はこう言う。

部下の成長を支えたいと思うならば、ますはマネジャーが成長すること。
成長すること。
成長し続けること。成長したいと願い続けること。
そのことが最も大切なことなのでしょう。

部下の成長をささえるための条件は、「立派な人物」であることではない。
問われているのは、ただ一つ。
「成長への意欲」
それだけなのです。

「自分の未熟さは、誰よりも、自分が知っている。それは仕方がない。けれど、自分は未熟だが、一日一日、少しでも成長していきたい。成長を求めて、歩み続けていきたい。」

「リーダー」という言葉の真の意味

 そして続いて、こう展開する。

「リーダー」という言葉の本当の意味は、「組織を率いる人間」のことではない。
それは、「山を登り続ける人間」のことです。
それは、「人間成長という山の頂に向かって登り続ける人間」のことです。
誰かを指導しようと思うわけでもない。
組織を統率しようと思うわけでもない。
ただ、一人の人間として、「人間成長」という山の頂に向かって登り続ける。それが本当の「リーダー」の定義です。

「人間としての成長」とは、「心の世界」が見えるようになること


 人間としての成長の意欲を持って、仕事に臨むのであればマネジメントではなくとも良いとも感じるが、その点について、マネジメントこそ、人間として成長できるとして、本書の前半でこう展開する。

マネジメントは、部下の成長に責任を持つ「重荷」を持った仕事であり、そのためには、 心のマネジメントが必要であり、その心のマネジメントこそ、一人の人間として、最も大きく「成長」できる道である。

では、心のマネジメントとは何か。本書では、「三つの心」が見えるようになることであるとする。

➀「相手の心」が見えるようになること
➁「集団の心」が見えるようになること 
③「自分の心」が見えるようになること

➁の「集団の心」が見えるようになることとは、「場の空気」が読めるようになることであるという。
 MBWA(Management By Walking Around)の有用性に触れるが、これは本当にその通りであると思う。WAすることで感じ取れることはたくさんある。
そして、③の「自分の心」が見えるようになることは更に深い。

河合隼雄氏の言葉を引用する。

 「人間、自分に本当の自信がなければ、謙虚にはなれないのですよ。」
「そして、人間、本当の強さを身につけていないと、感謝ができないのですよ」

 また、「心の中の劣等感が悪さをする。」とするが、これも思い当たる。
劣等感とは、その存在に気がついているだけで、あまり悪い作用をしなくなるという指摘も興味深い。

自分の心の中の劣等感を、抑圧せず、認めること。
自分の劣った部分、未熟な部分を認めること。
そのことだけで、救われる世界がある。

マネジャーは自分の心の中の劣等感に、気がついていなければならない。

人に対する嫉妬心から生じる感情から行動するとろくなことにならないことは身につまされる。

 自分の心を見つめ、「自分の心」を知る。
大切である。

「困難」において最初に語るべき言葉


 最後に著者が、「困難」において最初に語るべき言葉を紹介したい。

人生において、「成功」は約束されていない。しかし、人生において「成長」は約束されている。

 事業などで困難に遭遇した時、その困難を切りぬけ「成功」できるかわからないが、その困難と相対することで、「成長」できることは確実なのだ。
そう考えると、ポジティブな気持ちで毎日人生に挑むことができる。
特に仕事では命を取られるわけではない。
 でも全力で何事にも挑み「成長」を勝ち取りたいものである。

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