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【読書録98】致知2023年9月号「時代を拓く」感想

 致知の感想を毎号書いている。
今回で、24回目の致知感想となる。毎号毎号、新たな気づきをいただいている。


特集 時代を拓く

 
 創刊45周年を迎える「致知」。創刊時に「こんな堅苦しい雑誌は誰も読まない。」とよく言われたとのこと。そんな致知が、今日に到った理由として、以下の創刊理念を挙げる。

「いつの時代でも仕事にも人生にも真剣に取り組んでいる人はいる、そういう人たちの心の糧になる雑誌を創ろう」

そんな致知を創り続けてきた発行人の藤尾秀昭氏は、本号の特集テーマについてこう言う。

時代を拓くとは自分を拓くこと、自分の運命を拓くことである。一つの時代に対し、自分の運命を拓いていける人にして、初めて時代を拓くことができるのである。

 時代や社会のことを傍目で見ているだけではダメなのだ。
自分の志をもって行動し、自分を拓いてこそ、時代を拓いていけるのである。

致知45年の歴史を踏まえ、時代を拓くリーダーを次の様に言う。

➀時代の流れを読み、方向を示すこと
➁必死で働くー会社、仕事、社員に対する愛情と熱意は誰にも負けない
③自分を磨き続ける
➃集団を幸福に導く
⑤犠牲的精神ー自分の都合より組織のことを優先する
⑥宇宙の大法を信じ、畏敬し、その大法に則り行動する

 そして、この条件を徹底、反復、実行する人のみが天から力を授かり、時代を拓くという。

 致知を読み始めて、数年が経つが、登場する人物に共通する特徴と言ってよいであろう。反復、実行である。

新エネルギーの創出に挑む

 
 町おこしエネルギー会長兼社長の沼田昭二氏。今月号の表紙にも登場する。初めて聞く会社・お名前だと思っていたら、業務スーパーの創業者である。そんな沼田氏と業務スーパーのFCを行っている良知経営社長の濱田総一郎氏の対談記事である。

  濱田氏は、沼田氏を、本物のイノベーター、アントレプレナーと言う。
当記事で語られる、業務スーパーの創業から発展の歴史からすると全くその通りだと思う。
 他のスーパーが少量多品種化する中、賞味期限の長い冷凍食品に目を付け、大容量パッケージで、売り場兼保管庫を兼ねた大型の冷凍ショーケースを導入し、中国の自社工場で価格競争力ある商品を製造するというのは、非常に合理的である。
 ダイエーすら経営危機になる小売業界で、独自のビジネスモデルで成長し続ける業務スーパー。冷凍食品以外の話を見ても、「食のユニクロ」と言われるのも納得である。

 そんな沼田氏の話で、大変感動したのは、五十歳の時にステージ4の甲状腺ガンになり、「私利私欲を捨てて、滅私奉公に生きる」と誓い、かねて危機感を抱いていた、純国産エネルギーと町おこし、地方創生を融合した会社を立ち上げたことである。

 業務スーパーを運営する神戸物産の経営はご子息に譲り、まったく一から地熱発電の会社を立ち上げる。
 地熱発電は、開発コストが高額であるが、業務スーパーで培ったノウハウを使い、短期間でコスト安く発電所を築いていく。
 また発電の過程で生まれる熱水を利用して地元の野菜栽培や養殖などを推進し雇用を生み出す姿は、まさにソーシャル・アントレプレナーであり、滅私奉公に生きると誓った沼田氏ならではである。
 
 沼田氏は、大病あり、五十歳で、生き方を転換して行くが、大病なくとも、時間は永遠ではない
 四十八歳の私にとっても、今後のサードキャリアに向けて生き方を考えることは、本当に必要だと思う。このまま現状維持していった先には崖しか待っていない事は自明なのである。
 その際に、大いに考えたいのが、沼田氏のような「大義」・「使命感」である。何に意義を見出すか。私には、今のところ答えがない。そんな私に、対談記事の最後の沼田氏の言葉が迫ってくる。

私がいま自信を持って言えるのは、自分が抱いている大義に不退転の決意で臨んでいるということですね。誰かがリスクを背負うことで。それが日本のよき未来に繋がるのであれば、私は喜んでそのリスクを背負い、新しい時代を拓いていく覚悟です。これからも再生エネルギーで日本を蘇らせるという大義を抱き前進していきたいと思っています。

愚直に徹して、その道を進め

 
 栄東中学・高等学校の校長で、学校法人佐藤栄学園理事長を務める田中淳子氏へのインタビュー記事である。息子が昨年、中学入試で、同校を受験した関係で、興味本位で一読すると、その内容に大変惹かれた。

 田中氏は、元々は、世界銀行の通訳兼秘書。交通事故が転機となり、教育の世界に飛び込み、定年退職後に栄東で勤めることになる。

 本記事の副題は、「栄東中学・高等学校 改革の歴史」であるが、田中氏の行った改革で現在は、中学受験で毎年1万人以上が受験する出願者数10年連続1位の人気校になっている。

 中学校開校時は、定員数の生徒を集められず、その後も生徒集めに苦労した同校がどう変わっていったか?
 田中氏が行った、「東大選抜クラス」開設、「基礎学力強化」、「アクティブラーニング」導入、「理系教育過程」強化などの思い切った改革の際に意識していたことが素晴らしい。

 
 一つには、やはり守りに入ってしまえば前に進まないし、発展もない、たとえ間違っているとしても前に進んでいくということです。
 あとは、課題を解決するためには「何」が必要なのかをまず設定すること、設定したらチームを組み、スピード感を持って解決へと突き進み、「どのように」は走りながら適宜修正をかけていくことを意識しました。
 そして何より大事なのは校長、教頭、教職員が心を一つに団結していくことだと思います。

これらは、組織の変革時の成功の要諦だと思う。

 そして、様々な経験をして栄東にたどり着き改革を行った田中氏の人生観も素晴らしい。

様々な環境に身を置くことで、自分自身の考え方や生き方が変化していったように思う。

(不透明な時代に求められるのは、)失敗しても立ち上がって次に進める人間、学んだことを知恵に変え、それを土台に自分の信じる道を極められる人間だと思います。

この世の中には本当に無駄なことは一つも在りません。一見無駄だと思われること、つまらないことこそ可能性を感じ、目標に向かって日々倦むことなく愚直に努力と挑戦を重ねていくことから、生きる力、他人を思いやる心、ひいては綜合的な人間力が養われていくのではないでしょうか。 

 これらは、彼女が人生の中で掴み取った心からの思いだと感じた。そんな言葉だからこそ心に響くのであろう。

 最後に、田中氏が通訳として働く世界銀行時に、作成した英文について上司から分かりにくいと指摘を受け、挫折を味わった際の気づきが、まさに今の時代、今の私に求められていることだと感じたので紹介したい。

知識は頭の引き出しに整理して入れておき、必要な時に必要な引き出しを開けて取り出せるものでなくてはならないこと、場合によっては、複数の知識を同時に組み合わせることによって、新たな着想を生み出す必要があることを痛感させられたんです。

 定年後にもこれだけの事ができるんだと勇気をもらうとともに、定年前の田中氏の様々な経験の中で掴んできたものがあったからこその改革が成功したのであると思った。
 
 さまざまな事に真正面から取り組み、多くの事を経験することだ。その経験の点が線となり、面となることで人間を豊かにして行く。



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